ディアンジェロ『ブラック・メサイア』リスニング・セッション

先週の日曜日の真夜中(月曜日、かな)に突然、リリースされたディアンジェロ3作目『ブラック・メサイア』。14年と11ヶ月待たせて、いきなりかーい!! と思ったファンも多かったのでは。

私も、そうです。2012年からライヴ活動を再開、アルバムもそろそろ……という噂は聞いていましたが、先々週の半ばにアーティスト名を伏せたリスニング・セッションの出欠を確認する連絡がきたときは、「アッシャーかな」とボケてしまいました。

15年間は、長い。

当時、生まれた子どもは高校生になっています。ラファエル・サディーク。Q-ティップ。ザ・ルーツのクエスト・ラヴ。彼に近い人たちにインタビューするたびに、「あの…ディアンジェロは元気なんでしょうか?」と必ず質問して、 BMRに必ずその答えを載せていました。みんな、「元気だよ。そろそろ復帰すると思う」と言いつつ、時が経ち。

一昨年に活動を再開したときは、嬉しい気持ちと不安な気持ちが入り交じっていました。ニューヨークの復帰ライヴがうちから遠い場所で、友だちを募ったら、検討してくれたけれど、やっぱり「不安」が勝ったらしく断られ、私も断念。そのライヴのレヴューは微妙な感想が主でした。今年は、近所のアフロ・パンク・フェスティバルに出たときも、ほかのイベントと重なって行けませんでした。「縁がないのかな」と思っていたところに、リスニング・セッションの招待。

場所はミートパッキング・ディストリクトのドリーム・ホテル、最上階のバーです。DJを務めたクエスト・ラヴのインスタの写真を拝借しますね。

 

日曜日の夕方4時から8時という中途半端な時間帯。この写真は4時半くらいかな。最終的にこの3倍くらいの人が来ました。ええ。一番前に座っているのが私です。写真を自分で撮るコラムをやっていたこともあり、電車の席取りは弱いのに、リスニング・セッションでは急に強くなります。 あと、パーティー色が強いときは音の発信地から離れてしまうと、話し声でちゃんと聴こえないんですよ。

進行役は、評論を読むタイプのブラック・ミュージックが好きな人なら必ず知っている、ネルソン・ジョージ。私も、彼の著作は読み込んだクチ。実は、ご近所さん。隣にOkayplayer.comの編集長のエディが来て、俄然、楽しくなりました。彼はレゲエ好きで、ライター時代にフェーダー誌を中心にレゲエ・アーティストのインタビューをたくさん書いています。センスのいい、鋭い記事を書く人。私が「スパイク・リーの帽子がスゴすぎる」と言ったら、「ファレルを意識してるんじゃない?」と即答。「Pharelize(ファレルっぽいことをする)という造語を流行らせよう!」と提案したところ、今度は先方が笑っていました(でも、Okayplayerでは使ってくれないそうです)。

ディアンジェロ本人は来なかったのは想定内(まぁ、ちょっぴり期待していましたが)。彼には、スパイクさん以外にも、彼には強力なサポーターがたくさんいます。マネージャーは、ヒップホップ好きならすぐ反応するケヴィン・ライルズ。デフ・ジャムのトップに上り詰め、ジェイ・Z-リオ・コーエンの下にガチッといた人です 。D君の曲でリミックスが出るとしたら、ホヴァさんになりそうだけれど、あまり必要がないかな。コンサートのマネージャーが、ジェームズ・ブラウン(!)やプリンスと組んで来た超大物アラン・リーズ。ちなみに、リスニング・セッションの準備として、前2作とプリンスの最新作『Art Official Age』を聴いておいたのは、正解でした。

ディアンジェロは、同性にモテるタイプというか、人望が厚い人のような気がします。天才だから、という理由が一番大きいですが、やっぱりヤな奴だったら、仕事を選べる大物はムリして組まないのでは、と思うのです。様々な中毒を克服した、という爆弾材料がある場合は、とくに。

左からネルソン・ジョージ大先輩、GQの編集者さん、アラン・リーズさん、スパイクさん

そうそう、セッションの途中で背の高い女性が隣に立ったと思ったら、インディア・アリーでした。やっぱり気になるのでしょうか。彼女の音楽もいいですよー。そのうち、ゆっくり記そうと思います。

中盤で、「シングルが夜中にリリース」との説明があり、ほほう、と思っていたら、「いや、実はアルバム全部行くらしい」とエディに言われてビックリ仰天。昨年のビヨンセの緊急リリースを思い出し、レコード会社が同じだからアリかなぁ、と思ったのですが、グラミー賞のノミネーションには不利なタイミングなんですよね。そこは、気にしていないのでしょうか(でも、2016年になってもいくつか獲ると思う。と、いまから言っておきます)。

評判は上々。私も「出たー、来たーーー」と内心、舞い上がりましたが、この『ブラック・メサイア』、決してわかりやすい作品ではありません。『ヴードゥー』からのファンや、ファンク好きはガブリッと食いつくでしょうが、R&Bに様式美を求める人は案外、苦手かも(ちなみに、ディアンジェロはR&Bとして括られるのを非常にいやがる人でした)。本人が弾いている、鬱屈したギターが見事にプリンス化している「1000 Death」を初めて聴いたときは、私も「これが続いたらキツい」と思ってしまい。ほかの曲はそこまで前衛的ではないので、ひと安心。

会場に入るときに、リリックが印刷された小冊子が配られました。音の重ね方に特徴があるので、レコーディング方法、解析に話題が集まりそうですが、リリックも深い。そうそう、セッションの出席者は夜中にリリースされた直後に、MP3とWAV両方のデータをDLできるリンクが送られて来ました(すみません)。そのうえで言うと、MP3で聴くとちょっと損する作品です。

小冊子とおみやげのキャンドル。リリックを印刷したシールをペタッと貼っただけのものですが、まぁ、火を灯すのはムリですね。

もし、「とっつきづらい」と感じた人がいたら、騙されたと思ってくり返し聴くことをお勧めします。耳が鍛えられるから。いい音楽とは何か、を突き詰めて考えると、どこまで感情が揺さぶられるか、にかかっていると私は思います。耳に心地よく響くポップスは、 気持ちの表面だけ上滑りして行って、奥まで届かない。ディアンジェロの音楽は、心臓とお腹の間のあたりをつかんで、上下左右に揺さぶるような強さがあります。だから、曲によっては、本腰で聴くと疲れる。そこが、いいのです。
ここまで強度のあるアルバムを放つ天才と同時代に生きられて、幸せだなぁとつくづく思います。

 

スパイクさんとのミーハー写真

“ディアンジェロ『ブラック・メサイア』リスニング・セッション” への4件の返信

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    貴重なレビューありがとうございます!
    楽しく読まさせて頂きました。
    毎日ヘビロテ中です(^-^)

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    レポもさることながら、スパイクリーとのツーショットすごい!!!

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    >KIDさん
    楽しんで下さったようで嬉しいです。年末のご褒美みたいなアルバムですよねー。

  4. SECRET: 0
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    >KARIさん
    すごい近くに座っていたから、話しかけるタイミングが結構難しかったよー。まぁ、先生みたいな人だよね。

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