【解説してみた】ビッグ・ショーンのハリウッド邸宅公開動画

ラッパーのビッグ・ショーンがガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュから購入した家、いや邸宅を公開してくれました。そのハウスツアーをAIの自動字幕で見たら、だいぶおもしろくて。誤訳を正したり笑ったりしながら(すみません)、案内のお手伝いをしようと思います。その前に、ラッパーとしてのビッグ・ショーンの魅力も。

少し前、アメリカで「果たしてビッグ・ショーンは優れたラッパーか?」というけっこう失礼な議論がSNSで盛り上がったんですね。私、これ少し理解できてしまって。カニエ・ウェストの秘蔵っ子として2010年くらいに出てきたときは、彼のラップのよさがすぐにはわからなかった。デビュー前に数曲入りのスニペット(視聴用に曲を短く切ったCD)を聞いて、語彙も多くないし、カニエがベタ惚れした理由はどこだろう? と思った記憶があります。

ビッグ・ショーンはカリフォルニア州の生まれで、育ちはミシガン州のデトロイトです。レペゼン・デトロイトのラッパーは、ほかにエミネムやダニー・ブラウン、エグジヴィットあたりかな。あ、J・ディラもデトロイトだ。ショーンは2011年のデビュー作『Finally Famous』からもヒットを出しましたが、とにかく2012年のカニエ派閥のコンピ『Kanye West Presents G.O.O.D Music Cruel Summer』への参加が大きかった。とくに、ジェイ・Zとカニエと肩を並べた大ヒット「Clique」での、切り込み隊長としてファーストヴァースをぶちかましたときに彼を覚えた人は多かったのでは。

次の「Mercy」が80年代の名門レゲエ・レーベル、テクニクスの「Super Beagle」をサンプリングしていて最高だし、このアルバムはいまでもよく聴きます。この頃のカニエの才気走った感じ、ちょっと怖いくらい。

Cliqueはオフィシャルがないので、こちらも。この曲でも切り込み隊長。

少し物憂いフロウに慣れるとくせになるタイプのラッパーですね。アルバムでは『Dark Sky Paradise』(2015年)が一番好きかな。ちなみに、ソロ作にはカニエはあまり関与せず、3作めまではカニエの師匠No-IDに作ってもらうことが多かったです。そこは、彼女のジェネイ・アイコちゃんと同じ。そう、私がビッグ・ショーンを好きな理由の3割はアイコちゃと交際しているから。

彼はいろんなスタイルができてしまう器用貧乏なところと、出てきたときは外見に恵まれすぎて00年代に多かったテレビ受けのするラッパー(バウワウ、ネリー、チンギー)あたりの後継者っぽく映ってしまって損をしたかも。本人もR&Bシンガーなみに恋愛関係をテーマにした曲が多いし、女優のナヤ・ヴィエラ、アリアナ・グランデ、それからアイコちゃんとい有名人とつきあって話題をふりまいてくれるんですよね。人気ドラマ『グリー』に出ていたナヤ・ヴィエラは昨年の夏に、湖の水難事故で亡くなっています。そのとき、ビッグ・ショーンもお悔やみのコメントを出していました。

そろそろ、ハウスツアーの解説にはいりましょう。AIの字幕設定は各自でやらないと出ないかも。スラッシュから買ったハリウッドの邸宅は、11ミリオンから8.7ミリオン弱にしてもらってニュースになりました。30才に入ってすぐに約10億円弱の家を買うって、ザ・ヒップホップ・ドリームって感じですね。

頭からツッコミ、じゃなかった解説をしていきます。

0:00 パープルの部屋着で出迎えてくれるビッグ・ショーン、「カモン!(おいで!)」と気さくに言ってくれているのに、AIに「いい加減にして!」って‥。「Come on」はたしかにとっさに文句をいうときにも使うけれど、ほぼ真逆で気の毒。

家の中では靴を脱いでもらう主義だとか。これ、日系のアイコちゃんの影響かな。日本やアジア、中近東などの室内で靴を脱ぐ習慣の国の人とつきあって、靴を脱ぐのが当たり前になるアメリカ人、けっこう多いです。

0:36 ミニ大仏もいるし、東洋文化に興味がある様子。カニエとジョン・レジェンドを招いた「One Man Can  Change World」の曲名を落とし込んだアートも。これはショーンのお祖母ちゃんを歌った曲だそう。女性の黒人兵として第二次世界大戦に参加し、その後、警官になったツワモノ。自慢したくなりますね。

玄関周りだけで、スピリチュアルなものが好きなのがよくわかります。辰年だから金の龍の置物があったり、エネルギーを高めるために銅製のリングを置いていたり。銅製のリングにそんな力があるんですね。知らなかった。

真っ白いリヴィングは天井まで届く大理石と、巨大なマラカイト(孔雀石)が目を引きます。パワーストーンズ好きはLAのセレブっぽい。

1:50 スラッシュから買い受けたあと大改造をしたものの、いくつかそのままにしているそう。カラフルなガラスの引き戸はそのひとつ。

クッションの色までエネルギーの調整の観点から選んでいるというのがすごい。かなりの風水好きとみた。居心地よすぎて、パンデミックの間もずっとお母さんが居着いたままだとか(アイコちゃん、どうしているんでしょう‥)

3:30 ほとんど使わないという巨大なキッチン。ガスコンロも最高級品ですね。私はこの空間が一番うらやましい。

4:20 スラッシュが作ったナイトクラブ(!)をそのままにしているのがおもしろいです。スカルをそのままにして、ガンズへのリスペクトを忘れないあたりもすてき。ミニシアターでドラゴンボールZを見ると話すビッグ・ショーン。

トレーニング・ルームに案内するときに、再び「どうぞ」が「いい加減にしろ」になっています😂。モティベーションを上げるためのアーノルド・シュワルツネッガーのポスターが。正直、この家でまねできそうなのはこのポスターだけですね。「ムキムキにしたいわけじゃないけど。マーベルの映画にでるわけじゃないし」と言ったあと、「少なくとも、いまは」とつけ加えています。きちんと演技の勉強をしたら、俳優としても人気が出そうですね。

6:00 願いを書き込むヴィジョン・ボードもありました。やる気をキープする仕掛けがいっぱいある家です。重厚なマッサージ・チェアーはアイコちゃんからのプレゼント。大切にしているっぽいのがいいですね。後ろの写真にぼかしが入っていますが、アイコちゃんとの写真かな。

「ジャパニーズ・トイレ」と呼んでいるのは、ウォッシュレット付きという意味。アメリカ、超高級物件でもついてないほうが多い。

8:30 ラップTやスニーカー、キャップのコレクションもお宝がいっぱいありそう。エミネムから直接贈られたという、エアジョーダン4 レトロ・エミネム・カーハートを披露していますが、ちらっと調べたら540万円(!)ととんでもない金額がついていました。

ラッパーといえば、のブリンブリン(死語)チェーンもきちんと見せてくれるビッグ・ショーン、いい人です。それも、ジェイ・Zにもらったダイヤで象ったロカフェラのロゴとか、キッド・カディからもらったキリストのチェーンとか。キリストは、カニエからもらった初めてのチェーンをなくしてしまったら、カディが代わりに自分のをくれたそう。字幕で「クディはクール」と出ますが、カディです。ビッグ・ショーンはみんなに好かれるキャラだとよくわかるくだりです。

9:00 本棚セクションも興味深い。音楽本のほか、人生を変えた本として『Ask and it is Given』(邦題;『願えば、かなう』)を紹介しています。これで、奨学金をもらって行くはずだった大学への進学を止めて、音楽一本に絞ったとか。実は、この本は私も持っていました。理由はジェイ・Zが愛読書のひとつに挙げたから。ビッグ・ショーンも同じ理由で読んでいたりして。引き寄せの法則とか、自己啓発本をバカにするのは簡単だけれど、私は「一般常識として」ベストセラーは読んでおっく主義。ラッパーがリリックに入れ込んでいることは多いし、へたをすればインタビューでこちらが知っている前提で答えることもあるので、けっこう必須。50セントだったらロバート・グリーンを読んでおかないと、みたいな。

ビッグ・ショーンは最後にちらっと「Four Agreementsもいいよ」と言っています。調べたところ、ドン・ルイス・ミゲルの『四つの約束』でした。これは読んでいないので、ポチろうかな。そのうち、「ラッパーの愛読書」というテーマで記事を書きましょうかね。その流れで壁に飾ったプラークを見せてくれます。これ、アルバムがゴールドやプラティナム・セールスに届いたときにレコード会社が作って関係者に配られるもの。私はショーン・ポールとT.O.K.を持っています(ただの自慢です、すみません)。会議室の近くにはWealth Ship(富の船。ってなんだ)。やはり風水マニアです。

11:00 ホームスタジオは機材がわかる人は面白いパートだと思います。窓から、デトロイトから出てきたとき最初に住んだ小さなアパートが見えるので、そのたびに自分の成功を噛みしめるとか。屋外の庭と景観がザ・ハリウッドですねぇ。スラッシュはスケートボード用のスロープを造っていたそうですが、そこは芝生にしてしまったそう。プール・サイドのBBQがあってパーティーをしつつ、オレンジやミントがあるガーデンもあって、瞑想もするそう。

ここまでわかりやすく勝ち上がってくれると、いっそ清々しいですね。ほとんどを見せてくれるサーヴィス精神も◎。ちなみに、これを読んでいるガンズのファンの方は「スラッシュはどうなったの?」と気にしているかもしれないので、彼の情報もちらっと。邸宅を売った理由は2014年の離婚のようです。2015年に売り出して2017年にビッグ・ショーンが買うまでに2回値下げしたのは、やはりナイトクラブ付きに魅かれる人が少ないからでしょうか。以前の家の内装も出てきました。見比べると、かなり改装しているのがわかります。スラッシュの新居のリンクはこちら。そちらの内装はいまっぽくなっていて、ビッグ・ショーンの邸宅とも少し似ているのが面白い。流行りがあるんでしょうね。スラッシュのお母さんはイギリス生まれの黒人のファッション・デザイナーでデヴィッド・ボウイとも交際していたそうですが、ファンはみんな知っている情報かな。

以上、ビッグ・ショーンの邸宅ツアーのアシストでした。最後に一番ヒット曲を貼っておきましょう。やっぱ、かっこいいですね。