Right place, right time, Chronixx

私からレゲエを選んだけれど、レゲエも私を選んだよね

と、思うことが多々、ある。僭越で、生意気だけれども。以前から「超現場主義ライター」を名乗っている。

Right place, right time(正しいイディオムは、in the right place at the right time、です)は、本当に大事。

その昔、大学生だった頃に学んだこと。私は、西新宿のレコ屋さんオレンジ・ストリートの常連で、Club Skaや下北沢のZooのスカ/ロックステディの日もよく行っていて、スカパラとスカ・フレームスをよく見に行っていて、レコ屋/クラブ/ライヴの3カ所はだいたい同じような人たちが集まっていたから、そのうちみんなに「レコードが好きな、変わった女子大生の美菜子ちゃん」って覚えてもらった。世の中は、女子大生ブーム。 学校にとんねるずの番組に出ている友達がいたような時代。それなのに古着を着て「スカ好き」をやっているのは珍しかったから、学校外ではいろんな人に可愛がってもらった。愛想もよくなかったし、好きなことばっかり言ってたのに、「L.K.J.好きなの? わかるの? えらいねー」みたいな 。

そうやって東京のシーンを最前列で見ていたら熱心さだけは伝わって、「レゲエ・マガジンで働きたい」と、ひと言、言ったら、オレンジ・ストリートの長井さんとユミさんが口を聞いてくれて、就職活動のスーツを一度も着ないで(買いもしないで)、私の初仕事は決まったのでした。…って昔話をするつもりじゃなかったんだけれど。

昨日の夜、Miss Lily’s Variety ShopでChronixxを見ながら、ぼんやりそんなことを思い出していた。一昨年あたりから名前が出始め、昨年末にStingとRebel Saluteでボスッたラスタ系シンガー。まだ20才。あの頃の私と、ほぼ同じ年。

「Stingのポスターにはさ、“世界最高のレゲエ・ショウ”って書いてあるんだよ。それなのに、最近出て来たアーティストが大きく取り上げられて、ジョン・ホルトみたいな本物の功績者が一番下に小さく載っている。おかしいよね? そんなの、最高じゃないよね?」

「誰が一番いい音楽をやったか、じゃなくて、誰を殴ったか、が話題になるのもおかしいよね?」

「インタヴューするなら、殴られたり浮気されたりした話じゃなくて、音楽のことを聞いて欲しい」

「新人なのにバンドでツアーに出るのは常識なしだって言われた。でも、それが俺たちのスタイルだから、辛抱強く交渉して、初のヨーロッパ・ツアーはちゃんとバンドで回る」

「マーケティングとかどうでもいいんだよ。時代に合わなかったり、ずっと先を行ってたりする曲が出来たら、焦らないで、足を伸ばして時代が追いつくまで寝かせていればいい」

「スタジオ・1も好きだし、90年代頭のダンスホールがほかの音楽と混ざったときの音も大好きだ。スーパー・キャットとか、カティ・ランクスとか。俺、ボビー・コンダースのテープを聞いて育ったんだ」

「最初にチャンスをくれたのはリロイ・シブルス。彼のヴィンテージなベースの音が大好きだ。ついこの間まで、バックコーラスをやっていたんだけど、ステージでは俺より若いくらいだよ」

それから、

「Music is pure. (音楽は純粋なんだ)」

と、くり返し言っていた。

ピュアなのは、あなた。そう、何度も思った。甘さと憂いが同居する歌声。歌もシングジェイもイケる。インタヴュー後にマックスがスタジオ・1の定番リディムを5つくらいかけ、20分くらいがっつりフリースタイルで着いて行っていた。

大器だ。

今朝から、もらったばかりの8曲入りのCDを聴いている。音量も音圧もバラバラだけれど、何度も聴いている。03年、人気が出る寸前でもらったリッチー・スパイスのプロモ盤を思い出した。あれも、よく聴いた。ラスタ系アーティストは、聴き手の年齢層やライフスタイルを選ばないから、ジャマイカでは人気が出やすい。その代わり、大きくボスッたあと、鳴かず飛ばずになるケースもある。タービュランス。ウォリアー・キング。私はまだ、彼らの復活を待っている。

Right place, right time

昨日、Chronixxに会えて、生の歌声を聴けて、ほんとうによかった。ニューヨークどころか、アメリカに来るのも初めてだそうだ。iPhoneで写真を撮ろうとしたら、ちゃんとポーズを撮ってくれた。華もある。最近、外見に恵まれているのに

本人のオーラがやたら地味なアーティストが多かったから(名前は出さないけれど)、 安心した。

「音楽はみんなでシェアーするべきなんだよ。誰かが俺のCDを買ったら、どんどん回して欲しい」とも 。ラスタ談義ではなく、いまどきは曲でお金を作るのではなく、ただでも聴いてもらってライヴに呼んでもらうのが一番、というビジネスモデルを理解しているのかも知れない。

このプロモCDもシェアーしたいなぁ……。近々、インタヴューする予定なので、本人がOKだったら24時間限定でフリーDLやろうかな。

実は、ディプロが作ったフリーのMIX CDもネット上に存在するのだけれど、「あれは彼の作品であって、俺がやったら違う形になる」と言っていたので、あえてリンクは張りません。気になる人は自分で探してねー。面白いよ。
ということで、Chronixx君は2013年の台風の目になる、と予言しておいて。

帰り道、「あ、またレゲエが選んでくれた」と思うような出来事があったのだけれど、それは、また後日。

“Right place, right time, Chronixx” への1件の返信

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    いつも読ませてもらってます!
    コアな内容にNuff RESPECTを感じながら!
    Chronixx最高です!

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