カニエ5作目:Teyana Taylor K.T.S.E

カニエ・ウエスト5連作の最後を飾るのは、R&B作品。テヤーナ・テイラー嬢のK.T.S.E(Keep The Same Energy/ティヤーナの方が発音近いですね)これがR&Bジャンキーには堪らない仕上がりで。1日3回服用中。一番好きなNever Would Have Made Itなんて、なんどくり返してもまぁったく飽きない。 ビヨンセ&ジェイ・ZのThe Carters、Everything is Loveより断然、こちらをよく聴いてます。レモネードは名盤、4:44も聴き込んだから、トリオロジーの締めがこれかー、って肩透かし。ベイチェラ(“ビーチェラ”じゃないよー。ビヨンセの短縮系はBeyで“ベイ”だからねー)で感動しすぎて、期待値が上がりすぎたかも(って、新作がこのタイミングで出るとは思っていませんでしたが)。まず、ジガさんの嫁自慢ヴァースがダサすぎる。ビヨンセがラップできるのはわかったけど「私のひひひひひ孫まで大金持ち」とかね、うん、知ってます。ボースティング(ほら吹き)はヒップホップの大切な要素だけど、それが事実ならただの嫌味だと思ってしまう私がひねくれているんでしょうか。夫婦漫才ならぬ夫婦ラップはDrunken in Loveがピークだったような。 一言。 ‥‥戻ってこーい、ジガさんーーーー(BK方面に向かって) by ジェイ・Z教信者。   あ、カニエ&テヤーナさんの話でした。   まず、テヤーナ・テイラーが誰か、から。カニエのGOOD Music所属で今回の連作一大プロジェクトに抜擢されたシンデレラ・ガール!!   ‥ではないです。27歳だけど、業界ヴェテラン。10代のときにMY Sweet 16というMTVのリアリティ番組でまず世に出て、それから音楽活動をしながらコリオグラファーをしたり、得意のダンスを生かしてダンス映画に出演したり、モデルをしたり。トリニダード系、ハーレム出身。すんっばらしいスタイルの持ち主(カニエのFADEのビデオ参照)。旦那はNBA選手のイマン・シャンパートで1児の母。ふつーに超超超勝ち組です、ハイ。   彼女のことは覚えていないけれど、MY Sweet 16という番組自体は覚えています。金持ちの娘が16歳の誕生日パーティーのためにわがままを言いまくって、大騒ぎする内容。ケーブルテレビ全体がリアリティTVに侵食されてから、アメリカ文化、およびアメリカ社会はおかしな方向に行った、というのが私の持論です。ちなみに、トランプ大統領が一般的な知名度を得たのだって、「お前はクビだっ」と暴れるリアリティTV。カニエとキムさんが仲良しだと知ったのも、Keeping Up Kardashiansで「お友達のカニエ・ウエストさん」という唐突なテロップとともに出てきた時でした。ちなみに、キムさんは前夫との結婚が終わっていないタイミング。まぁ、この話は別の機会に。   才能と美貌に恵まれたテヤーナさんは、「絶対有名になってやる」という決意とともに活動を続け、今回、実を結んだわけです。欲しいものは自分で手に入れるGo Getter (ゴーゲッター)タイプ。キムさんと同じなので、カニエさんが人間として好むタイプは一貫しているようです。   でもね。このアルバム、仮に、仮にね、「カニエ印」がなくても評判を取ったと思う。時間はかかったかもしれないけど。90年代、ヒップホップを吸収したR&Bが一番、元気だった時代のエッセンスを残しつつ、輪郭がくっきりと2018年という絶妙のバランスを実現した会心作。   では、サクッと曲紹介。その前に、カニエネタのブログ、たくさんの方に読んでもらえてうれしいです、ありがとうございます。それで、今回わかったことがあって。海外の著名メディアのレビューも、微妙に外すというか、「それちょっと違うんじゃ?」という箇所が必ず混ざっている。私自身を含めて、ライターひとりの見識ではカヴァーできないほど今回のプロジェクトは先を行っている、ということだと思います。   タイトル「K.T.S.E」はキープ・ザ・セイム・エナジーの略で、Yeでカニエがラップしていたヴァースです。   同じエネルギーをキープしろ=ブレるな。   了解です。   No Manners 韻を踏みながらは「(クラブ)コパカバーナに行って暴れるの。私、遠慮ないから」とラップに近い歌声でドスの効いた挨拶を入れています。テヤーナさん、アネさん系?   Gonna Love Me 大胆にデルフォニックスのFor The Love I Gave to Youを使った、一転して爽やかな曲。フォーク調の転調が入るあたり、インディア・アリーをちょっと思い出しました。インディアさんは来日してほしいアーティスト、トップ5に入ります。こういう抑え目の歌を聞かせるあたり、テヤーナさんも、かなりのヴォーカリスト。男女関係を続けていく難しさがテーマ。「自信をなくすようなことをしてしまったのなら、ごめんなさい」というラインがリアルです。旦那さんに宛てた曲かな?   Issues/Hold On ロマンティックなトラックにピコピコ音を持ってきてかなり変態なのに、歌そのものは正統派。Hold on hold on don’t let me go(私を離さないで)というフックの歌い方が最高。結婚式の二次会にかけるといいかも。   Hurry カリブ系としてのテヤーナさんの血がたぎっている傑作。これをシングルに持ってくるあたり、カニエ、完全に勝負に出ています。ふだん、レゲエやカリプソを聴いている人の耳にはスッと入るだろうし、それ以外の人は「よくわかんない」曲でしょう。アメリカのヒップホップ・メディアで低い採点をつけているところは多いけれど、私は最高だと思います。レゲエのリミックス出ないかなー。この曲だけ、カニエがラップで入っています。   3Way 「へぇ、カニエ組、こういう泣きのR&Bも作れるんだー」と驚いたら、ロドニー・ジャーキンズの名前が。納得。ブランディ&モニカ“The Boy is Mine”ほか、ここ20年の王道R&Bを作ってきた人です。ちなみに、ロドニーさん、めちゃめちゃいい人です。えー、“The Boy is Mine”みたいに女性2人と男性1人というシチュエーションですが、思いっきり下ネタ。3Pの曲。言葉がわからない方がいいタイプの曲。トーントトトーン♩で売れたシスコの歌い回しを投入していますね。絶対に結婚式でかけちゃいけない曲です。   Rose In Harlem 「ハーレム育ちだから」と、ハーレム道を説くハーコー曲。こそこそしない、ロイヤリティが大事、名指しで責めたりしない。テヤーナさん、気風がいいです。絶対、敵に回したくないタイプの女性です、ええ。   Never Would Have Made It 私のツボすぎて、この曲を聴けばマッサージもヨガも要らないと思うほど、全身がほぐれていきます。今年のベストソングかも、と思ったけど、まだ6月ですね。鳥の鳴き声からのいきなりの歌い出し、ピアノを伴奏にヴァースを歌って、いっきにゴスペルのクワイヤーを投入。ゴスペル・シンガー、マーヴィン・サップの同名曲を敷いて神様と大事な人への愛と感謝を歌っています。最後に幼いお嬢さんの声でしめる。チーム・カニエ、丁寧な仕事ぶり。今回のプロジェクトは奇襲をかけた形になっているけど、このアルバムに関しては手間暇かけている印象です。すごい完成度。これは、結婚式でかけたらとても素敵だと思います。 WTP Work this pussyって。挑発的な締めです。ナレーションを務めるのは兼ドラーグ・クィーンという異色のラッパー、ミッキ・ブランコ(彼のWavvyのヴィデオは必見)。Totalの曲を思い出すイントロから(どれか出てこないから、わかる人は教えてください)、レゲエっぽい節回しとハウス調のトラックを合わせて新鮮です。アウトロは、ハーレムでヴォーギングをするセクシャル・マイノリティーを描いたドキュメンタリー「パリは眠らない(Paris is Burning)」から引っ張っています。最後までハーレムにこだわるテヤーナさん、「誰もが知っているくらい有名になりたいの」という本音でまとめています。   あー、これで連作のすべてが終わってしまいました。毎週末、楽しみだったなー   NasのNasirは大切すぎて、またゆっくり書きます。一つだけ。「カニエのおかげでNasが復活」という捉え方も多いようですが、違いますよー。Nasはずーっと第一線。90年代のクラシックしか知られていない大御所が多い中、00年代のアルバムからもたくさんヒットあるし、2010年のダミアン・マーリーとDistant Relativesも2012年のLife is Goodも名作、ヒットも出しています。Distant Relativesはライナーを書いたけど、もう国内盤はないのかな。   話が逸れた。最後にテヤーナさんのゴシップをひとつ。彼女、出産後に減胸手術を受けています。胸が大きくなりすぎて生活に支障を来たすので、サイズダウンする人って、けっこういるんです。フィメイル・ラッパーとして先陣を切ったあと、女優に転身したクィーン・ラティーファもそう。   テヤーナさんが主演した映画のトレイラーを見つけたので貼っておきますね。今年、DVDでリリースされた映画ですが、撮影はずっと前のような気がします。もう一人の主演がテレビドラマ、エンパイアのハキームなので、お蔵入りになりそうだったのを引っ張りだしてきたような。   テヤーナさん、ダンスすごーい。観たいです。 テヤーナさんの映像、画像を見ると、腹筋をがんばりたくなります。割れてるなんてもんじゃない。... Read More

Sounds of Blacknessって知ってる?

ビルボードライブTOKYOでサウンズ・オブ・ブラックネスを見てきました。 決して派手ではないけれど、いまのブラックミュージックの屋台骨を支える重要な大御所、かつ大所帯のグループです。ゴスペルを土台に、リズム&ブルーズ(あえて)やファンク、一級のポップスまで聴かせるスタイル。半世紀近いキャリアがあり、アルバムをリリースした90年代からは全世界で活躍しています。 ブルックリンのフリーコンサートで見た時は、「ハレルヤ!」色の強い、黒人教会からそのまま出てきたようなステージでした。お客さんも教会の文化をよく知っている人たちだから、一体感がすごかった。私は少し、疎外感があった覚えがあります。 六本木でのステージはもう少しこなれていて、「Hold On,」、「Africa to America」といった自分たちの代表曲から、スライ&ファリミーストーンやプリンス!(さて、どの曲でしょう。プリンスの曲はハイライトなので明日行く人のために伏せておきます)の曲まで。7人のバンド、8人のヴォーカル、兼任ひとりという贅沢な布陣で、黒人音楽に詳しい人はもちろん、あまり知らない人も楽しめるステージ。 特筆すべきは、(ほぼ)メインヴォーカルのジェームシア・ベネット。ほぼ、と書いたのは曲によってリードを取る人が変わるから。ジェームシアは、アン・ネスビーさんの娘さんなんですね。アン・ネスビーはサウンズ・オブ・ブラックネスの元ヴォーカリストにして、ソングライターとしても有名。グラディス・ナイトやパティ・ラベルへ曲を書いています。それから、ビヨンセが出演したゴスペルを題材にした映画「ファイティング・テンプテーションズ」の原案者でもあります。 ジェームシアさんに話を戻すと、とにかくその迫力ヴォイスがすごい。ほかのヴォーカリストとの掛け合いもすばらしいので、明日、行ける人はぜひ。 それはちょっと難しいかな、という人は「ファイティング・テンプテーションズ」を週末に観るのもいいかな、と思います。 もう15年も前の作品なんですねー。ビヨンセ若い。  ... Read More

朝、メイクのノリが良くなる5曲

1/15、1/22, 1/29分、JFN「 Simple Style〜オヒルノオト」のゲストコーナーの選曲を担当しています。OLのリスナーさんが多いとかで、月曜日のお昼だし、気分が上がるような曲を中心に選んだので、1/15分をMVと一緒に紹介しましょう。 お題は(って自分で考えたのだけど)「朝、メイクのノリが良くなる5曲」。音楽を聴きながら準備をする人は多いと思います。1日を乗り切れるように、なるべく歌詞とメロディーがポジティヴなものを聴いた方がいいですよね。 1.Miss Independent / Ne-Yo 1曲目は直球。自活できる女性バンザイ!がコンセプトのNe-Yoの代表曲ですね。女優のガブリエル・ユニオンやローレン・ロンドン、このヴィデオのあと、ニーヨと蟹江が参加した“Knock You Down”をヒットさせるケリ・ヒルソン、1秒だけしか映らないのにイケメン度で圧勝する ・ソングスが出演。 はじめは、“Knock You Down”やデスチャの曲を並べて、最後は文字通り独立したカミラちゃんで締めるリストも考えたのですが、それじゃただの「インディペンデント」大喜利だと気づいてやめました。 ローレン・ロンドンは本当に可愛いかったのに、リル・ウェインのベイビーズ・マザーになったあたりから女優業をお休みしていて、いま何をしているのかなーと思って調べたらラッパーのニプシー・ハッスルとつき合っているみたいです。全身タトゥーな感じの人が好きなのね。ブレなくて立派。かな。 2. Love On Top / Beyoncev このときのビヨンセは幸せに満ち溢れていて、とってもかわいい。朝のメイク時間の気分を上げること間違いなしのナンバーでしょう。リハーサルのときのメイクくらいならいいけど、スーツ姿のときはメイクが濃すぎてちょっと怖いですね。 MTVアワードで、この曲を歌いながらお腹を撫でて妊娠を発表したときも、素敵でした。 3. Kiss Me Quick / Nathan Sykes 1Dとの人気争いに負けてしまったザ・ウォンテッドからソロ・デビューしたネイサン。抜群の歌唱力で歌い上げるロマンティックな曲で、聴いているといい女になれそうな気がして、お気に入りです。 私、いわゆる「ブルーアイド・ソウル」(白人のシンガーが歌うソウル)。この言い回しもPCに引っかかるようになるのかな。イギリス人らしく、小柄なのに完璧にスーツを着こなしていて、かっこいいです。あ。アリアナ・グランデの元彼ですね。本気を出せば、ポスト・ジャスティン˜・ティンバーレイクも夢じゃない実力があるんですけどねー、周りのスタッフと曲に恵まれますよう、極東で祈っています。 4. 美女と野獣 / Ariana Grande & John Legend 実写化が話題になった「美女と野獣」のテーマ・ソングをアリアナとジョン・レジェンドが歌い直しています。ストレート・ヘアーのアリちゃんが綺麗。声の相性はとてもいいのですがヴィデオを見る限り、ジョンさんとアリさんはあんまり仲良くなさそうに見えるのは私だけでしょうか。 5. Wild Thoughts feat.Rihanna & Bryson Tiller / DJ Khaled ラテン調のヒット曲が多かった2017年。中でもリアーナの歌声がセクシーなこの曲はリップを塗って仕上げる時におすすめです。

もう一人のブライソン・ティラーくんはTrap Soulといういかにもイマドキなサブジャンルを牽引している注目株。2018年はR&Bに異変がいろいろ起きると思います。... Read More

フェイス・エヴァンスについて知っておきたい5つのこと。

先週の水曜日。エリカ・バドゥの魔術にかかってきました。そして、次が90年代を彩ったもう一人のR&Bディーヴァ(←あえて)のフェイス・エヴァンスの登場です。って、とっくに日本に着いているし! 遅! 今世紀に入っても『Faithfully』や『The First Lady』など素敵なアルバムを出しているので、90年代だけでくくっては失礼ですが、やはり当時の印象はとても強いです。「バッドボーイのファースト・レイディー」という触れ込みが鮮烈で、最近の90’sリヴァイバル・ブームのフェス系コンサートでもよく紅一点で登場しています。 フェイス・エヴァンスについて知っておきたい5つのこと、行ってみましょう。 その1。95年のデビュー作『Faith』を出したのとほぼ同時に「出会って8日目」でノトーリアス・BIGもといビギーと結婚。ヒップホップ激戦区だったブルックリンからガーンと出てきていきなりトップまでぶち上がったビギーが相手だったから、もう大騒ぎ。ジェイ・Zとビヨンセが出てくるまでは、ヒップホップとR&Bのビッグ・カップルといえば、この二人でした。二人で毛皮を着てキャデラックに乗っているVibeの表紙は、伝説でしょう(下の写真では毛皮が写っていないヴァージョン。見開き2ページ展開)。 その2。ニュージャージー州ニューアークの出身。お父さんが白人ですが、全く関わりがないそうで、「育った環境から行って、私は100%黒人」とは本人の弁。ホィットニー・ヒューストンやローリン・ヒルも近所の出身ですね。これだけ歌える人が出てくるのは、教会の聖歌隊(クワイヤー)のレベルが高いことが関係あるように思います。 その3。22歳と21歳という若いカップルだった上、売れっ子同士だったので、結婚生活はすぐにすれ違いになりました。「真っ黒で、めちゃ醜い(black and ugly as ever)」「One More Chance」で自虐的なラインを披露したビギーですが、実はすっごいモテ男。リル・キムやチャーリー・バルティモアら、「ビギーの彼女」を売りにして有名になったフィメイル・ラッパーが続々と出てきました。「One More Chance」のヴィデオでベッドに横たわっていたフェイスも、たまらなかったはず。でも、彼の子供を産んだのは彼女だけですし、やはり運命の人だったのでしょう。長男はお父さんにそっくりで、映画『ノトーリアス』でビギーの幼少期を演じています。 その4。彼の死後、レコード会社のエグゼクティブ、トッド・ラッソウと再婚。さらに2人に息子をもうけています。パフ・ダディから離れた後も、優秀な男性がそばにいたため、いい作品を作り続けられたのでしょう。その人とは2011年に離婚していますが、周りの意見をきちんと聞けるタイプのシンガーなのでは、と思っています。それはそれで、強みですよね。R&B界は気が強い女性ばかりだから、希少ですらあるかも。 その5。悲恋や失恋の曲も多い人ですが、「いい女」モードの曲が特にいいです。「Soon As I Get to Home」の歌詞とか<プロ彼女>を超える<スーパープロ彼女>というか、ファム・ファタールでありつつ、支える女でもあるという。切なく、愛らしい声質がピッタリのどストレートな「I Love You」もここぞ、という場面でかけたい曲です。   正直なところ、私は最盛期のバッドボーイはあまり好きではなかったのです。Hot 97とか、ヘヴィロテが過ぎて洗脳商法かーいって思っていました。ビギーの追悼曲「I’ll Be Missing You」もあざとい気がしたなぁ。でも、フェイスは別。ディープな思い入れがあります。今年出た、ビギーとヴァーチャル共演アルバムもなかなか強力ですよ。それこそ、すっごい90’sマナーですが。 明後日のSoul Campと、来週のビルボードライヴ東京の情報ページのリンクを貼っておきます。アゲイン、遅すぎ。... Read More

エリカ・バドゥ「Worldwide Underground」ライナーノーツ抜粋

ライナーノーツの抜粋、Pt.2。 ライナーノーツだけれど、2曲しか聴かないまま締め切りを迎えたため(音源流出を怖れて、そういう事態になることはしょっちゅうでした)、アポロ・シアターのライヴレポートです。 デビュー前のYMCAの地下シアター(クラブ規模)や2007年頃にラジオ・シティでも観ていますが、彼女のパフォーマンスは圧倒的です。 では、どうぞ。 「5月17日、エリカは久しぶりのヘッドライナー公演をアポロ・シアターで行った。同じくテキサス州出身で、友人でもあるンダゥンビがオープニング・アクトを務めたこのコンサートは、“Love of My Life(An Ode To Hiphop)”でグラミー賞のベストR&B・ソングを受賞したばかりのエリカ・バドゥが次の新機軸を示すものとして注目され、ニューヨークでかなり話題になった。 アポロ・シアターは言うまでもなく、ソウル・ミュージックの殿堂として名高い。ビリー・ホリデーはもちろん、サム・クックやジェームス・ブラウンの写真が入り口から会場内の通路まで飾ってある。それら大先輩達が築いた伝統を受け継ぎ、育てながら、アーティストとして揺るぎのない地位とスタイルを築きつつあるエリカが、次のステップを披露する場としてアポロのステージを選んだのは、ただの偶然にしては出来すぎた話に思える。今でもこの歴史あるシアターは地元ハーレムになくてはならないヒップなスポットであり、水曜日の<アマチュア・ナイト>で広く知られる通り、観客もウルサ型だ。大体、働いている人達からして素敵。チケットを取りに行った時の、髪をキツく巻いた窓口のお姉さんの台詞。「ちょっと待っててね、スイートハート。あら、どうしてこんないい席が残っているのかしら。あなたに回してあげる、ラッキーガールね」。入手したチケットは、左脇に近いものの、前から3列目。チケットを取る段階から大いに盛り上がり、当夜、席についた時はbmrでの取材「仕事」であるのに拘わらず、気持ちがドキドキして華やいだ。 そして、大きなアフロのウィッグをつけたエリカが登場。白っぽいシンプルな衣装に身を包み、フルートやウッド・ベース、アフリカン・ドラムまで擁したフル・バンドを従え、いきなり新曲をぶちかます。これが、3枚目のアルバムからのファースト・シングルを予定されている“Danger”だった。エリカ・バドゥのコンサートは、耳になじんだ曲の演奏を楽しむ、などという生易しい体験ではない。果敢に新しい局面を切り拓こうとする前衛的なアーティスト、エリカの音楽的な試みに喰らいつくように聴き入り、実験の一部として参加することが要求されるのだ。ヒット曲の数々も斬新なアレンジが施され、バックコーラスやダンサーの配置だって常識破り。すべてを取り仕切るエリカの歌声の強さが、会場中をボディ・ブローのように打ちのめしていく。それが、たまらなく気持ちいいのである。音楽がもたらす高揚感、それを共有することでさらに高いヴァイブが生まれ、その渦に身を任すことのエクスタシーを改めて教えられたステージだった」 (左が『Worldwide Underground』。『Mama’s Gun』が2枚あるのは、再プレスがかかった時に、曲解説を書き足したからです。CDが大事だった時代ですね。担当のS田さんの仕事が丁寧だったのも大きいかな) ユニバーサル・レコーズのエリカさんページです。 ビルボードさんの来日情報のページです。 楽しみすぎて、遠足前の子どもみたいになっています。... Read More

エリカ・バドゥ「Mama’s Gun」ライナーノーツ抜粋

明日からエリカ・バドゥが来日するタイミングで、これをアップします。 2000年のアルバム『Mama’s Gun』のライナーの一部です。ライナーノーツは買い取りで(=あちらの商品)なので、レコード会社さんに許可をいただきました。 内容は、17年前に、私がライナーを書くために、エリカのストーカー(?)をした話。音が聞けないまま締め切りが迫っている中、ネリーの取材で訪れたエレクトリック・レディーのスタジオで、よりによって、彼女が(まだ!)レコーディングしているところに出くわしたという。そして、それを階段に座って一瞬だけ、歌声を聴いたという。必死でした。 もう日本に着いたのかな。楽しみだー。 「エリカ・バドゥは相当の完ぺき主義者である。発売日が迫った状況の中、スタジオに籠っているのもそれ故、ファースト・アルバム『Baduizm』から4年も経っているのもそれ故、だ。昨年末にジャマイカで行われたボブ・マーリーのトリビュート・コンサートでのリハーサルで誰よりも熱心だったのも彼女だ。だが、彼女は完ぺきを目指すばかりに周りを鑑みないような唯我独尊タイプではないと思う。その証拠に、スタジオの廊下ですれ違った際、レコーディング風景を収めるためか、カメラが回っていたのにも拘らず、こちらを見て小さく「ハーイ」とほほ笑みながら声をかけてくれたのだ。水色のニットのロング・コートに、オレンジ色がかったドレッドをゆるく三つ編みしたエリカはとても華奢、とても可憐、そして、何だかノンキだったのである。誤解しないで欲しい。発売日云々の時間的な要因だけでなく、文字通り「世界中」がどんな新譜になるか固唾を飲んでいる渦中で、並々ならぬプレッシャーがかかっているのは間違いない。だが、スタジオの中のエリカはスターである前にいちシンガーであり、洩れ聞こえた歌入れの印象では(私はこっそりと近くの階段に座っていた。修学旅行以来だ)、実に伸び伸びと声を張り上げ、純粋に音楽を楽しんでいるように思えた」 ユニバーサル・ミュージックのエリカ・バドゥのページです。 来日情報もバッチリ載っているので、参考にしてください。... Read More

エリック・ベネイが、いつの間にか理想のおじブラになっていました。

昨夜、ひょい、とエリック・ベネイを観てきました。14年のブライアン・マクナイトとのツアーを見損なっていたので、とってもうれしかった。 東京のブルーノートで3日、コットン・クラブで1日、ブルーノートの名古屋でも1日と計5日間10ショウ。ヒット曲もあるし、何度もグラミー賞にノミネートされているし、たしかに大物。それでも、5日間はすごい。日本でも愛されているのだなぁ、と認識を新たにしました。 ニューヨークで見たのは、10年以上前。高い歌唱力を誇るシンガーですが、さらにパワーアップしていてびっくり。美貌に渋みも加わって、理想的な年の重ね方です(これで50歳って!)。理想のおじブラになっていました。 あ。「おじブラ」は「おじさんブラザー」の略で、ディスではありません。国際結婚をした友だちとの会話に頻出する用語。もちろん、親しみと敬意を込めて使っています。では、エリック・ベネイの「素敵なおじブラ・ポイント」を解説してみましょう。 1. 以前より声が出ている! 伸びやかなファルセットが素晴らしかったです。体もきちんと鍛えていて、隙がないし(お腹は出てない)。 2.ブレないファッションと現役感 Tシャツとジーンズに、ハットとサングラス、スカーフの小物3点セット(ちなみに、バンドも3ピースでした)が似合っていました。うん、まだスーツでは歌って欲しくないな。セットリストには、セルフタイトルの最新作や、一つ前の『Lost In Time』からヒットした「Sometimes I Cry」も歌ってくれて、バランスが良かったです。カヴァー曲は定番の「Feel Like Makin’ Love」をバッチリ歌ってくれましたが、個人的にTOTO「Africa」を聞きたかったなー。代表曲の「Georgy Porgy」もTOTOの曲ですよね。 3.酸いも甘いも嚙み分けた余裕 バンドのメンバーを紹介するとき。ステージから客席に手を差し出すとき。いちいち優雅で、余裕がにじみ出ていました。才色兼備のエリックさんですが、私はディアンジェロ、マクスウェルら天才肌組とデビューが近かったせいで、割を食った人だとも思っています。ネオクラシック・ソウル・ブームの先発隊でもあったけれど、90年代後半のR&Bシーンはとにかく激戦だったため、少しエキセントリックなところがないと目立てなかった。エリックさんは、佇まいも曲もお行儀が良すぎた気がします。でも、そのおかげで周りとあつれきを起こすこともなく、コンスタントに良質のアルバムを出し続けて、今があります。これって、すごいこと。 4. 荒波をくぐり抜けて、今が最高。 「あつれきを起こさず」というのは、あくまでほかのアーティストとの比較で、彼自身も荒波をくぐり抜けています。デビュー前に最初の奥様が亡くなって、長女を一人で育てていた話は有名。00年代前半は、ビヨンセ以前に「もっとも美しい黒人女性」の肩書きを欲しいままにしていたハル・ベリーが奥方でした。彼女がアフリカン・アメリカンとして初めて主演女優賞を獲った際に、レッドカーペットで隣に立っていたこともあり、離婚の際はだいぶニュースになりました。 で。昨夜のハイライト。「たくさんの偉大なタレントが逝ってしまって寂しい‥モーリス・ホワイト、ナタリー・コール、(デイヴィッド・)ボウイー、ジョージ・マイケル。それから、僕らに多大な影響を与えて、すべての人の人生を豊かにしたあの人‥」と言ってから、「How Come U Dont’ Call Me Anymore」を歌ったんです、完璧に。私も大好きな曲。そのときは「プリンス亡き今、これがセカンド・ベストだなぁ」と鳥肌モノで聞いていたのですが、帰り途、「ちょっと待てよ」となりました。 シャンボールとアマレットを使ったスペシャル・カクテルでポワンとしてすぐ出てこなかったのですが、エリック・ベネイの今の奥さん、マヌエラさんってプリンスの2番目の奥さんでもあるんですよね。エリックがハルさんといた時期に、彼女はプリンスと結婚していました。 つまり、エリックさんは、奥さんの元旦那の曲を、歌い上げたわけです。 プリンスとマヌエラさんは円満な離婚だったらしいので、それもあるかと思いますが、なんかこう、器が大きいですよねぇ。やっぱり、おじブラの鑑だわ。 こちらも代表曲。昨夜は「この曲を結婚式でかけました」というアメリカ人のカップルも来ていて、素敵でした。一人でタミアのパートも歌っていましたよ。懐かしい名曲。
おっと。途中で切れてるけど、公式なので。
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クリス・ブラウンxトレイ・ソングス『Between The Sheets Tour』

冬来りなば 春遠からじ 好きなことわざです。でも、この好きなことわざを持ってしても、ここ1、2週間の寒さは身に染みるものがありまして。「寒い」とか、「疲れた」といった、口にしても状況が変わらない言葉も、なるべく言わないように心がけているのですが、室内にいても窓際に行くとマイナス13度の冷気が入って来る今晩、ちょっと言っちゃってもいいですか……。 さぶさぶさぶさぶ。寒—い!!! …気が済みました。 さて、先週の月曜日、お騒がせ男のクリス・ブラウンとトレイ・ソングス『Between The Sheets Tour』を見て来ました。元々、ちょうどクリスxタイガの『ファン・オブ・ア・ファン:ジ・アルバム』のライナーの締め切り前に予定されていたのに、前回書いたように、クリスが裁判所から「あかん」と言われたせいで間に合わないタイミングになってしまい。ライナーノーツに反映できなかったのは残念ですが、お仕事ではなくなったため、ビールを片手に楽しめたので、良かったです。 この日、オープニングのタイガがどうもキレが悪い、と思ったら、交際中のカイリー・カーダシアン(17才)が妊娠したらしい、というゴシップが駆け巡ったのが理由らしい。お姉ちゃんのキムはカニエ・ウエストのお嫁さんなのもあって、タイガはカニエと急接近中で、次のアルバムは全面的にプロデュースを任せる話になっています。 クリスの復活劇もスゴいですが、蟹江もまたまた音楽シーンの台風の目になっていますねー。なにごともトゥーマッチな蟹江さんは得意でないのですが(音楽は好きです)。 バークレー・センターに話を戻すと、NBAのオールスター・ウィークエンド(チケット、じぇんじぇん取れなかったー)明けの月曜日、お休みだったのもあって完全にソールドアウト。7~8割が女性。そうなんです、メンツを考えると、案外、男性の率が高い。まぁ、カップルで彼女連れがほとんどだったけれど、どうも、彼らもクリスを見に来ている様子で。 このツアーは、トレイとクリスのダブル・ヘッドライナー。まず、トレイとクリスがそれぞれ歌うパート、1曲ずつ歌うパート(とくにHな曲を歌い合う感じ、ワハハ)、また別々のパート、という構成はメリハリが利いていて、飽きませんでした。最新作『X』もライナーを担当したし、基本、クリス・ブラウン・ウォッチャーとして参上したのですが、ひっさしぶりに見た、トレイ君にもだいぶヤラれて帰って来ました。 だってね、この曲とか、当時よりずーっと上手になっていたんです。 懐かしいでしょー。 いまだに一番好きな曲です。クリスは踊りまくる都合上、どうしてもリップシンキングが多かったけれど、トレイは歌唱力勝負で、ひたすら、生歌。ひたすら、ドR&B。年齢的に、EDMに流れてもおかしくないのに、彼は絶対やらずに、ずっとR&Bの人なんですよね。ブレなくて、カッコいいです。 顔がかわいいので、日本でも女子人気が高かった記憶があります。みんな、聴き続けているのかな。アルバムのインターバルが短いのもあって、私は聴き込んでいない作品もあるので、ちょっと反省しました。よし、またトレイ君のドR&Bをたくさん聴くことにしましょう。 クリスは「もう絶対お前のところには帰んねぇ!」と叫ぶ“X”からスタート。何がビックリしたって、客席の男性陣が一緒にこのフックを叫ぶんですね。浮気性の女性をよくディスって、恋愛のネガティヴな面を歌いがちなクリスには、そういう需要があったか、と感心しました。アーティストにとって「共感」、「代弁」が大事なファクターではあるので、それが男性人気の理由かと納得したのですが、いまの彼女が隣にいるのに、きっと過去の誰かを想いながら、クリスと「お前なんか要らねぇ!」と嬉しそうに合唱する20代男性たち、けっこう闇を抱えていますね。それから、クリスがソロで踊るたびに、客席が大盛り上がりになるのも新鮮でした。実は、並々ならぬ歌唱力の持ち主なので、もっと歌い込んでほしい気もしましたが。 この日はゲストも豪華。トレイのパートでファボラス、ニーヨ、タイ・ダラー・サイン、フェティ・ワップ(この人、要注目です)が出演、自分の曲を歌うサービスぶり。クリスが「今日は、兄貴が来ているんだ!」と叫んだときは「アッシャーかしら!」とめっちゃアガッたのですが、出て来たのは50セントとG・ユニットのみなさん。ムー。いや、50を嬉しいですけどね、ええ。こちらのサイトで動画が見られるのでリンクを張っておきます。 ハイライトは、クリスとトレイの“ Songs on 12 Play”。R・ケリー賛歌。今年のBETアワードで3人で歌うだろう、と予告しておきますね。トレイが2回目の自分のパートを終えてステージを立ち去る前に、鉄棒を使って懸垂をし、鍛え上げた背中を強調したのがちょっと面白かったです。トレイは、一度しか取材していないけれど、ちょっとお茶目というか、おバカなことを言ったりやったりする人です。 最後は、タイガとクリスの“Ayo”と“Royal”で大合唱大会。 やっぱり、フックが「お前が必要だとか、思うなよ」なんですねぇ。ツンデレ(最近、覚えた言葉です)でしょうか。90年代のバッド・ボーイみたいな撮り方も面白い。今年も、90’sブームが続くのかな。 リアーナとの事件のあとはどうなるかと思いましたが、仲間とバークレーをパンパンにできるところまで這い上がって来たクリス、スゴいです。逆境を吹き飛ばせる人を見守るのが、私の密かな趣味なので、今後もCBウォッチャー、頑張りますね。 って! 早く春にならないかなぁ!!... Read More