行くか、行かぬか、それが問題だ〜Sade編

あと1日で6月が終わります。誕生月というのが関係あるのか、いろんな出来事があって、いろんな感慨を持った1ヶ月でした。

仕事では、念願だった本の翻訳が決まり(出版社さんの意向で、まだ書名は伏せておきます)、そのスケジュールを中心に生活が回っています。締め切りが先で、ちょっと余裕を持ってしまっているので、引き締めないといけません。

いろんな感慨、の一つに、シャーデーのツアーがあります。

発表されたときは、絶対に行こうと張り切っていました。10年前のワールド・ツアーではライヴ盤のライナーノーツをを書かせていただき、今まで書いた原稿の中でもお気に入りの一つになっています。今回は地下鉄で20分のところにあるマディソン・スクエア・ガーデンが行程に入っておらず、同じ州内のロング・アイランドにあるナッソー・コロシアムより、隣州のニュージャージーの方が行きやすいので、その2日間をターゲットにしていたのですが…。

チケットを買ってまで行きたい、という人が見つからなかったのです。片道1時間半の場所にひとりで行くのは嫌だなー、と思っているうちにどんどんチケットが売れてしまい、ソールドアウト。幸い、知り合いからチケットを譲ってもらう話になったのに、やっぱり一緒に行く人が見つからない

もう、一人で行くかー、と腹を括ったところで、気分がドーン、と落ちてしまったのです。食欲がない、動作が鈍い、気がついたらベッドの上に転がっている。
何でだろう、どうしたんだろう、と考えて、考え抜いて、気がついたのです。

私は、シャーデーの『Lover’s Rock』と件のライヴ盤を聞くと、じんわりじんわり暗くなって行くのです。この2枚をよく聴いていた、2000から2001年は人生最大のピンチ、生きているより死んじゃった方が楽なんじゃないか、という出来事があり、それを慰めるようにシャーデー・アデュの歌声に耳を傾けていたのです。それで、今でもこの2枚をかけると、その時の辛い気持ちがセットで蘇って来るらしい。

大好きなバンドの、大好きなアルバムなのに。

自分の音楽を聴いて、最初に聴いていた時のことを思い出してくれたら嬉しい。それが、クラシックだから」とは、先月、ジョーの口から出た言葉です。でも、こういう風に、負の感情が出てしまうのはどうなのかなぁ。

「今まで観た中で、もっとも美しいコンサート」

こう、01年のライナーノーツに、私は記しました。10年経って、相当数のコンサートをさらに観た現在でも、その思いは変わりません。フロント・レディーのシャーデー・アデュの美しさ、スチュワート・マシューマンを始めとするほかのメンバーの演奏の正確さ(シャーデーは、ソロのアーティストではなく、グループです。よく誤解されているようなので、念のため)、よけいなギミックを排したストイックなステージは、ほんとうに美しいのです。

もう一度観たい、という気持ちと、もっと負の感情が出てしまったらどうしよう、という危惧と。今週末にもう一度チャンスがあるので、まだ悩んでいます。

ただ。あの時の私は、シャーデーの音楽に救われた面も大きかったのだ、とも理解してきました。それまでも、心身ともに疲れ切っている時は、ロックステディが効くというのを知っていたのですが、もの哀しさをたたえたシャーデーの音楽にも同じか、それ以上の作用があるようです。

今回の震災が、人生最大のピンチ、もしくは辛い出来事になっている人も多いかと思います。どうか、その気持ちをほぐし、慰めてくれる音楽を見つけてられるように、遠地から祈っています。

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