I go insane, crazy sometimes/Trying to keep you from losing your mind
Maxwell、『BLACK Summer’s Night』収録の“Fistful of Tears”のフックです。この節が、ここ数年で聴いたなかで、もっとも好きな詞です。もっとも引っかかる、と書いた方が正確かな。
「おかしくなりそうなんだよ、時々、気が狂いそうになる/君が正気を失うのをくい止めようとして」
最初に聴いたとき、鳥肌が立つような思いをしました。恋愛中は誰しもが、少しだけ正気を失っているもの。どうも、このリリックの男女(とは限りませんが)は、どちらかがとても感情的になりやすいか、もしくはお酒かドラッグの中毒か、とにかく不安定で、もう片方がそれを必死に押さえようとしているうちに、自分がおかしくなりそう、と訴えている雰囲気。もう、掌いっぱいの涙を流すしかできないよ、と。
insane, crazy, lose one’s mind、と、たったひとつの文で「狂う」という言葉を言い回しが3回も出てきて、それが尋常ではないムードをさらにかき立てる。マクスウェルという人は、詩人です。この詞がピンと来ない人は、健全だけれど少々退屈な恋愛をするタイプ、何となく分かる人は切なさを伴う恋愛を経験した人、痛いほどよく分かる人は……トラブルだらけの恋愛に自ら突っ込んで行ってしまう人なのではないでしょうか。
ただし。
大きく解釈して、恋愛関係に限らずおかしくなりそう相手が大切な人、大切なものとの関係とも、考えると…。たとえば、「君」を「地球」だとすると…。いまの私の、私たちの気持ちにぴったりなのです。
どんどんおかしなことが起きているのに、署名するか、抗議するか、はたまた、掌いっぱいの涙とともに嘆くか。それしか出来ない。この曲を聴きながら、一緒に狂っていきたくない、正気でありたい、と強く願っています。