出張から帰ってきたら、ケーブル・ボックスが壊れてました。よって、土曜日はテレビなしだったのですが(って、よく考えたら地上波は観られたかも)、軽い時差ぼけもあってテレビの前でまったりしたい気分。
で、クリスマス・プレゼントにもらったDVDをやっと解禁しました。日本でも評判になったブラジル映画『City of God』のテレビ版、『City of Men』。全570分。映画も大好きで、ハマったら大変なことになるのは目に見えていたため、なかなか手を付けられなかったのです。
予想通り、ドツボ。夜、これを観るために昼間一所懸命仕事をしている感じです。
日本版がどうなっているか気になってチェックしたら、意外な事実が。本編は二人の少年がリオ・デジャネイロのゲットーでたくましく育つ様子を描いた、コメディーが少し入ったComing of Ageドラマなんですね。貧困や暴力の要素も出てくるけれど、全体としては心が温かくなるような、むしろ爽やかな印象を与える作品なのに、日本版の宣伝でひたすら少年ギャングの面ばかり強調しているんです。
パッケージなんて、主人公を差し置いてほとんど出て来ないギャングの子供達がドーンと映っていて、看板に偽りあり。全19話が9話になっているし、暴力的なエピソードばかり収録しているのでは、と疑っているところです。制作陣が描きたかったのは、どんな環境でも人間らしくまっとうに生きていこうする少年達の強さのハズ。何度も誘惑に負けそうになりながら「犯罪者になったら25才まで生きられないぞ」とお互い牽制し合いながらギャングにならずに何とか生き抜こうとする二人の成長に、社会的、歴史的なトピックも織り込んでいる秀逸な作品です。ブラジルのヒップホップ・シーンや、階級格差がある肌の白い子供、日系人の子供達と交流するすてきなエピソードもありました。
それが、なぜ、「麻薬、暴力、売春、殺戮」(公式HPの文章より)がフォーカスになるのでしょうか。
ライセンスをした人たちは、ちゃんと作品を観たのでしょうか。
大昔、雑誌のコーディネートの仕事で「危ない、汚いブルックリンを撮りたい」と言われて、言葉が出なかったのを思い出しました。「貧困=殺伐としている」というステレオ・タイプを押しつけるのは、それこそ犯罪的です。この作品が成功したのは、作り手、受け手が少年達の目線を共有し、一体となって世界観を広げられるからだと思います。ヒップホップやダンスホール・レゲエのリリックの根底にある、ゲットーの現実が脚色されない形で分かるのも音楽ファンには魅力でしょう。
改めて、正しい形で日本に届いて欲しいです。