『Amy』ーエイミー・ワインハウスはなぜ死んだのか。

先週の土曜日、近所のBrooklyn Academy Music-通称BAMの映画館で『Amy』を観て来ました。2011年に27才で夭折した、天才シンガーのドキュメンタリー映画とあって、話題性も評判も上々。客席は8割方埋まっていました。

エイミー・ワインハウスには、強い思い入れがあります。

ニューヨークでのたった1度のライヴを観られたこと(ひと言だけ、言葉を交わしたこと)、3枚のアルバムのうち、2枚の対訳を担当し、その作詞能力の高さに、打ちのめされたことなど、理由はいくつかありますが、もう、単純に彼女の歌が、歌声が大好きなのです。

亡くなってから4年が経っても、これだけ注目されるのは、私と同じ思いの人がたくさんいるからでしょう。

トレイラーを貼りますね。

彼女が私たちの前で希代のシンガー・ソングライターとして君臨した期間は、実はごくわずか。

デビュー作の『Frank』を知っている人は、2003年からになるけれど、多くは「Rehab」がイギリスでヒットした2006年か、デビュー作『Back To Black』が世を席巻した2007年に、エイミーの音楽に出会っているのでは。

私は、スティーヴン・マーリーがユニバーサル内でアコースティック・ライヴ兼リスニング・パーティーをしたときに、『Back To Black』のスニペット(シングル以外は、短くされた曲が数曲入ったプロモーション盤)をもらったのが最初。パンチのある外見にビビりつつ、歌声にさらに圧倒された記憶があります。

デビュー曲からして、「みんなリハビリに行かせようとするけど、真っ平ごめんって言ったの~父さんだって大丈夫だろうって思っているし」がパンチラインの、アル中カミングアウト曲。鮮烈でした。

日本でも上映してほしいので、極力、ネタバレは避けますが、すでに知られている事実を含め、彼女が抱えていた闇には、少し触れてみます。。

アルコール中毒は筋金入り。直接の死因もそれです。ドラッグを始めたのは売れてからで、旦那さんだったブレークの影響。彼とは、お互いの存在自体に依存してしまう、共依存の関係だったように思えます。エイミーは過食症でもあり、数年の間に20キロ以上の体重が変動しているのが見て取れ、それも辛いです。

エイミーの曲は、絶望的なラヴ・ソングが多いのも特徴で、映画ではその曲を捧げた男性たちも出て来ます。ごめんなさい、この人たちが揃いも揃って、負のスパイラルを感じさせる、オトナコドモなタイプ。曲の世界観に現実味が帯びてしまって、顔は観たくなかったかな、と思ってしまった。映像は、ときに残酷です。

最後の2年は、メディアに追い回されて、精神的にさらに追い詰められます。イギリス人がユーモアがあるのは有名ですが、それと正比例するのか、ゴシップも好きで、タプロイド紙の文化も根強くあります。あんなに行く先々で、カメラのフラッシュが待ち構えていたら、ふつうの神経の人でもおかしくなるではず。ましてや、繊細だったエイミーは、耐えられなかったようで、それと破滅的な結婚生活が依存症を悪化させる悪循環。

幸せの尺度は人それぞれ。健康的な生活、健全な男女関係だけが正解でもないし、生前の彼女がまったく不幸だったと決めつけるのは違うとも思います。

命を削るようにして生んだ傑作には、圧倒的な存在感があります。

エイミーの曲にソウルがあるのも、シンガーとして最高だと讃えられるのも、彼女がギリギリまで命を吹き込んでいるから。それは、かけがえのない才能でしょう。そうは思うものの、やっぱりもう少し長く、私たちと一緒にいて欲しかった。もう1曲でも多く、レコーディングをして欲しかった。

映画は暗い話ばかりではなく、貴重なレコーディング・シーンや、笑顔で音楽についての思い語る場面もあります。彼女を支えたふたりのプロデューサー、サラーム・レミや、マーク・ロンソンの前での、素直な表情が印象的。

自分のスタイルを持っていて、ファッション・アイコンとしても素敵な女性でした。最近、レコード会社のトップが、エイミーの残りの音源をいじって売れないように、音源自体を処分してしまった、というニュースがありました。その人は「モラルとして」と言っていましたが、わずかな音源でも聞きたいファンとしては、複雑です。

だって、アルバムは3枚しかないのだから。

 

右の本は、お父さんによるメモワール。読破はしていません。

レゲエ・ファンは、死後に発売された『Lioness~Hidden Treasure』に収録されている、スカの「Our Day Will Come」もおすすめです。私のオール・タイム・フェイヴァリットは、「Valerie」と「Tears Dry on Their Own」。同じ意見の人、いるかな? 「Love is a Losing Game」の歌唱も、鳥肌が立ちます。

エイミー・ワインハウスについては、まだまだ書きたいことがありますが、今日はこの辺にしておきますね。

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