NYでバーテンダーになろうと思った話 Pt.4

何だかんだけっこう楽しんでしまったバーテンダー・スクールで、一番良かったのは、この国での「バーテンダーというお仕事」の実態が分かったことかも知れません。

ゆるゆるインストラクターのフォレストさんではありましたが、バーテンダーの経年は15年以上だそうで、

「クラブで働いていたときに、シャンペン6本分のレジ打ちを間違えて、レスラー体型のセキュリティーに囲まれながらお金を数えた話」や、

「彼氏、彼女が職場に来ると120%ロクな結果にならない実例集」

など、なかなかためになる(?)話を合間合間にしてくれました。バーテンダーの職場は、ストレートにお酒しか売らないバーから、リカー・ライセンスがあり、バーもあつらえているレストラン、クラブ、ホテルのラウンジ/バーなどがあります。ニューヨークは地域ごとに住んでいる人や遊んでいる人がまったく違うので、お店によって客層も当然、まったく違います。

「安全第一」という、工事現場のような生活信条を持つ私の場合、12時前に仕事が終わるレストランが第一希望、通勤時間徒歩5分のご近所バーが第二希望。ハウス・ミュージックやテクノと言った苦手な音楽がかかっていなくて、あまりハードコアではなくて、あまりトレンディーでもないところ、と消去法の条件もありました。トレンディーなところは私の都合ではなく、リスニングセッションや業界系パーティーでお世話になっているようなスポットは、バーテンダーもモデル級だったり、露出過多お色気系だったりと、外見重視なのは分かっていたので、そこにチャレンジしても時間のムダだからです。

前述のシェーン君は、ラルフ・ローレンやトミー・ヒルフィガーの服を好んで着ていそうな好青年なのですが、金曜日に

「ボク、ゲイだから」

と、カミング・アウトしてくれてびっくり。ソフトだな、と思った瞬間はそう言えばありましたが、何しろぐーんと年下なので、いまどきの20代前半ってこんな感じなのかな、とも思っていました。最初は、他人事ながら「3年なんてすぐ経つし、ちょっとくらい退屈でも地方で頑張ってお医者さんになればいいのに」と内心、思っていたのですが、23才のお坊ちゃんぽいゲイの彼にとって、向こう3年間をマンハッタン中心のライフスタイルで過ごすか、保守的な人が多い地方で過ごすかの差は大きいだろうな、と納得。

あ、話がズレました。そのシェーン君は、ゲイ・バーという選択が当然、あるわけで、「仕事は見つけやすそうだね」と言ったら、

「あのね、ゲイの方が見た目重視で厳しーの!」

と言われ、違う角度での社会勉強にもなりました。それから、チップ事情。複数のバーテンダーがいる場合、全部まとめて最後に割る仕組みなのです。準備の仕事ばかり、接客は少なめの早番の人でも、とにかくお酒をサーヴしまくる遅番の人でも平等に一緒、というのはなかなかいいシステムだと思います。
「そうしないと、すごい競争になって険悪な職場になる」

との話には、「ああ、アメリカにいるんだった」と思いましたが。

「すっごくきれいでスタイルはいいけれど、仕事がトロい同僚がいる場合、彼女を前面に出して、ややこしいお酒を手伝ってあげるというやり方もあり」

という話も。要は、チームワーク重視の仕事なのです。

「バーテンダー同士は、そこで働いている時はファミリーのような存在になる」

とのインストラクターのひと言に、素直に「いいな」と思ったりも。この時点では、その「ファミリー」に入る過程がめっちゃ厳しく、「いいな」どころの話ではないとは、まだまだ分かっていませんでした。
続く。

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