カニエ5作目:Teyana Taylor K.T.S.E

カニエ・ウエスト5連作の最後を飾るのは、R&B作品。テヤーナ・テイラー嬢のK.T.S.E(Keep The Same Energy/ティヤーナの方が発音近いですね)これがR&Bジャンキーには堪らない仕上がりで。1日3回服用中。一番好きなNever Would Have Made Itなんて、なんどくり返してもまぁったく飽きない。

ビヨンセ&ジェイ・ZのThe Carters、Everything is Loveより断然、こちらをよく聴いてます。レモネードは名盤、4:44も聴き込んだから、トリオロジーの締めがこれかー、って肩透かし。ベイチェラ(“ビーチェラ”じゃないよー。ビヨンセの短縮系はBeyで“ベイ”だからねー)で感動しすぎて、期待値が上がりすぎたかも(って、新作がこのタイミングで出るとは思っていませんでしたが)。まず、ジガさんの嫁自慢ヴァースがダサすぎる。ビヨンセがラップできるのはわかったけど「私のひひひひひ孫まで大金持ち」とかね、うん、知ってます。ボースティング(ほら吹き)はヒップホップの大切な要素だけど、それが事実ならただの嫌味だと思ってしまう私がひねくれているんでしょうか。夫婦漫才ならぬ夫婦ラップはDrunken in Loveがピークだったような。

一言。

‥‥戻ってこーい、ジガさんーーーー(BK方面に向かって)

by ジェイ・Z教信者。

 

あ、カニエ&テヤーナさんの話でした。

 

まず、テヤーナ・テイラーが誰か、から。カニエのGOOD Music所属で今回の連作一大プロジェクトに抜擢されたシンデレラ・ガール!!

 

‥ではないです。27歳だけど、業界ヴェテラン。10代のときにMY Sweet 16というMTVのリアリティ番組でまず世に出て、それから音楽活動をしながらコリオグラファーをしたり、得意のダンスを生かしてダンス映画に出演したり、モデルをしたり。トリニダード系、ハーレム出身。すんっばらしいスタイルの持ち主(カニエのFADEのビデオ参照)。旦那はNBA選手のイマン・シャンパートで1児の母。ふつーに超超超勝ち組です、ハイ。

 

彼女のことは覚えていないけれど、MY Sweet 16という番組自体は覚えています。金持ちの娘が16歳の誕生日パーティーのためにわがままを言いまくって、大騒ぎする内容。ケーブルテレビ全体がリアリティTVに侵食されてから、アメリカ文化、およびアメリカ社会はおかしな方向に行った、というのが私の持論です。ちなみに、トランプ大統領が一般的な知名度を得たのだって、「お前はクビだっ」と暴れるリアリティTV。カニエとキムさんが仲良しだと知ったのも、Keeping Up Kardashiansで「お友達のカニエ・ウエストさん」という唐突なテロップとともに出てきた時でした。ちなみに、キムさんは前夫との結婚が終わっていないタイミング。まぁ、この話は別の機会に。

 

才能と美貌に恵まれたテヤーナさんは、「絶対有名になってやる」という決意とともに活動を続け、今回、実を結んだわけです。欲しいものは自分で手に入れるGo Getter (ゴーゲッター)タイプ。キムさんと同じなので、カニエさんが人間として好むタイプは一貫しているようです。

 

でもね。このアルバム、仮に、仮にね、「カニエ印」がなくても評判を取ったと思う。時間はかかったかもしれないけど。90年代、ヒップホップを吸収したR&Bが一番、元気だった時代のエッセンスを残しつつ、輪郭がくっきりと2018年という絶妙のバランスを実現した会心作。

 

では、サクッと曲紹介。その前に、カニエネタのブログ、たくさんの方に読んでもらえてうれしいです、ありがとうございます。それで、今回わかったことがあって。海外の著名メディアのレビューも、微妙に外すというか、「それちょっと違うんじゃ?」という箇所が必ず混ざっている。私自身を含めて、ライターひとりの見識ではカヴァーできないほど今回のプロジェクトは先を行っている、ということだと思います。

 

タイトル「K.T.S.E」はキープ・ザ・セイム・エナジーの略で、Yeでカニエがラップしていたヴァースです。

 

同じエネルギーをキープしろ=ブレるな。

 

了解です。

 

No Manners

韻を踏みながらは「(クラブ)コパカバーナに行って暴れるの。私、遠慮ないから」とラップに近い歌声でドスの効いた挨拶を入れています。テヤーナさん、アネさん系?

 

Gonna Love Me

大胆にデルフォニックスのFor The Love I Gave to Youを使った、一転して爽やかな曲。フォーク調の転調が入るあたり、インディア・アリーをちょっと思い出しました。インディアさんは来日してほしいアーティスト、トップ5に入ります。こういう抑え目の歌を聞かせるあたり、テヤーナさんも、かなりのヴォーカリスト。男女関係を続けていく難しさがテーマ。「自信をなくすようなことをしてしまったのなら、ごめんなさい」というラインがリアルです。旦那さんに宛てた曲かな?

 

Issues/Hold On

ロマンティックなトラックにピコピコ音を持ってきてかなり変態なのに、歌そのものは正統派。Hold on hold on don’t let me go(私を離さないで)というフックの歌い方が最高。結婚式の二次会にかけるといいかも。

 

Hurry

カリブ系としてのテヤーナさんの血がたぎっている傑作。これをシングルに持ってくるあたり、カニエ、完全に勝負に出ています。ふだん、レゲエやカリプソを聴いている人の耳にはスッと入るだろうし、それ以外の人は「よくわかんない」曲でしょう。アメリカのヒップホップ・メディアで低い採点をつけているところは多いけれど、私は最高だと思います。レゲエのリミックス出ないかなー。この曲だけ、カニエがラップで入っています。

 

3Way

「へぇ、カニエ組、こういう泣きのR&Bも作れるんだー」と驚いたら、ロドニー・ジャーキンズの名前が。納得。ブランディ&モニカ“The Boy is Mine”ほか、ここ20年の王道R&Bを作ってきた人です。ちなみに、ロドニーさん、めちゃめちゃいい人です。えー、“The Boy is Mine”みたいに女性2人と男性1人というシチュエーションですが、思いっきり下ネタ。3Pの曲。言葉がわからない方がいいタイプの曲。トーントトトーン♩で売れたシスコの歌い回しを投入していますね。絶対に結婚式でかけちゃいけない曲です。

 

Rose In Harlem

「ハーレム育ちだから」と、ハーレム道を説くハーコー曲。こそこそしない、ロイヤリティが大事、名指しで責めたりしない。テヤーナさん、気風がいいです。絶対、敵に回したくないタイプの女性です、ええ。

 

Never Would Have Made It

私のツボすぎて、この曲を聴けばマッサージもヨガも要らないと思うほど、全身がほぐれていきます。今年のベストソングかも、と思ったけど、まだ6月ですね。鳥の鳴き声からのいきなりの歌い出し、ピアノを伴奏にヴァースを歌って、いっきにゴスペルのクワイヤーを投入。ゴスペル・シンガー、マーヴィン・サップの同名曲を敷いて神様と大事な人への愛と感謝を歌っています。最後に幼いお嬢さんの声でしめる。チーム・カニエ、丁寧な仕事ぶり。今回のプロジェクトは奇襲をかけた形になっているけど、このアルバムに関しては手間暇かけている印象です。すごい完成度。これは、結婚式でかけたらとても素敵だと思います。

WTP

Work this pussyって。挑発的な締めです。ナレーションを務めるのは兼ドラーグ・クィーンという異色のラッパー、ミッキ・ブランコ(彼のWavvyのヴィデオは必見)。Totalの曲を思い出すイントロから(どれか出てこないから、わかる人は教えてください)、レゲエっぽい節回しとハウス調のトラックを合わせて新鮮です。アウトロは、ハーレムでヴォーギングをするセクシャル・マイノリティーを描いたドキュメンタリー「パリは眠らない(Paris is Burning)」から引っ張っています。最後までハーレムにこだわるテヤーナさん、「誰もが知っているくらい有名になりたいの」という本音でまとめています。

 

あー、これで連作のすべてが終わってしまいました。毎週末、楽しみだったなー

 

NasのNasirは大切すぎて、またゆっくり書きます。一つだけ。「カニエのおかげでNasが復活」という捉え方も多いようですが、違いますよー。Nasはずーっと第一線。90年代のクラシックしか知られていない大御所が多い中、00年代のアルバムからもたくさんヒットあるし、2010年のダミアン・マーリーとDistant Relativesも2012年のLife is Goodも名作、ヒットも出しています。Distant Relativesはライナーを書いたけど、もう国内盤はないのかな。

 

話が逸れた。最後にテヤーナさんのゴシップをひとつ。彼女、出産後に減胸手術を受けています。胸が大きくなりすぎて生活に支障を来たすので、サイズダウンする人って、けっこういるんです。フィメイル・ラッパーとして先陣を切ったあと、女優に転身したクィーン・ラティーファもそう。

 

テヤーナさんが主演した映画のトレイラーを見つけたので貼っておきますね。今年、DVDでリリースされた映画ですが、撮影はずっと前のような気がします。もう一人の主演がテレビドラマ、エンパイアのハキームなので、お蔵入りになりそうだったのを引っ張りだしてきたような。

 

テヤーナさん、ダンスすごーい。観たいです。

テヤーナさんの映像、画像を見ると、腹筋をがんばりたくなります。割れてるなんてもんじゃない。