Snoop Lion 『Reincarnated』(邦題:スヌープ・ドッグ:ロード・トゥ・ライオン)が発売されました。日本盤のCDに、6000字を越えるライナーノーツを書いたので、興味のある人は読んでもらえると嬉しいです。あと、BounceとFloor.Netにインタヴューを書き分け、Woofin’のコラムでもトップニュース扱いにしました。(同日に出たT.O.K.の『4Ever』は、ライナー代わりのインタビューが入っています。こちらも、よろしくお願いします)
こちらのリリース・デーに、スヌープさんはkeep it realな感じで、クィーンズのVPレコーズで記者会見とサイン会を行いました。記者会見には、NYの最強ローカル局、NY-1も来ました。
「スヌープ・ライオンはギミックじゃないか」とか、「そんなに簡単にラスタになれるのか」という批判にくり返し晒されているスヌープさん、「マーリー・ファミリーが受け入れてくれたからいいんだ。それに、これはだれのためでもなく、自分のための旅だし」とバシッと言い返しています。3月の取材でも同じことを言っていたなぁ。
ただし、ポジティヴ・ヴァイヴを全方位的に広げるために、様々なプロジェクトに取り組んでもいます。“No Guns Allowed” Initiative : いま、全米で問題になっている銃規制について、「規制すべし」という態度のもと、若い有権者に呼びかけたり、MTVと組んでその動きをサポートするリストバンドを作ったりしています。
記者会見、サイン会、そしてマンハッタンのクラブでのリリース・パーティーをはしごして、つくづく思ったのは、スヌープが本物のアイコンであること。知名度が違う。
サイン会を始める直前。
左から、VPのP、ミス・パット、NY-1のレポーターさん、今回の敢闘賞、パブリシストのティファニー。レポーターさんは最初、気づかなくて「あれ?知り合い? どっかのBBQで会ったとか?」って思っていたら、テレビで見たことがあっただけの話でしたw 本人も「それよく言われるわー」って笑っていました。
ラジオ局、Irie Jam Radioも生中継。
外に出たら長蛇の列。その中にMobb Deepのプロディジーを発見。スヌープにサクッと会いに来たみたい。さすがにみんな気がついて、すぐに入っていました。こういうカッコつけない感じ、私は逆にカッコいいな、と思いました。
アルバムの話をしましょう。
これだけ話題になって、大物ゲストがたくさん入っていたら、失敗はしないと思うんですね、フツーに。フェデレーション・サウンドのマックスと話したときも、「スヌープのファンが買うかどうか、って話で、レゲエ・ファンがどうのってことでもないと思う」と、クールだけど、的を射た意見を言っていました。
でも、私はレゲエが好きな人がどう取るか、気になってしまうのです。
ビルボードに寄せられたパトリシア・マスキーノの曲解説(通常盤の12曲分です)。彼女はVibe/Complexのロブ・ケナーと並んで、USのレゲエ評論家の第一人者。イタリア系アメリカ人で上品な人だけど、必要とあればキツいことも書くので、信用しています。
ここで、「ポップ・レゲエ」という言葉を使っていて、「ああ」と思いました。たしかに、ポップ寄りのレゲエかもしれません(私は、愛情を込めて「ヤンキー・レゲエ」と書きました)。
ただし、マーケットがメインストリーム=ポップ、ということでもないです。ジャマイカのレゲエにも「これ、歌謡曲だよね?」って思う曲は、ある。例を挙げると、アイ・ウェインの“Can’t Satisfy Her”は、オケが歌謡曲調なら、内容もワイドショーです(流行っている当時から、どうにも苦手な曲でした)。
ポップ=悪い、ということでもない。スヌープ・ライオンに関していえば、なにしろ音がいいので、それだけで気持ちいい。やっと春らしくなってきた街を歩くとき、ちょうどいいBMGになっています。まぁ、やっぱり好みは、スレンテンを敷いたオケにミスター・ヴェガスをフィーチャーした“Fruit Juice”や、「さっすがぁ、Super Dups!」(ブラック・チャイニーの人ですね)な“Smoke The Weed”あたりの、ストレートなレゲエになりますが。
Snoop Lion in NYCに話を戻すと、Meat Packing Districtにあるクラブ、1OAKでのリリパもでDJスヌーパデリックとして回していました。なんか大騒ぎになっていたので、彼がブースに入ってからは長居せずに退散しましたが、遊び心たっぷりでいいですね。本人が楽しんでいる様子が伝わってくるのが、今回のプロジェクトの一番、いいところかも。
ここにたどり着くまでの半生と、ジャマイカでの旅が交差する映画も面白いですよ。