しばらく待つ、と書いた翌々日に、「行こう!」という強い意志を持った人が仲間のうちに現れたので、日曜日の夕方に『Alice in Wonderland』を観て来ました。チケットをまずインターネットで買って、ブルックリンのCourt Streetの映画館にも早めに行って。
私は、『不思議の国のアリス』も『鏡の国のアリス』も、ケース入りハードカバーの本を中学生のときにがんばって買ったほどののアリス・ファン。数学者で写真家でもあったルイス・キャロルの摩訶不思議な想像力にも魅せられましたが、ジョン・テニエルの挿絵も気に入ってよく眺めた記憶があります。オリジナルの挿絵のアリスはお世辞にもかわいらしいとは言い難く、首が伸びた絵などはむしろ、気味が悪い。そのちょっと妙な感じを含めて好きでした。
アリスが生まれた頃って、日本は幕末なんですよね。赤の女王の「首をちょん切ってしまいなさい(”off with her head!”)」ではないですが、おどろおどろしい空気は全世界的な傾向だったのかもしれません。子供の頃に、ディズニーのアニメーションも観ています。家にアニメ版アリスの絵が長いこと飾ってあったのですが、あれはディズニー・ワールドに行ったときのお土産だったのかな。でも、花が歌い出すのが怖かったくらいしか覚えていません。
…と、アリスに関してはいろいろな想い出があるのですが、ティム・バートンXジョニー・デップの黄金コンビが挑んだ3D版はですね、3Dが「飛び出す絵本」みたいに見えてちょっと疲れること、疲れているうちに筋がこんがらがること(ふたつの話を混ぜていたせいもあるかもしれません)、おまけに言葉遊びをベースにしている原作を生かした結果、英語がわかりづらかったことなどなどが積み重なり、面白かったとか感動したといったフツーの感想より、なんか圧倒された、というのが正直な感想。
デップの帽子屋は十分狂っていたし、アリスもアン・ハザウェイ演じる白の女王もクマがはっきり出ていてちょっとドラッギーだったし、原作の持つ摩訶不思議さは十分に映像化されていましたが、「これがアリスだ!」というほどは、しっくり来なかった気がします。一度、3Dではないヴァージョンを観ると、ティム・バートンがやりたかったことが分かるかもしれません。
昨年の『Up』のヒット以来ーー日本では『カールじいさんの空飛ぶ家』という邦題がついているんですね。ちなみに、重要な脇役の男の子がアジア系の設定で、担当した声優さんが10才の日系人の男の子だったのも、さすがディズニー、と思いました。人種によって、声の質は違いますからーー
3Dの映画が注目を帯びています。今年、何本かリリースされる3Dの映画が、どこまで人気を集め、浸透するか(要は、どれくらい儲かるか)が今年のエンタメ・ニュースの目玉として、新聞や雑誌で延々論じられています。私みたいにふつうの映画を見慣れてしまった世代は仕方ないとして、目新しさがなくなった時点で、「3Dじゃなきゃいやだ!」という子供がどれくらい出現するのか、ちょっと興味がありますね。
3Dのテレビの方は主流にはならないだろう、というのが私の読みです。
“Off with her head!”が口ぐせの赤の女王。
すごい頭でっかち。威嚇することでしか、人と繋がれない気の毒な人。私の一番のお気に入りです。