来日直前! チャンス・ザ・ラッパーに関して「へぇ!」な7つのこと

今週末、とうとう、チャンス・ザ・ラッパーが初来日しますね! ということで、予習代わりに「こんな人なんだよ!」ってのを書いてみます。   題して、チャンス・ザ・ラッパーに関して「へぇ!」な7つのこと、挙げてみましょう。   1 高校生の時、停学を喰らって、その10日間のことをミックステープ『10 Day』(作品)にして世に出てきた   2 同じシカゴ出身のカニエ・ウェストに多大な影響を受けている。ものの、カニエからGOOD Music入りへ誘われたらあっさり断った   3 13才頃、オバマ元大統領に直接、「ラッパーになるんだ!」と宣言した有言実行野郎   4 ほぼ同じ顔のとーちゃんと弟がいる   5 ジェイ・ZからJコールまで同業者みーんなが心底羨むものを持っている   6 広告一つでグラミー賞のルールを変えた   7   『Coloring Book』の本質はゴスペル・ラップである   解説していきましょう。   1は有名なエピソード。学校でマリファナを吸って停学になったそう。それから、以前は精神安定剤のXanaxを摂っていたこともラップしています。アメリカで睡眠薬や精神安定剤を本来の効能以外の目的のために手を出す人は、ほんっっとうに多く、社会問題になっています。チャノ(アメリカでのニックネーム。呼びやすいので広めます)もその道は通ったわけです。娘が生まれ、父親になって神様の存在を改めて感じ、『Coloring Book』ができた、という流れ。   2 カニエとの関係。子供の頃はそれほど熱心なヒップホップ・ファンではなかったけれど、カニエのThrough The Wireを聞いて、天啓を受けてラッパーを志したそう。チャカ・カーンの同名曲を大胆に敷いた名曲で、私も2004年のベスト1に選んだ記憶が。いつ聴いてもかっこいいし、この曲がチャノの原点になっているのも納得です。 そのカニエですが、2作目『Acid Rap』後に起きたレーベル争奪戦に参戦、 彼のレーベルGOOD Music入りを勧めたそう。レコード会社による何度目の契約金競争が激しい時期で、ASAPロッキーが300万ドル(超ざっくりで3億円)もらったとか、よく話題になっていました。ここに乗らなかったあたり、チャノの強さがあります。カニエとは仲が良く、『Coloring Book』のオープニングAll We Gotはカニエから「手伝うよ」という電話があって実現したそう。美談。   3、4、5は基本的にぜーんぶ同じ話。チャノ太郎(勝手に拡げてみました)は、上院議員時代、オバマさんの元で働いていたお父さんのケンさんがいます。「お父さんのボス」だったオバマさんに会った際、将来はラッパーになりたい、と言ったところ、「ワード」と返ってきたとか。wordは、「なるほど/よく言った」といった意味で、ポジティヴな同意の時に使います。まぁ、スラングだけど。オバマさん、カッコいいです。   Summer Friendsで本人もラップしているように「俺の友達、みんなお父さんがいない」中で、人生の指針となる父親が、チャンス・ザ・ラッパーことチェンセラー・ベネットにはいます。父親がいなくても周りに頼りになる叔父さんや祖父がいることもあるし、お母さん一人できちんと育て上げるケースは多々あります。一括りするのは乱暴であるのを認めつつ、アメリカのヒップホップ・カルチャーを語るうえで、父親の不在の問題は大きいことは指摘したい。ジェイ・ZもJ.コールも50セントもそれをテーマにした曲があるし、彼らの生き方に多大な影響を与えています。   アートにしてもスポーツにしても、目指す師匠や先輩を見つけて目標にし、最終的に超えることで成長するストーリーが背景にあることが多いですよね。ヒップホップはこのサイクルが早いうえ、関係性が濃い。まぁ、この話は別の機会に深くするとして。   チャノみたいにレコード会社から契約の話が来たような大事な局面で、的確なアドバイスをしてくれるお父さんがいるのはとても珍しいし、ほかのラッパーにしてみれば、契約金の額よりもグラミー賞よりも羨ましい土台なのです。私は、彼の屈託なさ、25才とは思えない安定感もそこから来てるかな、と思っています。   弟のテイラー・ベネットも注目株のラッパーです。   6も有名な話。彼は音源に値段をつけず、フリーで売り出したため、グラミー賞の規定に外れてノミネートされない雲行きになった際に、ビルボード誌に掲載した意見広告がこれ。   「ヘイ、俺だっていいじゃん」   からの、なぞのウセイン・ボルト・ボーズ   ‥‥憎めないぃぃ。   これで、みんな「だよね、いいんじゃね?」、「ノミネートしちゃう?」からの、「ノミネートならいいよね?」で、見事に受賞(半分、想像)。   グラミー賞だってテレビ番組のひとつなので、彼みたいに直前に話題を作ってくれるアーティストは大歓迎なのです。   チャンス・ザ・ラッパーの魅力を端的にいうと、アーティストとして、人間として、頭とセンスがめちゃくちゃいいこと。   性格ははっきりしていて、相手が大巨匠の映画監督、スパイク・リーだろうが、ミックテープ時代(って、いまもある意味そうなのですが)に散々世話になった、シカゴの(元)ドン、R.ケリーだろうが、言いたいことがあったらハッキリ、ズバリ言います。   言動を見ると、わりとキツい人です。   でも、それを補ってあまりある愛嬌。   私は、個人的に顔がコミカル系でよかったな、って思っていて。これでイケメンだったり強面だったりしたら、共感指数がぐっと低くなった気がします。   彼がどんな人間か、育ちなのか。私はAngelのこのラインを聞いた時、ハッとして理解しました。   I ain’t change my number since the seventh grade   「中1から(携帯の)電話番号を変えていない」   中1から携帯を持っていたことがまずひとつ(珍しくはないけど、早いです)。00年代はアメリカも携帯会社の顧客争いがピークで、キャッシュバックとか半年だとかに惹かれてしょっちゅう番号を変える人がいました。途中で番号を持ち越すことができるようになったのですが、ほかならぬ私も「絶対に番号を変えたくない」という信念のもと、まぁまぁがんばって誘惑に打ち克ったほど。   だから、このラインで「あ、10代から頑固だったんだな」と。経済的に、精神的に安定していたんだな、と、合点が行きました。   7 私が強調するまでもなく、『Coloring Book』(塗り絵!)は大傑作です。この作品では、ラップと歌の割合が半々というのも新しかった。   ゴスペル・ラップ、というのはクワイヤー(聖歌隊)やゴスペル・アーティストの超大御所、カーク・フランクリンを投入している点ももちろん、全体に流れるテーマが「信仰」だから。Mixtapeみたいにヒップホップに対する思いや、Smoke Breakみたいにいっしょに緩もうぜーな曲もバランス良く入っていますが、全体の感触がゴスペルです。   彼が生まれ育ったシカゴは全米平均より黒人人口の割合が高く(4割近く)、教会の数も多い。カニエ・ウェストにしてもチャンス・ザ・ラッパーにしても、キリストの存在は「新発見」ではなく「原点回帰」のはず。   この二人のタッグ、実現してほしいです。... Read More

Kid Cudiって知ってる? –Kids See Ghosts

Kids See Ghosts おばけが見える子どもたち=カニエ・ウエスト&キッド・カディ
村上隆さんとカニエ、再コラボのジャケット。最高です。
  Yeの全曲解説とは趣を変え、私がひたすらキッド・カディをほめそやすブログです。アルバムのことも書くけれども、大枠は

キッド・カディが大好きだーーーーーーっ

  という気持ちを、積極的に発露していこうかと。   カニエさんの知名度というか、お騒がせ度がずば抜けて高いため、影に隠れていていますが、キッド・カディも大した才能の持ち主です。09年、デビュー直前にインタビューしたとき、   「ヒップホップのアルバムを3枚だけ出して、あとは俳優に専念する」   と言い放ち、私は私で「何を言ってるのかな、このガキンチョは」と思いつつ、まぁ、そのチャーミングさにもだいぶやられてしまい。ちなみに、今作は7枚目です。続けてくれて良かった。   カニエのG.O.O.D. Musicから『Man on the Moon: The End of Day』でデビュー。抽象的なリリックと歌うようなメロウなラップで、スヌープやウィズ・カリファとは一味ちがう、ストーナー系ヒップホップで出てきた人です。2作目までその路線を続けて、まだそのイメージが残っていますが、本人はしばらく前にマリファナはやめたそう。   マチズモを強調しない、内省的なライムが特徴。カニエの『808s Heartbreak』に客演とソングライティングで大きく貢献しています。このアルバムではHeartlessとRoboCopがとくに好きだったのですが、どちらもカディ君もペンを取っているし、メロディーを作ったのも彼かな、と思っています。   ドレイクとほぼ同期。彼とともに、「俺って、俺って」なグズグズラップが受け入れられ、拡まる土台を作った気がします。実際、Pursuit  of Happinessのヴィデオはドレイクが全面的にカメオ出演しているし。それ以前も感情を語るラップはあったのですが、この二人、基本的にずっとその話。恋愛や物欲を絡めながらも、伝えたいのは、孤独な気持ち、理解されない俺。そう、だれもが持っている感情です。2010年代のヒップホップって、クラブやコンサート会場で一斉に「お前らなんか友達じゃねー」って歌うのが「主流」です。横並びの孤独。一緒に歌っているから仲間、ではないし、ステージから語りかけられるのをありがたく拝聴するのもウザい。とってもSNS的だと感じます。   音楽的には、Born Thugs-N-Harmonyの影響を語っているように、カディは歌うようにラップするスタイルが特徴。この流れは、髪を派手な色に染めたLIL 系が多い、日本でいうところのエモ系(すみません、ざっくりで)に、ゆるくつながっています。カニエが、XXXテンタシオンの死に際し、「直接言えなかったけど、インスパイアーされたよ」とつぶやいたのは、本心だと思います。XXXを聴いていると、私は肘から先がゾワゾワしてさすってしまう。リリックとその間にある感情が剥き出しすぎて、目の前で泣かれているようで辛かった。彼は、本物の表現者でした。キッド・カディはダークですが、比喩やユーモアに長けているので、救いがあるし聴きやすい。そういう意味では、オーソドックスなヒップホップ・アーティストです。   それから、カディはとってもおしゃれ。クリーブランドからニューヨークに出てきたとき、SOHOのBAPEの店員をしていたのは有名な話です。デザイナーの名前ではなく、オープニング・セレモニーなどセレクト・ショップの店名を出すあたりも新しかった。腰から下が細い、ロッカーみたいな体型の持ち主。黒人は筋肉で服を着こなす人が多いですが、カディさんは骨格で服を着る印象があります。   いつだって半歩先を歩いて、結果、功績が見えづらい人です。   俳優としても、演技力抜群。映画はまだ作品に恵まれていないようですが、テレビドラマではHow To Make It Americaというカルト作品が秀逸で、主役を喰う存在感でした。ちなみに、俳優業はScott Mescudi(スコット・メスカディ)の本名でクレジットされていることが多い。   そろそろ、Kids See Ghostsの話を。カディはカニエに見出されたというより、A&Rの人がカディをデビューさせる際に紹介して、いい距離感を保ってきたふたりが、ここまでがっつり組んだのは初めて。   前回のブログで「舎弟感」と書きましたが、弟分であり、アイディアを喚起するミューズのような存在なのでは? 男性ですけど。誰よりも早く、公然と「がっかりした」と文句をいう形でカニエを心配し、そこから仲直りをして、この作品ができた、という流れ。   もうひとつ、ふたりに重要な共通点があります。キッド・カディは2016年に自殺願望が強いうつ病で、自分からリハビリテーション・センターに入ったことを発表しています。先日のケイト・スペードさんの自殺もそうですが、世間的に成功してすべてを持っているように見えても、本人は生きづらく感じているケースはあるんですね。カディは、その後、積極的に精神疾患に関する理解を促す活動をしています。   Yeで「(躁鬱病は)スーパーパワーだ」と叫んだカニエだって、開き直っているわけじゃないんですよ。アートワークに書かれた言葉が“I don’ like being bi-polar”でも、“It’s hard being bi-polarでもなく、“I HATE being bi-polar”だったんですから。「ヘイト」はとても強い言葉で、たとえば、“I hate BBQ”(BBQは大嫌い)”と言ってしまったら、「もう絶対に誘わないでくれよ」くらいの意味になります。有名人であるキッド・カディとカニエ・ウエストだって、精神疾患を公表することで今後、ある種の烙印がついて回る覚悟はあったはず。メロウに響くアルバムですが、Ye同様、根底に流れるものはヘヴィです。   Freeee(解放) や Reborn(再生)などの曲のテーマ、そしてふたりに見えているお化けは、自分が抱える闇。それを受け入れつつ、救いを神(キリスト教)に見出したと、どの曲でも言っています。ヒップホップのオールドスクール・アーティストにはイスラム教に傾倒する人もいたのですが、やはりアメリカ人の大多数はクリスチャンだし共感されやすい。This Is America で話題になったチャイルディッシュ・ガンビーノにいたっては、エホバの証人を信仰する家庭で育っています(宗教に詳しい人が、その観点も踏まえてあのヴィデオを分析したら、また面白いでしょうね)。   話があっちこっち行ってますね。私のカディへの愛情、集中力がないようです。目立ったリリックを訳出しようと試みたのですが、過去と現在、弱気と強気の間で行ったり来たりして、前後を落とすと誤解を招きそうなのでやめます。言葉数も少ないし、とてもシンプルなのでリリックに興味がある人は読んでみたらいいと思います。   マーカス・ガーヴェイ(黒人解放運動の指導者)とルイス・プリマ(ジャズ・ミュージシャン)をサンプリング。ゲスト参加は、今回のカニエ組以外では、ヤシーン・ベイ、ミスター・ハドソン、アンソニー・ハミルトンと考え抜いた布陣。そしてまさかのアンドレ3000がFIREにクレジットされています(ラップはしていません)。   アンドレのカニエ・プロデュースの曲、聴きたいですねぇ。   キッド・カディに関して、過去のブログにちょこちょこ書いています(日記の間に出てくる感じ)。お時間があったら、覗いてみてください。一番、力を入れたErase Meの解説はなぜか消えているんですけど。   お化けの仕業かな。  ... Read More

Ye 全曲解説。

『DAYTONA』と『Testing』で諸手を上げて、嬉しさのあまり、そのまま左右に振ってしまうようなヒップホップ・ウィークを過ごしたあと、カニエ・ウエストからド級ストライクな『Ye』が届きました。両手を上げて油断していたから、お腹のあたりでまともに受け止めちゃった。痛いってば。カニエ、まっすぐすぎる。 『DAYTONA』が出たところで、本題に入る前にプッシャ・Tとドレイクの件。ビーフの戦法が姑息だからプッシャ君に腹を立てたけど、それと作品は別。アルバムは好きでよく聴いています。大体、アルバム・リリース前後のビーフとか、ただの炎上商法でしょう。いちいち反応したくないんだけど、ドレイクと近いプロデューサー、Noah40が患っている多発性硬化症をディスソング「The Story of Adidon」で挙げているから。北米ではよく聞く病気で、「MS」だけで通じるほど。闘病している人、周りの人の気持ちを考えたら、これはアウトだと思う。全米多発性硬化症協会がプッシャ君に正式に抗議したから、反省してくれますように。ハイ、この話はおわり。 って、昨日ここまで書いたら、今朝になってニューヨークのフェス、ガバナーズ・ボウルでプッシャのパフォーム中に観客がリリックと関係なく「fxxk ドレイク」とチャントし始めて、プッシャが堪りかねて止める映像が回ってきました。ドレイクって定期的に笑いものにされるから、今回もその延長だとは思うけど、「叩いていい」という流れになると一斉に叩く傾向って世界共通なんですね。いやな世の中です。そこまでファンじゃないけど、今回ばかりはドレイクと一緒に嗤われた方がましだな。   さて、『Ye』。最初に聴くとき、新しいアルバムを聴く楽しみより、「大丈夫かな? またヤバいこと言ってないかな?」と不安が先にきたのは私だけではないのでは。いま、私たちはカニエを失うわけにはいかない。戯言は全部忘れるから、また超絶かっこいいヒップホップを聴かせてほしい。私を含む勝手な消費者、ヒップホップ・ファンの本音はそこでしょう。 そして、蟹江西大先生、ちゃんとわかっていました。 アートワークの文字。   I hate being Bi-Polar, it’s awesome(躁鬱でいるのは辛く、最高だ)   ‥‥‥‥最高なら、いいか! (ムリしてます)   安定の超絶トラックに、いつも通り(精神的に)不安定なカニエ節を載せていて、たしかに最高です。ところどころ出てくる不穏な言葉さえ、エンターテイメントとして昇華していて、天才すぎます。   解説しますね。   1.I Thought About Killing You 1曲目は、スポークン・ワードとモノローグの中間みたいな曲です。 “Today I seriously thought about killing you/I contemplated, premeditated murder/And I think about killing myself, and I love myself way more than I love you, so「今日本気でお前を殺すことを考えたんだ/よくよく考えた 謀殺について/それから自殺も/でも お前を愛する以上に自分が大事だから」 いきなり自殺願望があったことを告白。このヘヴィーさが、アルバム全体の底に流れています。「お前」が誰を指すのか。世間なのか。味方になってくれなかった仲間たちか。それとも、その「お前」も彼自身なのか。 私は、自分との対話だと思いました。後半はメロディアスで酔っているようなラップに展開。 How you gon’ hate? Nigga, we go way back to when I had the braids and you had the wave cap” 「なんで嫌うんだよ/ニガ 古い付き合いなのに 俺がまだブレイズをしていておまえはウェイヴ・キャップを被っていた」 うーん、またジガさんことジェイ・Zのことかなぁ、って深読みしたら歌詞サイトのジニアス(本稿の英語詞はここから引っ張ってます)も同じこと書いてました。みんな気づくんですね。ウェイヴ・キャップってドゥーラグのことか。シカゴあたりはウェイヴ・キャップって呼ぶのかな? 短くても絡まりやすい縮れ毛を、枕との摩擦から守るために被るもの。黒人女性はスカーフやナイトキャップを被りますね。 「自分を愛せないからおかしくなったんじゃない、俺は自分が大好きだから それは当たらない」とも。うん、知ってた。彼ほど自己愛が強い人は珍しいと思います。 最後の「お前らカニエの話ばかりじゃないか」は事実ですね。その通り。   2.Yikes 00年代後半のカニエを思い出す、ちょっと懐かしいタイプのトラックです。「ヤイクス」は「オェッ」とか「ゲッ」とかネガティヴな反応をするときに出る言葉。カニエの「オェッ」案件を並べているのかと思ったら「自分自身が怖い」というコーラスから始まって、とにかくショッキングな内容を畳み掛けています。 「北朝鮮に行ってもいいし、ウィズ・カリファと一緒に吸ってもいいし」。カリファは元カノ、アンバー・ローズを巡って喧嘩した間柄。ウィズ・カリファの方がずっとクールに対応していた記憶がありますが、もう別れちゃったし、いまは仲良しなのかな。 「俺が何人に胸を買ってやったか知ってるか?」とも。いいえ、知りません、興味もありません。「尻も入れたら50ポップずつ」って。「ポップ」を単位に使うのは初めて聞きました。50グランの言い換えが妥当だとしたら550万円ずつですね。いや55万くらいで豊胸も豊尻もできる世の中なのかな。詳しい人、教えてください。そうそう、奥さんのキムさんは美しさを保つために、人件費を入れて美容代を1カ月に5万ドル(550万円)使う、という記事が少し前、Elleに出てました。桁が違います。 米英のメディアがよく取り上げているラインが、 “Russell Simmons wanna pray for me too/I’ma pray for him ’cause he got #MeToo’d” 「ラッセル・シモンズが俺のためにも祈ってくれるって/#MeTooでやられているから俺も祈っていてあげよう」 デフ・ジャム創始者のラッセル・シモンズが昨今のセクハラ糾弾ムーヴメント、MeTooで槍玉に上がっているのを受け、「人のこと心配している場合じゃないだろ」と。正論ですね。続く「俺もやられちゃうかな/そうしたらE!ニュースに出るね」というのが、カニエらしい茶化し方だなぁ、と。この人、なんでも茶化すし、揚げ足を取る。まじめに反論したらバカを見るけど、無視したら無視したでいじけるのでめんどうです。アウトロがそれを証明します。 “You see? You see? 
That’s what I’m talkin’ ‘bout
  That’s why I fuck with Ye 
That’s my third person
That’s my bipolar shit, nigga what?
 That’s my superpower, nigga ain’t no disability
I’m a superhero! I’m a superhero!” ほらね? ほらね? こういうことなんだよ。だから俺はイェと付き合っているんだ。3人目の人格。躁鬱ってこういうことなんだ。これが俺のスーパーパワー/障害とかじゃないんだ 俺はスーパーヒーローなんだ! スーパーヒーローなんだ! ウギャーーーー」 最後の「ウギャーーーー」はイケシロ追加訳。そう聞こえるから。   3.All Mine タイ・ダラー・サインとカニエのGOODミュージックにいるヴァリーを迎え、女性というか、性愛をテーマにした曲です。タイ君のヴァースが飛び抜けて下品ですが、カニエも面白い。 “If I pull up with a Kerry Washington
That’s gon’ be an enormous scandal, I could have Naomi Campbell
And still might want me a Stormy Daniels「ケリー・ワシントンと撮られたら大スキャンダルだよな/ナオミ・キャンベルとだってつき合えるしストーミー・ダニエルズだってイケるかも」 ケリー・ワシントンは人気の黒人女優、ナオミさんは説明不要のスーパーモデルでカニエとも仲良しのはず。そして、ストーミー・ダニエルズは現在、トランプ大統領の足を引っ張るポルノ女優さんです。ストーミーさんは06年にトランプさんと関係を持ち、大統領選前に口止め料をもらったものの身の危険を感じたとかで、メディアに出てきました。口止め料の出所が選挙資金だった可能性があるため、大騒ぎになっています。 彼女の名前をカジュアルに出してしまうあたり、カニエ、全然トランプさんの味方になっていません。このアルバムのあちこちで「発言を撤回しない」「言いたいことは言う」という強気の姿勢を見せるものの、このライン一つで暗に「そこまでトランプさんを支持していないよ」と伝えていて、なかなかの策士。 ところで、ケリーさんは41歳、ナオミさんは48歳、ストーミーさんは37歳。カニエ、同年代以上の女性が好きなのかな。そういえば、しばらく執心していたロカフェラの元ボス、デーモン・ダッシュの従姉妹でもある女優、ステーシー・ダッシュ(映画『クルーレス』が有名です)がケリーさんと同じ系統の顔ですね。ステーシーさんはみんながオバマさんに心酔していた08年に共和党支持を表明して物議をかもしたので、カニエの先輩だな、と思い出しました。いまでも崇拝していたりして。 それから、この曲には義妹、クロエの子供の父親であるNBA選手のトリスタン・トンプソンが妊娠中に浮気をしたゴシップを受け、口撃するラインがあります。カダーシアン家のこととなると、まぁまぁマスオさん状態になるカニエ・ウエスト、嫌いじゃないです。   4.Wouldn’t Leave パーティー・ネクスト・ドアーと、お久しぶり!のジェレマイ、タイ・ダラー・サインをゲストに、妻のキムさんへの愛を歌っています。 「奴隷制は選択だった」発言の際、息ができないほどパニックになったキムさんに怒られたこと。カニエは「出て行ってもいいよ」と言ったこと。でも、キムさんがそばから離れないとわかっていたこと。 アウトロで、 「奥さんや彼女に恥をかかせるようなことを言ったりやったりしてもいいんだ/そのエネルギーを失うな/それで彼女の忠誠心が試せるから」 という、独自の超上から目線の結婚観を披露。キツい。キムさん、えらいですね。もう、それしか言えない。あ、とてもいい曲です。   5.No Mistakes カニエが大好きなスリック・リックの声から始まるこの曲、スリックさんの“Hey Young World”を敷いています。ケリ・ヒルソンの大ヒット“Knock You Down”で「I’m the new Slick Rick(俺が新しいスリック・リック)」と宣言して、「いや、違う」と方々(とくに私)から突っ込まれたカニエさん、ずっとスリックさん好きなのですね。 キッド・カディとギャップ・バンドのチャーリー・ウィルソン叔父がコーラスを歌い、「それでもみんなのこと愛しているよ!」というメッセージと「自分より成功してない奴のアドバイスは聞かない」という「ごもっとも」な開き直りが共存する、カニエ節全開チューン。 私は、「Oh, I got dirt on my name, I got white on my beard/名前に泥がついちまった/ヒゲに白髪が混じってきた」という、なにげないラインが詩的でとてもいいな、と思いました。40代突入ですものね、蟹江さんも。 あ。白髪は「グレイヘア」の方がふつうか。文面通り「白いものがついている」かもしれません。だとしたら、いやだなぁ。   6.Ghost Town モゴモゴとジョン・レジェンドがイントロを歌い、キッド・カディが「愛されたかっただけなのに/頑張るほど君は離れて行く」とパンチラインを歌う、友情に溢れた曲です。ジョンがカニエやカディのオフビートな歌声に合わせて、いつもの美声を響かせないのも、キッドが蟹江の本音を代わりに熱唱してハンパない舎弟感を醸し出しているのも、すべて友情の賜物。カニエは本作のテーマは「愛」と騒動の途中から言っていましたが、個人的にこの曲に一番の愛を感じました。 後半を担当する070 ShakeはGOOD Music所属のフィメイル・ラッパー。好きなタイプの声だわー。もっと聴きたい。 私は、カニエの新作よりキッド・カディの新作が楽しみという、日本にもう一人いるかいないかの変わり者なので、この曲を一番よく聴いています。カディ愛はまた別の機会に書きますね。長くなるから。
写真がないので、ヴィンテージのGOOD MUSIC Tシャツをさりげなく自慢。隣はビヨンセのペプシTシャツ。アメリカで売ったら高いだろうけど、絶対売らないの。
  7.Violent Crime 「暴力的な犯罪」というタイトルなのに、ちゃんと聞くと娘二人(主に長女のノースちゃん)への愛をテーマにしている曲。デジ・ローフちゃんが、キュートなコーラスで「あまり早く成長しないでね」と歌い、カニエは「ニガーは残忍/ニガーはモンスター/ニガーはピンプでニガーは遊び人/自分の娘を持つまでは」という秀逸なラインを書いています。娘が彼氏を連れてきたら「ぶっ叩く」と言っちゃってるし、カニエ、ここではふつうのお父さんです。 ただ、「ニッキ(・ミナージュ)みたいになってほしい」は凡人には解釈が難しい。最後に出てくるニッキ本人が「わかった、彼女をモンスターにしてあげる」と約束しています。   ノースちゃんの将来、モンスターに決定。   以上、簡単に解説してみました。   プロデュースは、全曲カニエ。GOOD ミュージック所属のベテラン、マイク・ディーン、話題の新人、フランシス&ザ・ライツ、そしてエド・シーランやジャスティン・ビーバーと仕事をしているトップ中のトップ、ベニー・ブランコが助っ人に入っています。 この人選を見ても、『Ye』は、衝動的に作ったようで、完全に勝ちを取りに行っているアルバム。双極性障害を含め、「このままの俺を受け止めてくれ」と全身全霊、全曲全ラインでカニエ・ウエストが訴えています。 そんなに訴えてこなくても、みんな、カニエ・ウエストが大好きなのにね。なんでわからないかな。   We DO love Kanye, don’t we?   おかえりなさい、カニエ& Ye。  ... Read More

ASAPファーグ&ティファニーのすてきな企て

日曜日にMacBookのデスクトップの整理をしたらー。書きかけのブログが11もあったぜ! その中から比較的、新しくて前向きな話を。 私はチキン派なので(ダブルミーニング)、ビーフとか食傷気味です。 まずは、こちらをご覧いただきましょう。 ティファニーの新しいキャンペーンにASAP ファーグと女優のエル・ファニングが起用されて、不朽の名曲「ムーン・リヴァー」をカヴァー&リミックス。 「ムーン・リヴァー」は言わずもがな、1961年の映画「ティファニーで朝食を」で、オードリー・ヘップバーン扮するホーリーが歌った曲。映画のテーマソングとしてオスカーを獲得しただけでなく、翌年のグラミー賞のレコード・オブ・ジ・イヤーとソング・オブ・ジ・イヤーをダブル受賞。56年(!)の間に何百回とカヴァーされています。今年に入って、フランク・オーシャンもカヴァーしていますね。曲の雰囲気と儚げな彼の歌声がマッチしてすてきです。 エルちゃんも負けてない。オードリーと同じ、女優さんらしい表現力でグッときます。このヴィデオの冒頭も、イエロー・キャブが映った後でティアラをつけたヒロインが登場、手にコーヒーを持っているあたりが、映画へのオマージュになっています。さすがに、ジバンシィのリトル・ブラックドレスは着ていませんが。ヘップバーンの代表作のひとつに「ファニー・フェイス」(邦題「パリの恋人」)がありますが、彼女は正統派美人で、エルちゃんこそファニー・フェイス系。表情がころころ変わって愛くるしい。 これ、ティファニーの新しいデザイナー、リード・クラッコフの新しいシリーズ「ペーパー・フラワーズ」シリーズのキャンペーンCM。エル・ファニングがひらひらと見せびらかしているのが、それです。 NYタイムズの記事によると、ASAPファミリーから一番有名なロッキーではなく、ファーグに白羽の矢が立った理由がすてき。「ハーレム出身でティファニーの本店があるニューヨークのイメージに合うこと、そしてお父さんが服飾関係の仕事をしていたこと」だそうで。 つまり、ティファニー側は、ハーレムのファッション文化に敬意を表したんですね。ティファニー本店がある5番街の真ん中から、ハーレムの目抜き通り125丁目まで地下鉄の快速に乗れば10分くらい。でも、その間にはなかなか越せないふかーい溝があります。
ファーグさんもパリッとしてます、彼女さん?奥さんがすっごい美人ですね。
ファーグも「ミッドタウンの高校に通っていたから、毎日のようにティファニーの前を通っていたけど、別世界だと思っていたから足を踏み入れたことはなかった」、とコメント。お披露目パーティーにはナオミ・キャンベルやゼンデイヤのほか、ダッパー・ダンも顔を見せたそう(彼に関しては、友人のエドウィン・スタッツのQの記事がめでたく訳されたのでリンクを貼りました。エドはかなりのレゲエ・ヘッドです、ちなみに)。 ティファニーといえば、最近、ちょっとおもしろいことがありました。叔母から生前形見分け? という理由でもらったエメラルドとダイヤのブレスレット、金具が古いタイプだったため外し方がわからず、ネットで調べたら、なーんとティファニー!!! のコピー商品だったんです。いやー、笑った。ティファニーのコピーとか、めっちゃヒップホップ。石は本物だし、ガンガンつけようと思います。気が向いたら、そのうち写真をアップしましょう。 ところで。ASAPロッキーの新作「Testing」、本人&ヒップホップ全体の新境地に到達していて素晴らしい。いまも聞きながら、これを書いてます。ロキ太郎への愛もそのうち、記したいと思います。たぶん。... Read More

Ye VS the People、訳しました。結論。I♡T.I.

2018年、4月最終週は怒涛のリリース・ラッシュ&ニュース・ラッシュでした。ジャネール・モネイ、アンドロイドから生身に戻ってからの、カミングアウト/NAS元嫁ケリースからDV疑惑/J・コールの鋭すぎるラップ。チャートの頂点取りつつ、敵が増えること確実/もろフランク・オーシャンな曲を含め、小袋成彬という奇跡。そして、またしてもカニエ・ウエスト大暴れon line。 スーパー仕事モードで、われながら気の毒なGWを過ごしている私を爆笑させてくれた『Ye VS The People 』訳してみますね。緊急リリースされただけあり、フリースタイルの応酬に聞こえます。 まず、基本情報。 過日、お騒がせ天才ラッパー、カニエ・ウエストが“MAKE AMERICA GREAT AGAIN”というトランプ大統領のスローガンが入った、通称MEGAキャップを被ってSNSに登場。四方八方から飛んでくる矢をはね除けるように弁護ツイートを連打して、事態はさらに大ごとに。Hot 97のプログラム・ディレクターのEbroと言い合いになるわ、チャンス・ザ・ラッパー、ジョン・レジェンド、カーディー・Bは巻き込み事故に遭うわ。正直、いくらなんでも騒ぎすぎ、と思いました。だって、これってカニエがカニエらしくしているだけの話じゃない。まぁ、トランプさん本人も応えちゃったからね(大統領、もうちょっと重要任務があるでしょうに)。海外の新聞や大手サイトもかなりの字数を費やして分析しているので、僭越ながら私の頭によぎった、いくつかの憶測を。 1. キムエ夫妻お得意の炎上商法が、効果が出すぎたケース。狙いは6月新作への話題作り 2. 2009年に酔っ払ってテイラー・スウィフトのVMAの受賞スピーチを乱入&邪魔をした翌日、記者に「カニエ・ウエストの振る舞いをどう思いますか?」と聞かれたオバマ元大統領が「He is a jackass(奴はクズだ)」と瞬殺したことをまだ根に持っている。そして、同じくオバマ・コンプレックスが強いトランプさんに共感している。まぁ、カニエとオバマさんは、仲直りしていますが。「自分も大統領になりたい」と直訴したカニエに対して、オバマ先輩は「アメリカは変わった名前の黒人男性をふたりも大統領にするほど進んでないんじゃないか」という、ウィットに富んだ返答をしています 3.  虚言癖があり、派手で目立つことが大好き、メディアは大嫌い、と共通点が多そうなトランプさんがどうしても嫌いになれない 4.単に、酔っ払っていたかハイになっていた この写真を見た時、私が「これ、ただの趣味の悪いシャレでしょ」と思ったのは、笑顔で隣に写っている白人男性がリオ・コーエン(Lyor Cohen)だったから。盟友ケヴィン・ライルスと一緒に、デフ・ジャム〜ワーナーを渡り歩き、いまは300エンターテイメントを回し、16年からYouTubeの音楽部門のトップも兼任。ジェイ・Zあたりも頭が上がらない超大物です。デフ・ジャム時代のオフィスに奈良美智の絵が飾られていたのは有名。ユダヤ系アメリカ人としてヒップホップ・カルチャーにものすごーく貢献した人で、つまり、トランプさんの支持者層に多い白人至上主義の正反対の位置にいます。その人が本気にしなかったのだから、シャレなのかな、と。コーエンさんもこんなに騒ぎになると思ってなかったみたいで、「カニエは絶対にサポートするアーティストだけど、帽子が意味することと私は無関係」とEbroに電話したそう。 さて。サクッと訳しましょうか。   KW :I know Obama was Heaven-sent But ever since Trump won, it proved that I could be President オバマは神様の使いだったのはわかってる でもトランプが勝ったのは 俺だって大統領になれるってことなんだ T.I.Yeah you can, at what cost though?  Don’t that go against the teachings that Ye taught for? そうだ なれるかもね でも何のために? それっていままでのカニエ学の真逆に行ってない? KWYo T.I.P., I hear your side and everybody talk though  But ain’t goin’ against the grain everything I fought for? ああ TIP そっち側の意見は聞いたよ でも それってむしろ俺が闘って得たことに反するんだ T.I. :Prolly so, Ye, but where you tryna go with this? It’s some shit you just don’t align with and don’t go against そうなのかもしれないけど カニエ お前どこに向かってるんだ? (政治って)簡単に迎合したり反対したりするものでもないだろうよ KWYou just readin’ the headlines, you don’t see the fine print  You on some choosin’-side shit, I’m on some unified shit 見出ししか読んでないからだよ 細部まで見ていない お前はどっち側につくかの話をしている 俺は統一する話をしている T.I.  It’s bigger than your selfish agenda If your election ain’t gon’ stop police from murderin’ niggas おまえの個人的な目標なんかよりデカイ話なんだよ お前が選挙に勝ったって警官は黒人殺しをやめないだろうし KW  Bruh, I never ever stopped fightin’ for the people  Actually wearin’ the hat’ll show people that we equal 兄弟 俺は人々のために闘い続けてるよ 事実 あの帽子を被るのは俺らが対等ってことを示すためだ T.I.  You gotta see the vantage point of the people What makes you feel equal makes them feel evil 大半の人にそうは見えてないって気づけよ お前が対等だと思ってしていることで みんな嫌な思いをしている KW : See that’s the problem with this damn nation  All Blacks gotta be Democrats, man, we ain’t made it off the plantation それがこのダメな国の問題なんだ 黒人全員が民主党支持者とかって 奴隷時代から変わってないじゃないか T.I.  Fuck what you choose as your political party  You representin’ dudes who seem crude and cold-hearted  With blatant disregard for the people who put you in position  Don’t you feel an obligation to them? 支持政党の話はどうでもいい お前が支持を表明した男は 粗野で冷血 お前をいまのポジションに押し上げてくれた人たちを露骨に無視している そういう人たちに責任を感じないのかよ? KW:I feel an obligation to show people new ideas And if you wanna hear ’em, here go two right here Make America Great Again had a negative perception I took it, wore it, rocked it, gave it a new direction Added empathy, care and love and affection And y’all simply questionin’ my methods 俺は新しいアイディアを示す方に責任を感じてる それを聞きたいなら いまここでふたつ示してやる 「アメリカを再び偉大に」はネガティヴに捉えられている 俺は受け入れて 身につけて ばっちりキメて 新しい方向性を与えた 共感と思いやり 愛と優しさを加えたんだ それなのにお前ら全員 俺のやり方だけにケチをつける T.I. What you willin’ to lose for the point to be proved?  This shit is stubborn, selfish, bullheaded, even for you  You wore a dusty ass hat to represent the same views  As white supremacy, man, we expect better from you  All them times you sounded crazy, we defended you, homie  Not just to be let down when we depend on you, homie  That’s why it’s important to know what direction you’re goin’ now  ‘Cause everything that you built can be destroyed and torn down  それを証明するために お前が何を失うかわかってる? 今回のことはいくらお前でも 強情だしわがままだし無茶苦茶だ お前が被ったあの埃っぽい帽子が示している見解は 白人至上主義者のものだぞ みんなお前にはガッカリだ お前がトチ狂ったことを言ったときも俺ら味方になったじゃないか ホーミー こういうときに頼りになるどころかガッカリさせられるなんて ホーミー だから お前がどこに向かっているかを知るのは大事なんだ これでお前が築いてきたものすべて 粉々に破壊されるかもしれないから KW:You think I ain’t concerned about how I affect the past? I mean, that hat stayed in my closet about a year and a half Then one day I was like, “Fuck it, I’ma do me” I was in the sunken place and then I found the new me Not worried ’bout some image that I gotta keep up Lot of people agree with me, but they’re too scared to speak up 俺が自分の功績を気にしていないとでも思ってる? あの帽子は1年半くらいクローゼットにしまっていた それである日 「構わねぇ 俺は俺らしくする」って思い立った 俺はひどく沈んだ場所にいて 新しい自分を見つけたんだ もういままでの自分のイメージなんて気にしない 俺と同意見の人は多いと思うよ 怖くて言えないだけで T.I.:The greater good of the people is first Have you considered all the damage and the people you hurt? You had a bad idea, and you’re makin’ it worse Shit’s just as bad as Catholic preachers rapin’ in church 人々ファーストが大義ってか マジでどれくらいダメージがあるか みんなが傷つくか考えてるのかよ お前はまずいアイディアを思いついて それを悪化させている 教会でレイプするカトリック神父並みだ KW :Y’all been leadin’ with hate, see I just approach it different Like a gang truce, the first Blood to shake the Crip’s hand  I know everybody emotional Is it better if I rap about crack? Huh? ‘Cause it’s cultural? Or how about I’ma shoot you, or fuck your bitch? Or how about all this Gucci, ’cause I’m fuckin’ rich ほら お前らは憎しみに導かれている 俺のアプローチは違う ギャングの停戦みたいに 最初にクリップスと握手したブラッズのメンバーみたいに みんな感情的になっているのはわかっている 俺がクラックのことをラップした方がいいのか? ハァ? その方がカルチュラルだって? それとも「お前を撃ってやる」とか「お前の女をヤッてやる」とか? それとも「このグッチ全部みろよ だって俺は金持ちだから」とか?  T.I.:You’ll deal with God for the lack of respect Startin’ to make it seem like Donnie cut you a check  Now you toyin’ with hot lava, better be careful with that What’s it mean to gain the world if you ain’t standin’ for shit? Okay I gotta say it, Ye, you sound high as a bitch Yeah, genocide and slavery, we should just try and forget All that free thought shit, find a better defense But if Ye’s just stuck in his way, he can leave it at that Fuck it お前 リスペクトがなさすぎて天罰下るぞ もうドナルドから小切手もらってるように見えてきた お前は燃え盛る溶岩で遊んでいるんだ 気をつけな 自分が何を代表しているか見失ったら天下を取っても意味ないだろ わかった ずばり言う カニエ お前はラリっているようにしか聞こえない 民族浄化に奴隷制度 俺たちが水に流せばいいんだろ 信条の自由だと もっとマシな言い訳考えろ もし カニエの主張を変えないんだったら そうすればいいさ 関係ねぇし KW :Alright T.I.P., we could be rappin’ about this all day, man, why don’t we just cut the beat off and let the people talk? わかったT.I.P 俺ら日が暮れるまでラップし続けられるけど とりあえずビートを止めて みんなにあれこれ言わせようや   えー、ということで、みんなで、あれこれ言ってほしいみたいです。部分的にカニエが正しく響く箇所もあるでしょう。ただし、論理のすり替えが多すぎ。ああ言えばこう言う、で論理の一貫性がない。ギャングの和解は全然違う話だし。共和党支持者の黒人はもちろんいるし、なんなら議員さんだっています。カニエが共和党支持者なら、それはそれでいい。問題は、カニエがトランプさんの何に共鳴し、どの政策を支持しているのか一つも出てこないこと。メキシコの国境沿いに壁を作った方がいいのか。保護主義がいいのか(彼みたいに国外の売り上げが多い人はマイナスだと思うけど)。銃規制を支持するマーチに参加していたけれど、トランプさんを説得するつもりはあるのか。 私は お花畑蟹江 VS まともなおっさん代表T.I. だと思いました。 久々に、T.I.愛炸裂。『Paper Trail』聞いちゃったし。もう、Q−Tipに気を使わないでTipを名乗ってほしい。少しくらいまぎらわしくてもみんな区別つくよ。「Trapは自分が始めた」とか、ちょっと痛い発言も忘れます。I❤T.I. [caption id="attachment_2572" align="aligncenter" width="300"] T.I. circa 2004 この頃はふつーにワルそうでした。ジェイ・Zのクラブ、40/40のジャケットを着てますね。 Photo By Minako[/caption] カニエが言うように、愛を以ってトランプさんのスローガンに新しい方向性を持たせられたらすばらしいけれど、ふつうにニュース追っていたら、そうは思えないよなぁ。Sunken Placeが深すぎて、カニエさんの耳には入らなかったのでしょうか。... Read More

映画『デトロイト』とケンドリック・ラマーのグラミー賞パフォーマンスをつなぐ線

50年前、デトロイトでの暴動中に起きた悲劇を描いた『デトロイト』を観たのが1月27日の土曜日。それから、1日半後にケンドリック・ラマーがグラミー賞のオープニングのパフォーマンスで話題をさらいました。 『デトロイト』で描かれていた出来事と、ケンドリック・ラマーが出番の最後で見せた赤いフーディーを着たダンサーたちを銃声とともに撃ち殺していくジェスチャーは、一本の線で結ばれています。 アメリカが抱える大きな闇、警察官による黒人男性への暴力と、それを野放しにする司法制度という消えない線。 公開中の『デトロイト』は、実話です。1960年代、自動車産業と音楽で盛り上がっていたミシガン州デトロイトで人種間の軋轢がひどくなり、店頭を襲い略奪するなど暴動が続く中で起きた実話をもとに、取り締まりを口実に私刑(リンチ)をした警官が有罪にならなかった顛末を追っています。『ハートロッカー』でオスカーを獲ったキャサリン・ピグロー監督らしく、カメラがグイグイと寄り、銃を突きつけられる絶望感が伝わってきて、すごい迫力。被害者に、後に“Whatcha See is Watcha Get”などのヒットを飛ばすドラマティックスのメンバーがいました。歌でアメリカン・ドリームを追うはずが、アメリカのシステムに裏切られるくだりは本当に切ないです。     楽しい映画ではありません。いや、とっても怖い映画ですが、「差別意識がないのだから、顔を黒く塗るブラッックフェイスは日本ではセーフなのでは?」という案件を先月、真剣に考えた人にはヒントになるように思います。 「なぜいけないか」を理論的に説明した文章はいくつかネットにあるのでそちらを参考にしてもらうとして、私はものすごくざっくり、感情的に(実際、この件を考えるたびに 緊張してぐったりします)、海外に住んでいる人が 日本の芸能人のブラックフェイスを見ると「ヒィーーーーッ」と恐ろしいものを見たような反応になるのか、書きますね。   それは、「無神経だから」です。   今、肌の色を変えて笑いを取ろうとする姿勢が、とてつもなく無神経に映るのです。「日本ではピンとこないだろうけど、差別つもりはないかもしれないけど、気を遣え」。これが、「ヒィーーーーッ」となる理由です。 「浜田雅功さんはエディ・マーフィーのマネで、エディ自身、肌の色を塗って他人種になっているのだからいいのではないか」という反論も目にしました。   ダメなんです。   エディ・マーフィーという人は、老若男女、肌の色や体型まで完全に変えて一人で何十人もの人を演じ分ける芸風で有名になりました。白人やアジア人にもなるのは、社会風刺のための手段。「こんなに化けられて面白いでしょ」という面もあるけど振る舞いや話し方まで含めて化けるから風刺になるのです。色を塗って終わり、とい単純な話ではないし、見ていて誰も不愉快にはならない。   ケンドリックの話をします。赤いフーディーは、2012年に黒いフーディーを被って夜道を歩いていただけで怪しい、と本物の警察官でさえない、自警団のジョージ・ジマーマンに撃ち殺されたトレイヴォン・マーティン事件に起因します。トレイヴォンくんは、17歳でした。ジマーマンは無罪になった上に、判決後は安全な場所に匿われました。この時、大統領だったオバマさんが「二人の娘を持つ父親として、とても悲しい判決だ」と言葉を選んで本音を伝えました。 この事件の後も、もう何十件も似たような事件が起き(Black Lives Matter/ブラック・ライヴス・マターで調べてください。その数の多さ、無慈悲さに戦慄します)、相変わらずポンコツな陪審員制度で警官はまず無罪になっています。「ブラック・ライヴス・マター(黒人の命だって尊い)」というキャッチコピーがついたおかげで最近のムーヴメントだと勘違いする人もいるようですが、ずっと続いているアメリカの暗部です。 私も2000年頃、ニューヨークにきて間もない人に「ブルックリンの警官は凶暴だと聞くから」と一緒に家まで歩いて欲しいと言われたり、同じ時期にアジア系の警官が目につくようになって、話したら「白人以外を積極的に採用しているんだ。まぁ、居心地は悪い」と言われたりしました。ずっと続いている問題なのです。 ここ最近は、暴動こそ起こりませんが、報復で警察官が殺される事件も起きています。平和を訴えるデモが起こり、そのデモに今度は差別主義者が割って入って衝突。トランプさんは「どちらも悪い」と大統領としてあるまじき発言をして事態を煽りました。 その絶望を映すのが、ケンドリック・ラマーのアルバムタイトル「Damn(ちくしょう)」であり、アートワークの虚ろな表情なのです。もちろん、それだけではなく、スターになった孤独、愛、宗教、自分の中の葛藤など、ラップしている内容は多岐に渡っていますが(前作の方がBlack Lives Matterを象徴する内容でした)。時代の気分をラップで的確に、詩的に切り取ったから、彼の4作目は高く評価されたのです。 日本には日本特有のストレスがあるし、この問題を親身になって一緒に怒ったり、海のこちら側から解決したりしよう、というのは偽善かもしれません。 ただ、無神経な振る舞いはやめないと。ハロウィンに黒塗りとか、完全にアウトです。 アメリカでは黒人の人だけでなく、すべての人種がこの問題を憂えています。だって、そうでしょう。罪のない同僚やクラスメート、近所の人が警察官に誤解を元に暴力を振るわれて、おまけにその警官は法に守られているため、似たような事件が続く国が自国なんてふつうの神経なら辛いです。   アメリカでは暴動が起きない代わりに、いや、起こさないように映画やテレビドラマ、音楽でこの問題に関するメッセージを含めた作品が次々に生まれています。話題作『スリー・ビルボード』(大傑作)も伏線の一つも、それです。アメリカのエンターテイメント作品に触れる機会が多い人は、あまり楽しくなくてもこの事実は頭の片隅に入れておいて、動向を見守ると理解が深まると思います。 昨日、正式に公開になったケンドリック・ラマーのパフォーマンスです。途中で言葉を挟むのは、90年代に一世を風靡した後、体調を崩して活動休止をしていたデイヴィッド・シャペルです。エディ・マーフィーをさらにエグくした芸風の人ですね。   キツめの文章におつき合いいただき、ありがとうございました。気分を戻せるように、ソウルフード・レストラン「Peaches」のブランチ・メニューの写真も貼っておきますね。 ... Read More

来日直前&お誕生日おめでとう!ジョーイ・バッドアス

ブルックリンはイースト・フラットブッシュ育ちのジョーイ・バッドアスくん、来日直前です。 そして、本日1月21日は、彼の誕生日です。 Happy earth strong, Joey “Badmon”Bada$$! もうね。大好き。長らくブルックリンからパッとした人が出なかった時期、2013-2014年に出てきたから地元の期待が大きくて、彼と同世代の10代から、私と同世代のジジババまでもけっこう早くから話題にしていました。 チャートでもネットでもなくて、私が街の噂からチェックして売れた最後のラッパーになるかも(もう東京住まいなので)。そういう事情も含めて、思い入れがあります。 エイサップ・ロッキーの“1 Train”(名曲!)でもケンドリック・ラマ男さんやイェラウォルフ、ダニー・ブラウン(来日して〜)、アクション・ブロンソン、ビッグK.R.I.Tらと参加、 存在感を放っていました。 彼の魅力は、音が老成していること。フロウもライムもひと昔のクラシックをよーく研究しています。DJプレミアが思わず、力を貸すようなジジイ殺し。彼によく使われる、”He has an old soul”(彼は精神的に大人だ/世間をよくわかっている)はほめ言葉ですが、私の世代にウケが良すぎるのは、少ーし危険な気がします。 いやー、私もですね、30代までは自分がいいと思った音は絶対的に、世間的に、音楽史的に「良い!」と自信を持ってお勧めしていたのですが、40代に入ったあたりから、あまりにしっくりくると「90年代っぽいんじゃ?」「サンプリングや言い回しがリサイクル系なんじゃ?」と一度、疑うクセがつきました。 自分がピンとこなかった新しい音を「くだらない」とか「私の耳には叶わない」と言い切れる大御所評論家さん、正直うらやましいです(消費税分くらいの皮肉が入っています)。 さて、23歳になったばかりのバッドアスくんの魅力をいくつかあげましょう。 その1 その、優れたリリシズム。2013年の「#LongLiveSteelo」と言った抒情的な曲で真価を発揮します。Nasのデビュー時とよく比較されるのも納得。 その2 ジャマイカ人のお父さん、セント・ルシア人のお母さんを持ち、カリブ系移民が多いフラットブッシュとベッドスタイで育っているので、レゲエやジャズなど多様な音楽が自然に体に溶け込んでいて、それをよくブレンドしています。レゲエ畑からは、コリー・バッズとクロニクスと曲を作っていますね。 その3 最新作『ALL-AMERIKKAN BADA$$』で顕著になったのが、かなり本気で歌えること。まぁ、いま売れている若いラッパーは、フックも自分で歌うのがデフォルトみたいになっているんですけどね。その中でも、雰囲気のある歌声を聴かせます。 その4 最新作では、 社会的、政治的なリリックが増えて話題になりました。それが、青くさいほどに、真っ直ぐで。「世界を変えられなかったら、まず自分を変えよう」とか「アメリカは俺らに愛がないんだ」とか、しまいには「FUCK DONALD TRUMP!!」とか、どストレート。私は22歳(当時)らしくて好感度大なのですが、ラマ男さんやチャンスくんと言った出来杉くんが多いので、その点は少し叩かれちゃいました(前作までは内容より響きを重視した凝ったライムが多かったです)。でも、英語ネイティヴでない人間には、伝わりやすくていいと思います。 その5 佇まいがカッコいい。ニューヨークで育った人独特のswagがあります。その上、スタイルがいいので、服が似合う。エイサップ・ロッキーもそうですね。神様ってば不公平。 その6 イーストコースト・ヒップホップへの愛がとっても強い。今回のサンプリングはビギーにナズにノーティ・バイ・ネーチャー(アウトキャストもあるけど)。結果、曲としてはギャング・スターやウータン(というか、グレイヴディガス)ぽく響くという。いままでも、ア・トライヴ・コールド・クエストやナズを引っ張っています。これ、狙っているのではなく、自分が育った環境に当たり前にあった音楽を取り入れただけだと思う。90年代のヒップホップって、ニューヨークだとサンドイッチ屋やコーヒーショップにふつうにかかっているのです。 その7 当たり前ですが、ラップがスーパー上手です。フロウ、滑舌、ライムの切れ、発音、緩急のつけ方。子供の頃からずーっとずーっとラップをしてきた人の巧みさです。年齢−3歳=ラップ歴になります、的な。 俳優デビューもしています。「ミスター・ロボット」というハッカーもののテレビドラマ。めっちゃ面白いです(私はまだ2話目までしか観ていませんが。ジョーイくん、まだ出てきていませんが)。アマゾンで見られるので、興味のある人はぜひ。 いやー、来日、楽しみですね。バンドセットですよね。ワクドキ。... Read More

エミネム『Revival』はキャリア最悪のアルバムなのか。

また、煽っているようなタイトルをつけてしまいましたが。 うん、USの評論家筋、音楽サイトの評価がけっこう分かれているんですね。で、中には「最悪」とまで書いた人もいる。ピッチフォークも散々。しばらく前からつまらなくなっているサイトなので、それほど気にしなくていいとは思うけれど、それなりに影響力はあるので。 もう。 毒舌&憎まれっ子世にはばかるデトロイトver.のシェイディさんだけれど、死ぬほど繊細で、あまりいじめるとドラッグ・アディクトの世界に戻ってしまうので、もう少し気を遣ってほしいわ。 2010年の『Recovery』で、「ありのままの俺」スタイルの頂点を極めてしまったので、あれを超えるのは難しいのは事実。あのキレッキレのライムを求めた人たちが、物足りなさから最新作をdisる気持ちは正直、わかります。後半に「これ、いる?」な無理やりなロック・テイストな曲が入っているし。 そうそう、マイナスのレビューでよく出てくる言葉が「clumsy」。ガチャガチャしている、という意味ですね。それも、確かに、と思ってしまう。リック・ルービンやドクター・ドレーも参加してるのに、誰かまとめるの手伝ってあげればよかったのに、とか、曲順がおかしいのかな、とか。 でも、キラリと輝く瞬間もたくさん。やっぱ、エム最高だわ、とグッとくるライムもいっぱい。曲を止めて聞き直してしまうので、そういう意味でストリーミングで聞くのに向いているアルバムです。 私、彼が売れまくった00年代前半はあまり好きじゃなかったんです。理由は単純。声と滑舌が苦手だった。カツカツコツコツした感じが耳障りで、「白人っぽいなぁ」と思ってた(ごめんなさい)。 デビュー直後、ハマーステイン・ボウルルームでキノコ(!)だらけのセットで「マイ・ネーム・イズ〜!」とやって、女子がキャーキャー言っている中、フォトピットで頑張って写真を撮っていたら、下着が飛んできたのも辛かった。 だけど、様々な局面を乗り切って、憂いを帯びたここ数年のエミネムはどうしても見てしまうし、聞いてしまうし、応援してしまう。2011年、ロイス・ダ・5’9との『Bad Meets Evil』で対訳を担当して、エミネムのリリックの凄さに改めて喰らったのも大きかった。 (ブルックリンの壁画。本作のイメージが近いかなと思って) おっと。『Revival』の話でした。星条旗の後ろに頭を抱えて困っているエムがいるアートワーク。BETアワーズの名物サイファーで、トランプ大統領に舌鋒鋭く切り込んだ「The Storm」を披露して話題になったばかりですが、トランプさんサポーターが多いデトロイト出身の白人であるエミネムが「Fxxk You」と中指を立てたのは、ブラックのラッパーが同じことをいうよりずっと重みがあります。 アリシア・キーズとの「Like Home」は、「ホーム」であるアメリカに対する愛があふれていて素晴らしいです。ジェイ・Z feat. アリシアの「Empire State of My Mind」とよく似ているというか、あの曲と対になる曲でしょう。15歳の時からくっつくたり離れたりを繰り返している(2回結婚してます)、キムさんへの「Bad Husband」も切ない。 新しさは、あまりないです。 でも、限りなくスポーツに近い(=若さが武器になる)ラッパー稼業において、エミネムほどのラッパーが若手を意識して流行りのトラックや技を取り入れる必要もない。エド・シーランやビヨンセも、エミネムのアートに対するリスペクトがこもった歌声を聴かせています。 (04年、“Just Lose It”でエムがマネをしたPeewee Hermanの人形と、「スリと尻軽女に気をつけろ」のサイン。フリーマーケットで撮りました。ピーウィーとまとめてマイケル・ジャクソンをおちょくったので、BETはオンエアーを拒否しました) もともと、エミネムは過激なんです。その彼が「こんなに長く続けられると思わなかった。感謝するよ」とラップしているんだから、隔世の感があります。 うん、最悪のわけないよね。私は好きです。... Read More

フランク、ドレイク、カニエがグラミー賞にひじ鉄。あとフレディーさんも。

あと数時間でグラミーが始まるタイミングでこれを書くのも、少し天邪鬼ですが。アメリカで話題になっているので。  グラミー賞のボイコット、もしくは欠席の話です。  最新作『ブロンド』をはじめから受賞資格のための登録をしなかったフランク・オーシャン。そのフランク・オーシャンが無視されたら俺は出席しない、と言ったのがカニエ・ウエスト。「若いシンガーを正当に評価していないと思う」と、世間との「ずれ」を理由に出席しない意向を匂わせているジャスティン・ビーバー。同日にヨーロッパ・ツアーが入っている(=日程をずらさなかった)ドレイク。  それぞれ理由は違います。フランク・オーシャンは「僕みたいな育ちの人を、真っ当に評価していると思えない」という理由。白人男性が多いグラミー委員会は、たしかに「わかってないなー」と思う選択をしがち。カニエも似た理由で、彼はベックがアルバム・オブ・ジ・イヤーを獲ったのが気に入らないそう。似た理由でも、フランク海洋くんだと思慮深い感じがするのに、蟹江さんはゴネているだけに聞こえるのはどうしてでしょう。  ジャスティンは結局、出るだろう、とも言われています。ドレイクは今まで散々ノミネート(30とか)されているのに、1つしか受賞していないので、嫌気が差しているらしい。気持ちはわかります。人間だもの。  レゲエでは、最新作が選考から落ちたフレディ・マクレガー父さんがノミネート作品のほとんどがジャマイカのレゲエではないことに異議を唱えています。あと、レゲエ部門の選考委員のトップが、ジギー・マーリーの奥さんであるのも問題になっています。  ボイコットの歴史は古く、1989年にラップ部門がテレビで放映されないことに反発してLL・クール・Jやウィル・スミス&DJ ジャジー・ジェフも一斉にボイコットしました。このときは、功を奏して放映されるようになりました。  最近はビヨンセのサポーターとして機嫌よく出席しているジェイ・Zも、ヒップホップ部門の選考基準を不服としてボイコットしたことがあります。それから、スーパーボウルでポロリ事件を起こして締め出されたジャネット・ジャクソンをかばって、当時のボーイフレンド、ジャーメイン・デュプリが選考委員のトップを降りました。あれは男気があってカッコよかった。そのあと、ゴールインせずに、あっさり振られていましたが(ジャネット姉さんたら‥)。 これだけ大きな賞だから、全員を納得させるのは難しいですよね。  なぜ、これだけみんなが感情的になるかと言ったら、やはりダイレクトに売り上げにつながるから。フランク・オーシャンは前回のパフォーマンスが絶不調だったのも関係あるかもしれません。彼はものすごくうまい歌い手ではないけれど、艶のある、儚い歌を聴かせて、私は大好きです。声を張り上げるばかりが能じゃないし。  とはいえ。第59回グラミーの見どころは、ほかのところにあります。「政治的な発言をしていい」とグラミー側がはっきり言っており、アーティストたちがアメリカの現状に対してどう歌とスピーチで対抗するかが見ものです。カントリーの歌手にはトランプさんサポーターもいますが、大多数は反トランプなので、そこは荒れると思います。  トランプさんAKAオレンジ色の憎い奴の反撃twitterにも注目が集まるでしょう。  アデルとビヨンセがどこまで渡り合うかも楽しみ。ビヨンセは、フランク・オーシャン作のこの歌を貼っておきますね。最近のビヨンセの曲の中では、私はこれが一番好き。同じ意見の人、少ないだろうけど。  好きなアーティストが揃っている方が、やっぱり嬉しいよなー、という気持ちを込めて、I (will) miss you. という。フランクくん、見たいぞー😢 ... Read More