Weekly Recap 5.6-5.14

 今週はきちんと1週間(とちょっと)でRecap (再生)できそうだー。えらいな、自分。今週はレゲエ・ウィークでしたね。5月11日のボブ・マーリーの命日にJ-WaveのSonar Musicに呼んでいただいた2日後に、Spotifyの公式ポッドキャスト『Poplife』のレゲエ特集が公開されました。ラスタファリズムの説明があいかわらず下手だなぁ、との反省がムクムクともたげている最中。このブログでは、SWV対Xscapeのverzuz対決、タリブ・クウェリがまさかの大炎上中、チャートでは『Khaled Khaled』よりロッド・ウェイヴ『SoulFly』推しという話と、と最近のお仕事の宣伝をしますね。

1. まずは、母の日に行われたverzuz.tvから。SWV対Xscape(エクスケイプ)と、R&B最強コーラス・グループ対決。凄まじかったですねぇ。フランク・オーシャン以降の、声を張り上げないタイプのR&Bも好きですが、「教会で鍛えましたから!」な正統派は満腹感がすごい。SWVは、シスターズ・ウィズ・ヴォイセズの略で、NWA=ニガー・ウィズ・アティチュードのもじり。リードを取るココのソプラノ・ヴォイスの透明度を、タージとリリーが濁らせずにしっかり挟んですばらしい。ファースト・アルバム『It’s About Time』は名盤中の名盤。

ストリーミングで聴くと音圧がバラバラで辛いので、CDを持っている人は大事にしましょう。

彼女たちより少し年下のエクスケイプは、ジャーメイン・デュプリが仕掛けたアトランタの4人組で、全員がガンを飛ばしているファースト『Hummn’ Comin at ‘Cha』のアートワークを見たときは、いろんな意味で度肝を抜かれました。TLCの“No Scrub”を作詞したキャンディと、T.I.の奥さん、タイニーはリアリティ番組に出まくりで知名度が高いですが、今回はタミカとラトーチャのスコット姉妹の歌唱力にやられました。最後の曲に大ヒットした「Who Can I Run To 」ではなく、デビュー・アルバムのセカンド・シングル「Understanding 」に選んだのが良かった。「Who Can I Run To 」はジョーンズ・ガールズのカヴァーだし、自分たちとしてはオリジナル曲が大切なのかな。

Understandingの12インチのジャケット。ガン飛ばしてます。

トリヴィアとしては、SWVのココの最初のベイビー・ダディは、シャバズ・パレセズ(元ディガブル・プラネッツ)のバタフライです。ふたりの息子がリル・トレーシーで、故リル・ピープとの「cobain」が有名なラッパー(お母さん似)。ココとキャンディは、それぞれのソロ作を出したときに取材しています。どちらも明るくておもしろい、スウィートな女性。キャンディはリアリティ番組ではクールな面を見せていましたが、それも含めて仕事ができる感じ。美しいハーモニーものが好きで、SWVとエクスケイプは未体験な人はぜひぜひ。

2. つぎは少し残念なニュース。タリブ・クウェリがSNSで大炎上しています。ある女性を執拗に口撃して、そこにフィーメール・ラッパーのノーネームが絡み、そちらにもクウェリがやり返して泥沼。彼は90年代終盤、元モス・デフことヤシーン・ベイと組んだブラック・スターや、Hi-Tekとのリフレクション・エターナルで「コンシャス・ラップ(社会意識高い系ラップ)」ブームを起こした、ヒップホップ界では善玉中の善玉だった人。それなのに。すべてネット上の応酬だし、日本では話題になっていないので、私もこっそり悲しむだけで流そうかなー、と思ったのですが。昨夏、ツィッターのアカウントを凍結されたクウェリに原因があるにしても、以前の功績を無視してその話だけが入ってきたら嫌だな、と。

ロウカス時代の名曲を散々聴いた私はにわかに信じられず、いまの主戦場になっているインスタを覗いたら、予想以上にクウェリさんがバランスを崩していました。かなり低レベルなコメントにまで全力で返し、すぐに「白人至上主義者」と相手を切ってしまうし、すばらしい語彙力の無駄遣い。本来、書店を営んでいたタリブと、ブック・クラブをやっているノーネームは世代がちがっても同じ志でラップしていたはず。残念です。ブラック・スター再結成の話が出ているので、なんとか目を覚ましてほしい。

                  名盤です。頼むよ。

3. チャートの動向の話を。アルバム・チャートの今週1位はDJキャレドの『Khaled Khaled』。ヒップホップだと、その前にヤング・サグとガンマの『Slime Language 2』があったからコンピが強いですね。その少し前にロッド・ウェイヴ『SoulFly』が1位をを取っています。あんまり大声で言えないけど、私、キャレドは少し飽きちゃったかも。ジェイ-ZとNasが組んで、ビヨンセがこっそりコーラスをつけていたり、レゲエの大御所が揃い踏みしていたりと、豪華なコラボのオンパレードが聴けて、ありがたい気持ちもあるけど‥。1回聴いたらお腹いっぱい。トラックが古いのも関係あるかな。

一方、最初は荒削りかな? と思ったロッド・ウェイヴはハマりました。フロリダ出身のアーティストとで、ちょうどラッパーとシンガーの中間みたいなスタイル。ダンスホール・レゲエのシングジェイ(シンガーとDJの掛け合わせ)みたいな言葉があるといいんですけどね。体が大きくて熊さんみたいな外見のロッド・ウェイヴの特徴は、メランコリックを通り越して、ひたすら哀しいリリック。痛みやトラウマのことばかり曲にしている。

クワイヤーみたいなコーラスが入って癒しの部分もあるけれど、彼の音楽を聴くのは悲劇的な映画を見てすっきりするのと似ている感覚です。ある意味、2019年からスポットライトが当たって、2020〜2021年に流行るべくして流行っている人かもしれない。ロッド・ウェイヴの「Tombstone」のヴィデオを貼っておきますね。救いのない展開で、ビョークの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を思い出しました。少し、閲覧注意です。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

今週は、気合を入れてリサーチしたアメリカのホームスクーリング事情と、リル・ナズ・X「モンテロ」考察J-Waveのボブ・マーリー特集Spotifyのポッドキャスト「Poplife」のレゲエ回(70分x4!)などが公開されました。私は早口で話題を飛ばすくせがあるので、わかりづらい点もあるかと思いますが、よかったらチェックしてください。