エリック・ベネイが、いつの間にか理想のおじブラになっていました。

昨夜、ひょい、とエリック・ベネイを観てきました。14年のブライアン・マクナイトとのツアーを見損なっていたので、とってもうれしかった。

東京のブルーノートで3日、コットン・クラブで1日、ブルーノートの名古屋でも1日と計5日間10ショウ。ヒット曲もあるし、何度もグラミー賞にノミネートされているし、たしかに大物。それでも、5日間はすごい。日本でも愛されているのだなぁ、と認識を新たにしました。

ニューヨークで見たのは、10年以上前。高い歌唱力を誇るシンガーですが、さらにパワーアップしていてびっくり。美貌に渋みも加わって、理想的な年の重ね方です(これで50歳って!)。理想のおじブラになっていました。

あ。「おじブラ」は「おじさんブラザー」の略で、ディスではありません。国際結婚をした友だちとの会話に頻出する用語。もちろん、親しみと敬意を込めて使っています。では、エリック・ベネイの「素敵なおじブラ・ポイント」を解説してみましょう。

1. 以前より声が出ている!

伸びやかなファルセットが素晴らしかったです。体もきちんと鍛えていて、隙がないし(お腹は出てない)。

2.ブレないファッションと現役感

Tシャツとジーンズに、ハットとサングラス、スカーフの小物3点セット(ちなみに、バンドも3ピースでした)が似合っていました。うん、まだスーツでは歌って欲しくないな。セットリストには、セルフタイトルの最新作や、一つ前の『Lost In Time』からヒットした「Sometimes I Cry」も歌ってくれて、バランスが良かったです。カヴァー曲は定番の「Feel Like Makin’ Love」をバッチリ歌ってくれましたが、個人的にTOTO「Africa」を聞きたかったなー。代表曲の「Georgy Porgy」もTOTOの曲ですよね。

3.酸いも甘いも嚙み分けた余裕

バンドのメンバーを紹介するとき。ステージから客席に手を差し出すとき。いちいち優雅で、余裕がにじみ出ていました。才色兼備のエリックさんですが、私はディアンジェロ、マクスウェルら天才肌組とデビューが近かったせいで、割を食った人だとも思っています。ネオクラシック・ソウル・ブームの先発隊でもあったけれど、90年代後半のR&Bシーンはとにかく激戦だったため、少しエキセントリックなところがないと目立てなかった。エリックさんは、佇まいも曲もお行儀が良すぎた気がします。でも、そのおかげで周りとあつれきを起こすこともなく、コンスタントに良質のアルバムを出し続けて、今があります。これって、すごいこと。

4. 荒波をくぐり抜けて、今が最高。

「あつれきを起こさず」というのは、あくまでほかのアーティストとの比較で、彼自身も荒波をくぐり抜けています。デビュー前に最初の奥様が亡くなって、長女を一人で育てていた話は有名。00年代前半は、ビヨンセ以前に「もっとも美しい黒人女性」の肩書きを欲しいままにしていたハル・ベリーが奥方でした。彼女がアフリカン・アメリカンとして初めて主演女優賞を獲った際に、レッドカーペットで隣に立っていたこともあり、離婚の際はだいぶニュースになりました。

で。昨夜のハイライト。「たくさんの偉大なタレントが逝ってしまって寂しい‥モーリス・ホワイト、ナタリー・コール、(デイヴィッド・)ボウイー、ジョージ・マイケル。それから、僕らに多大な影響を与えて、すべての人の人生を豊かにしたあの人‥」と言ってから、「How Come U Dont’ Call Me Anymore」を歌ったんです、完璧に。私も大好きな曲。そのときは「プリンス亡き今、これがセカンド・ベストだなぁ」と鳥肌モノで聞いていたのですが、帰り途、「ちょっと待てよ」となりました。

シャンボールとアマレットを使ったスペシャル・カクテルでポワンとしてすぐ出てこなかったのですが、エリック・ベネイの今の奥さん、マヌエラさんってプリンスの2番目の奥さんでもあるんですよね。エリックがハルさんといた時期に、彼女はプリンスと結婚していました。

つまり、エリックさんは、奥さんの元旦那の曲を、歌い上げたわけです。

プリンスとマヌエラさんは円満な離婚だったらしいので、それもあるかと思いますが、なんかこう、器が大きいですよねぇ。やっぱり、おじブラの鑑だわ。

こちらも代表曲。昨夜は「この曲を結婚式でかけました」というアメリカ人のカップルも来ていて、素敵でした。一人でタミアのパートも歌っていましたよ。懐かしい名曲。

おっと。途中で切れてるけど、公式なので。

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