Kiprich

『Outta Road』 / Kiprich(VP1720)

Outta Road

昨年の暮れに出て以来、ヘヴィローテーションの一枚。エレファント・マンのハイプマン(これはヒップホップ用語ですが。隣で盛り上げる役割の人です)のようなこともしていた、キッポウことキップリッチのデビュー作です。これ、素晴らしいんです。流行のトラックとオリジナル曲の比率、歌、DJとの自在に行き来できる実力、狙い過ぎない程度に工夫して通して聴いても飽きない構成。最近出た若手のアルバムの中では群を抜いてバランスが良い。個人的には、アイドル系の童顔なのに、「一体何才?」という古ーい節回しを軽くこなし、イケイケのトラックでも懐かしさを感じさせる点がいたく気に入りました。本人は何回会っても、業界パーティーもしくはバックステージで関係者しかいないのが分かっていても、「ジャパニ!」とわざわざ叫び、動物園のサルにでもなった気にしてくれる典型ジャメーカンだったりします。別にいいけど、それって赤い色を見て「赤!」って言っているようなものでしょうに。

アルバムに話を戻すと、この完成度の高さはヴェテラン・プロデューサー、ロバート・リヴィングストンの手腕の賜物でしょう。故テナー・ソウ、フランキー・ポール、スーパー・キャットを発掘して育てた、と書いたらその凄さが分かるでしょうか。今は、シャギーにぴったり寄り添ってBig Yardを回しつつ、このキップリッチやボイスメールのアルバムに関わっています。それにしても、キップリッチの魅力が日本で今ひとつ伝わらないのが歯がゆい。ジャマイカでブレイク・スルーとなった“Telephone Ting”の成功が、ひとえにリリックの面白さにポイントがあったからかも知れません。曲自体は懐かしいというより古くさいタイプですが、「携帯電話のおかげで僕の人生は散々!」と嘆く浮気男の話で、ジャマイカ全土の男性から共感(もしくは羨望)を集めて大ヒット。

アンサー・ソングを作ったレディー・Gを含め、お姉さん系にウケがいいキッポウは、いろんな意味で若年寄なのです。

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