Weekly Recap. 4.4-4.18 ブラック・ロブの死と、最近観た映画と。

忘備録代わりに、週ごとをふり返るウィークリー・リキャップを4月から始めたのに、早速、2週間分まとめて書いているダメ人間です。その間にDMX逝去との、個人的にもヒップホップ・ワールドにも大きなニュースがあり、2本ほど追悼記事を書きました。翌週、2000年のメガ・ヒット“Whoa!”を飛ばし、バッド・ボーイ黄金期を支えたブラック・ロブ(Black Rob)が腎不全で亡くなりました。DMXの方がずっと大物ではありますが、どちらも50代に入ったばかり、世紀が変わる時期に活躍、と共通点が多いので名前を聞いてパッと曲と顔の両方が浮かぶ人はショックが続いたのでは。

ブラック・ロブは、体調不良のニュースが流れていました。「退院しても帰る場所がない」とSNSで窮状を告白、周りの人も協力して寄付を募り始めてからすぐの訃報。ホームレスだった、という情報がありますが、それはちがうようです。彼が「(持ち家もなくて)帰る場所はアパートくらいしかない」と言っていたのが、大げさに広まってしまった。ブラック・ロブは、個人的に少しだけ知っている人でした。10年くらい前、仲のいい友人が彼と付き合っていて、1度だけ会いました。その日のロブさんはすごく機嫌が良くて、ハーレムっぽい華やかな雰囲気をもちつつ、いい意味でふつうの人でした。ヒットを飛ばしてからはしばらく経っていたけれど(出所したばかりだったけど)、羽振りが良さそうだったし、プラチナム・セールスを出すとやはり安泰なんだな、と。

ラッパーとしてのブラック・ロブの強みは、猛々しい声と、巧みなリリックです。自分の曲でなくても、バッド・ボーイ関連の曲のヴァースはかなり書いていたので、それらのロイヤリティ(印税)もあったはずですが、ライフスタイルを切り替えられなかったのかな、と思います。今回のことで、パフ・ダディことディディがだいぶ突き上げを食らっていますが、もう少し慎重に事情を見極めたほうがいいかもしれません。ブラック・ロブの死は、DMXの時とはまたちがう、残念さがあります。

音楽の話はもう、あまり考えられないので、ここ2週間でみた映像作品を、ネタバレしない程度の感想を記します。ドラマと映画に関しては、「一点豪華主義」ならぬ、「ワンシーン肯定主義」で行こうかな、と。映像コンテンツが溢れているため、どうしてもオーディエンス側が「観てあげた」とのスタンスに立って否定的なレビューやコメントが闊歩しているけれど、仕事で書いている人以外は、そこまで気に入らないなら何も言わなきゃいいのになー、ってよく思います。ワンシーンでも、セリフ一つでも、心に残ったらそれは素敵な体験なのではないでしょうか。まぁ、私は家で鑑賞する時は、最初の15〜20分で感情が一度も動かなかったら、観るのをやめているので、何を言わんや、ですが。

これはプロの「ダメ出し本」。このシリーズは好きでよく読んでいます。

・くれなずめ

試写会で観てきました。成田陵さん、高良健吾さんなど若手俳優さん全員大熱演。前半の彼らのワチャワチャを楽しめる人には傑作だろうし、彼らが何に笑っているのか、背景が見えづらいと感じる私みたいな人間は、少し置いてけぼりを喰らいます。友だちを早く亡くした時の、気持ちの折り合いのつけ方を模索している人におすすめの作品。私は「クラスで5番目くらいにモテそう」な俳優さんに着目する癖があり(演技がめちゃくちゃ上手なケースが多いので)、そのカテゴリーに入る若葉竜也さんが、期待通り「いる! こういう人会ったことある!」レベルまで、役を演じきっていて素晴らしかったです。

・カリプソ・ローズ

トリニダード・トバゴの美空ひばり、カリプソ・ローズのバイオ・ピックの先行上映会に行ってきました。10年前の作品ですが、古い感じはしません。私は、公開が決まる前に紹介記事を書いたため、何度か見ていたのですが、日本にカリプソを紹介した浜村美智子さんが登壇するとのことで、足を運びました。真っ赤なスーツで素敵でしたよ。カリプソとソカ、西インド諸島の歴史に興味がある方は、ぜひ。

・ノマドランド

「アカデミー賞有力候補」と聞いて観に行くのは思考停止ぎみだとは思いつつ。アカデミー賞の候補になるのは、映画として優れているのはもちろん、アメリカの世相を映している点が評価されるので、映画館で観たかったんです。夫の死と、リーマン・ショックを契機に車上で生活しながら放浪の旅を続ける女性の話。『スリー・ビルボード』然り、フランシス・マクドーマンドは孤独感、虚無感を表現させたら右に出る人がいないですね。原作『ノマド 漂流する高齢労働者たち』は未読ですが、車での生活様式を一つの価値観として捉えているのは、アメリカらしいと感じました。映画で、ノマド生活をしているのが白人と、ラティーノでも肌の色の薄い人だけだったのも、印象的でした。アジア系や黒人が車で生活しながら移動するのは、危険な目に遭うはずだから。

・ミナリ

数年に1度出る、映画をさらに輝かせる天才子役にデヴィッド役のアラン・キム君、8才に全部持っていかれました。時代も場所もちがうけれど、アメリカで移民(外国人)として暮らす感覚はよくわかるので、身につまされる鑑賞体験。解説らしきことを付け加えると、韓国系の人や、ユダヤ系の人は後から来た同胞にお金を貸す独自の仕組みを持っていて、コミュニティの結束が強い。それを、さらっと「息苦しい」と言っ他のはハッとしました。広い世界に飛び出したつもりが、祖国よりも狭い同国人コミュニティに絡め取られるのは、外国生活ではありがち。父、ジェイコブ役のスティーヴ・ユァンはシュッとしすぎていて農民に見えず、『バーニング 劇場版』のほうがハマっていたかな。

全方位的にモテそうだな、と思いました。

・滝を見に行く

たまたま、脚本を読もうと思っていた矢先にwowow  で放映されて、うれしかった。中年女性ばかりのツアー客が滝を行く途中で遭難する話で、コメディなのかミステリーなのか知らないまま見始めたので、最初はけっこうドキドキしました(前者でした)。根源的な女性の強さを引き出している点が、素晴らしい作品。ラストシーンがとくによかった。

印象に残ったのは、このあたりかな。あ、『純平、考え直せ』と『スマホを落としただけなのに』の2作目も面白かったですよ。