99年の創刊以来、いわゆる“B系ファッション/カルチャー誌”の走りとして、先頭を突っ走って来たLuireが今出ている号で休刊になるそうです。
原稿を書かせて頂いた身として、一読者として、
「残念すぎる!」
の一言しかありません。Luireは、非常にラディカルな雑誌でした。10年前、「外国人モデル=白人」が当たり前だった出版界で、あえてブラック・カルチャーとファッションを真ん中に持って来て、成功した女性誌は、実はほかにありません。Luire’の成功を見て、スタートした雑誌は続かなかったり、いつの間にかニュ-トラル路線に転向していたり。Woofin’ Girlが近いですが、読者の年齢層がもう少し若いせいか、ブラック・カルチャーのギラギラした面を掬いとるところまで行っていないし、行く必要もないように思います。
ヒップホップ・カルチャーが主流になった90年代から、「若者」を自認する人は、多かれ少なかれヒップホップから派生したファッションに影響を受けたわけで、発信源が肌の茶色い人々であった以上、原点をちゃんと紹介する雑誌が生まれるのは当然でも、必然でもあったはず。ところが、女性が「黒人文化/ファッション好き」となると、いきなり、いろんな言葉が落ちて「黒人好き」という話になり、それが妙に性的な意味を帯びて、色眼鏡で見られる傾向は、2009年現在でも残っているように思います。だって、同じ路線の男性誌は問題ないじゃないですか。
「ブラパン」、「ぶら下がり族」という言葉は、我ながら「ふるーい!」と思いつつ、偏見の源には少なからず関係していると思います。もちろん、Luireの休刊はもっと色々な要素が絡んでの決断でしょうが。目の点けどころだけでなく、読者に「生き方」を提示した点で、雑誌の作りもラディカルでした。
ほかの女性誌にありがちで、Luireになかった視点は;「男性ウケのいい服/態度」の特集でしょう。体型をひたすらカヴァーする後ろ向きな姿勢もありませんでした。黒人っぽい髪型や肌の見せ方は、必ずしも賛成できませんでしたが(NYでその手の日本人女性を見かけると、若干、異様な感じがします)、それでも、オリジナルではありました。パイオニア精神溢れる、と言いますか。
作り手の視点に回ると、なかなか凄かったのが、「広告収入度外視」の企画をやる度胸だったと思います。私はレゲエ特集で組む機会が多かったのですが、夏の人気/定番特集になる前は、好きなことを書かせてもらいつつ、「どこからお金を引っ張ってくるんだろう」と、ちょっと不思議に思っていました。ダンスホール・クィーン・コンテストも、トリニダード&トバゴ・レポートも、自分で書いておきながら、「好評でした!」と編集部からフィード・バックをもらうと、「ホンマかいな」と思ったり。
同じNYコレクションのレポートでも、Luire’は通信社の写真はほとんど使わず、自分たちで撮った写真を使用していました。同じセレブが載っているから、他誌と違いが分からないかもしれないけれど、インターネットから引っ張って来るか、現地まで来るかの差ですから、大きいです。これに関しては編集部の英断+広い意味で私の同僚でもある、桜井智ちゃんの尽力、人徳も大いに関係あったはず。どの国にいても、仕事を円滑に進めるのは、性格を含めたコミュニケーション能力ですから。
一方、性格を含めたコミュニケーション能力に問題があったらしいのが、何を隠そう、私です。私は、レゲエ/ジャマイカ特集となると、いきなりムキになってしまう。これはRM(レゲエ・マガジン)時代に、一般誌の窓口としてやり取りをし、適当にあしらわれてアーティスト名を全部間違えられたり、色物扱いで面白おかしく書かれたりして、「これだったら、取り上げてくれなくて結構!」という思いを何度かしたせいで、どうしても構えてしまうのです。Luireのレゲエ特集は話が来る度に担当の編集者さんが変わってしまい(それも、前任者が辞めてしまい)、☆出元編集長に、「レゲエ/ジャマイカ特集を同じ編集者さんと作ったことがないんですけど」と言ったら、「池城さんが苛めるからじゃないですか」と、半分冗談半分本気で言われて、しばらく気にしていました。でも、2005年に組んだ波田野さんはNYに旅行で来た際に連絡をくれたし…。あんまり気になって、編集部に遊びに行った際に、佐藤さんに聞いてみたことさえあります。「全然、大丈夫です!」と、ラブリーな見た目から考えられないくらいタフな佐藤さんが慰めてくれたのですが、よく考えたら、本人を目の前に「やりづらいです」、「怖いです」とは言わないですよね……。まぁ、いいや。戸田さんもそうだったけど、Luire’で担当してくれた人は、たおやかなタイプの女性が多かったかも。
今、バックナンバーを調べたら、ジャパレゲ特集を含めて、レゲエ率が高いですね。うーん、やっぱり勿体ない。休刊=復刊もあり、なのかな。同じスピリットの似たメディアが出てくることを希望します。あー、エモーショナルになったら、長くなってしまった。作り手、読み手をひっくるめて、Luireに関わった人は、一つのムーヴメントに関わった、と胸を張っていいのではないでしょうか。
なぜか表紙にフルネームを載せてもらって仰天した、想い出のトリニダード&トバゴ・レポート掲載号です。