ベレスと浮気女と「ある愛の詩」

ニューヨークは今日、吹雪いていました。

暖房の調子が悪く、ロシア人3人がよってたかって4時間近く、ガスヒーターの修理をしてくれて、それはありがたかったのですが、結果が万全でなくて哀しいです。仕事も捗らなかったし。引っ越しどきでしょうか。

さて。 新しい曲に出会うのと同じくらい、昔から聴いていた曲がストン、と染みる瞬間が好きです。前からの友だちの意外な一面を見て、親近感が増す感じに似ている。

年末に「ああ、そういう曲だったの!」に気がついた曲があったので、解説してみますね。

“Love Means Never To Say You’re Sorry”(youtubeはI’mになってますが、You’reが正しいです)。御大ベレス・ハモンドの隠れクラシックです。彼の持ち曲ではソウル寄り。現場でかかりやすいタイプではないので、「代表曲」にはならないのかな。

でも、コンサートでは必ず歌い、客席も「ベレスの声が聴こえないっちゅうねん!」くらいの大合唱になる曲です。一昨年、バークレー・センターで大合唱の最中に「私も完ぺきに歌いたい!」という衝動に駆られたのを思い出して、 掃除の手を止めてじっくり聴いてみたら…。

ビックリしました。

長いこと、コーラスだけで「誰かを好きになった以上、ぐだぐだ言わんと最後まで好きな気持ちを貫こうよ」という曲だと思っていたのが。

浮気されている男の人の話だった!!

ちらっと意訳します(Jasracがウルサいから、全訳は避けます。でも、20年前の曲にきちんと対訳がつく可能性って低いし―仮にそういう機会があってもイケシロが担当する可能性は半分くらいあるし―いいんじゃないかって思うんですけどね。+の方が大きいよねー)

「この間も「ごめんなさい」って言ってたよね
同じ話をしたのはそんなに前のことじゃないのに」

歌い出しから、不穏な空気です。コーラス、行きます。

「人を愛するとき、謝るようなことをしちゃいけないって知らないの?
どうして平気で愛している人を傷つけるようなことをするの?」

うーん。ゴミを出し忘れたとか、約束の時間に大幅に遅れたとかってレベルじゃないですね。浮気されてます、ベレスさん(もしくは、歌の中の男性)

さらに歌が進むに連れて、女性がなかなかの玉だと判明します。浮気がバレても「愛してるわ」って耳元で囁いたり、背骨をツーッってなぞったり(ツーッは使えそうですね。メモっておきましょう)

なんどかコーラスがくり返され、それでなんども浮気されちゃってる感が高まるあたりが、この歌のすばらしさ 。

このまま、「呆れたよ、さよならさ」とオチが来るかと思いきや、B-ブリッジでこう言い出します。
「もう一度触れてくれ
耳元で囁いて 甘やかな嘘を
それでなんとかやって行くよ
しばらくの間は
君が悪いことしているって気がつくまで」

え?

ええ?

えーーーーー? 許すんかい!

気がつかないから! 浮気性の人って悪気がないからずっと出来るんだって! と歌の男性に言ってあげたい気持ちでいっぱい。こういうシチュエーション、女性がガマンするケースの方が多いので、ソウルや演歌みたいに男性が女性目線に歌っているのかなぁ、とも思いましたが、レゲエではジェンダーの入れ替えをあまりしないから、違うかな。

「俺って浮気をくり返せるくらい、いい女とつき合ってるんだぜー」

という3回半くらいねじれた自慢ソングなのかもしれません。
歌詞がないかネットで調べたとき、「Beres」と入力し忘れたせいで、面白い事実が出て来ました。

元の言葉、“Love Means Never Having Say Sorry”は、76年の映画『ある愛の詩』で出て来た名台詞なんですって。身分違いの悲恋を描いた内容で、その台詞の意味は「愛とは決して後悔しないこと」だそう。私の最初の解釈が近いです。
VPのベスト盤のロブ・ケナーによるライナーノーツには「カードに刷ってありそうな慣用句」とあったので、よくある言葉なのかな。ベレスは歌い手としても、作詞家としても超一流ですね。次にインタビューできる機会があったら、映画との関連性もぜひ尋ねてみたいです。

レゲエ好きカップルで、「浮気されてるかも」と思った場合は、この曲をさりげなーく何回もくり返しかけて反応を見る、って手もありかも(あ、怖い?)

最後に、ベレスさんのラブリーな一枚でも。

 

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