21サヴェージ vsトランプのアメリカ

2月3日の日曜日、アトランタでNFLの決勝、スーパーボールで全米が盛り上がっている最中、21サヴェージがICE(移民・関税執行局)に捕まる、という衝撃的なニュースが走りました。実はイギリス国籍の不法移民だった」というヘッドラインで、日本のヒップホップ・ファンでニュースが届いたわけですが。... Read More

『サバイビング・R.ケリー』を観て。

『サバイビング・R.ケリー』、観ました。6回シリーズ全部。哀しくて辛くて、エピソード5では号泣して、どっと疲れたけれど観てよかったです。フライング気味で予測すると、9月に発表されるエミー賞(テレビ/配信版アカデミー賞)のドキュメンタリー部門は、制するんじゃないかな。... Read More

来日直前! チャンス・ザ・ラッパーに関して「へぇ!」な7つのこと

今週末、とうとう、チャンス・ザ・ラッパーが初来日しますね! ということで、予習代わりに「こんな人なんだよ!」ってのを書いてみます。   題して、チャンス・ザ・ラッパーに関して「へぇ!」な7つのこと、挙げてみましょう。   1 高校生の時、停学を喰らって、その10日間のことをミックステープ『10 Day』(作品)にして世に出てきた   2 同じシカゴ出身のカニエ・ウェストに多大な影響を受けている。ものの、カニエからGOOD Music入りへ誘われたらあっさり断った   3 13才頃、オバマ元大統領に直接、「ラッパーになるんだ!」と宣言した有言実行野郎   4 ほぼ同じ顔のとーちゃんと弟がいる   5 ジェイ・ZからJコールまで同業者みーんなが心底羨むものを持っている   6 広告一つでグラミー賞のルールを変えた   7   『Coloring Book』の本質はゴスペル・ラップである   解説していきましょう。   1は有名なエピソード。学校でマリファナを吸って停学になったそう。それから、以前は精神安定剤のXanaxを摂っていたこともラップしています。アメリカで睡眠薬や精神安定剤を本来の効能以外の目的のために手を出す人は、ほんっっとうに多く、社会問題になっています。チャノ(アメリカでのニックネーム。呼びやすいので広めます)もその道は通ったわけです。娘が生まれ、父親になって神様の存在を改めて感じ、『Coloring Book』ができた、という流れ。   2 カニエとの関係。子供の頃はそれほど熱心なヒップホップ・ファンではなかったけれど、カニエのThrough The Wireを聞いて、天啓を受けてラッパーを志したそう。チャカ・カーンの同名曲を大胆に敷いた名曲で、私も2004年のベスト1に選んだ記憶が。いつ聴いてもかっこいいし、この曲がチャノの原点になっているのも納得です。 そのカニエですが、2作目『Acid Rap』後に起きたレーベル争奪戦に参戦、 彼のレーベルGOOD Music入りを勧めたそう。レコード会社による何度目の契約金競争が激しい時期で、ASAPロッキーが300万ドル(超ざっくりで3億円)もらったとか、よく話題になっていました。ここに乗らなかったあたり、チャノの強さがあります。カニエとは仲が良く、『Coloring Book』のオープニングAll We Gotはカニエから「手伝うよ」という電話があって実現したそう。美談。   3、4、5は基本的にぜーんぶ同じ話。チャノ太郎(勝手に拡げてみました)は、上院議員時代、オバマさんの元で働いていたお父さんのケンさんがいます。「お父さんのボス」だったオバマさんに会った際、将来はラッパーになりたい、と言ったところ、「ワード」と返ってきたとか。wordは、「なるほど/よく言った」といった意味で、ポジティヴな同意の時に使います。まぁ、スラングだけど。オバマさん、カッコいいです。   Summer Friendsで本人もラップしているように「俺の友達、みんなお父さんがいない」中で、人生の指針となる父親が、チャンス・ザ・ラッパーことチェンセラー・ベネットにはいます。父親がいなくても周りに頼りになる叔父さんや祖父がいることもあるし、お母さん一人できちんと育て上げるケースは多々あります。一括りするのは乱暴であるのを認めつつ、アメリカのヒップホップ・カルチャーを語るうえで、父親の不在の問題は大きいことは指摘したい。ジェイ・ZもJ.コールも50セントもそれをテーマにした曲があるし、彼らの生き方に多大な影響を与えています。   アートにしてもスポーツにしても、目指す師匠や先輩を見つけて目標にし、最終的に超えることで成長するストーリーが背景にあることが多いですよね。ヒップホップはこのサイクルが早いうえ、関係性が濃い。まぁ、この話は別の機会に深くするとして。   チャノみたいにレコード会社から契約の話が来たような大事な局面で、的確なアドバイスをしてくれるお父さんがいるのはとても珍しいし、ほかのラッパーにしてみれば、契約金の額よりもグラミー賞よりも羨ましい土台なのです。私は、彼の屈託なさ、25才とは思えない安定感もそこから来てるかな、と思っています。   弟のテイラー・ベネットも注目株のラッパーです。   6も有名な話。彼は音源に値段をつけず、フリーで売り出したため、グラミー賞の規定に外れてノミネートされない雲行きになった際に、ビルボード誌に掲載した意見広告がこれ。   「ヘイ、俺だっていいじゃん」   からの、なぞのウセイン・ボルト・ボーズ   ‥‥憎めないぃぃ。   これで、みんな「だよね、いいんじゃね?」、「ノミネートしちゃう?」からの、「ノミネートならいいよね?」で、見事に受賞(半分、想像)。   グラミー賞だってテレビ番組のひとつなので、彼みたいに直前に話題を作ってくれるアーティストは大歓迎なのです。   チャンス・ザ・ラッパーの魅力を端的にいうと、アーティストとして、人間として、頭とセンスがめちゃくちゃいいこと。   性格ははっきりしていて、相手が大巨匠の映画監督、スパイク・リーだろうが、ミックテープ時代(って、いまもある意味そうなのですが)に散々世話になった、シカゴの(元)ドン、R.ケリーだろうが、言いたいことがあったらハッキリ、ズバリ言います。   言動を見ると、わりとキツい人です。   でも、それを補ってあまりある愛嬌。   私は、個人的に顔がコミカル系でよかったな、って思っていて。これでイケメンだったり強面だったりしたら、共感指数がぐっと低くなった気がします。   彼がどんな人間か、育ちなのか。私はAngelのこのラインを聞いた時、ハッとして理解しました。   I ain’t change my number since the seventh grade   「中1から(携帯の)電話番号を変えていない」   中1から携帯を持っていたことがまずひとつ(珍しくはないけど、早いです)。00年代はアメリカも携帯会社の顧客争いがピークで、キャッシュバックとか半年だとかに惹かれてしょっちゅう番号を変える人がいました。途中で番号を持ち越すことができるようになったのですが、ほかならぬ私も「絶対に番号を変えたくない」という信念のもと、まぁまぁがんばって誘惑に打ち克ったほど。   だから、このラインで「あ、10代から頑固だったんだな」と。経済的に、精神的に安定していたんだな、と、合点が行きました。   7 私が強調するまでもなく、『Coloring Book』(塗り絵!)は大傑作です。この作品では、ラップと歌の割合が半々というのも新しかった。   ゴスペル・ラップ、というのはクワイヤー(聖歌隊)やゴスペル・アーティストの超大御所、カーク・フランクリンを投入している点ももちろん、全体に流れるテーマが「信仰」だから。Mixtapeみたいにヒップホップに対する思いや、Smoke Breakみたいにいっしょに緩もうぜーな曲もバランス良く入っていますが、全体の感触がゴスペルです。   彼が生まれ育ったシカゴは全米平均より黒人人口の割合が高く(4割近く)、教会の数も多い。カニエ・ウェストにしてもチャンス・ザ・ラッパーにしても、キリストの存在は「新発見」ではなく「原点回帰」のはず。   この二人のタッグ、実現してほしいです。... Read More

カニエ5作目:Teyana Taylor K.T.S.E

カニエ・ウエスト5連作の最後を飾るのは、R&B作品。テヤーナ・テイラー嬢のK.T.S.E(Keep The Same Energy/ティヤーナの方が発音近いですね)これがR&Bジャンキーには堪らない仕上がりで。1日3回服用中。一番好きなNever Would Have Made Itなんて、なんどくり返してもまぁったく飽きない。 ビヨンセ&ジェイ・ZのThe Carters、Everything is Loveより断然、こちらをよく聴いてます。レモネードは名盤、4:44も聴き込んだから、トリオロジーの締めがこれかー、って肩透かし。ベイチェラ(“ビーチェラ”じゃないよー。ビヨンセの短縮系はBeyで“ベイ”だからねー)で感動しすぎて、期待値が上がりすぎたかも(って、新作がこのタイミングで出るとは思っていませんでしたが)。まず、ジガさんの嫁自慢ヴァースがダサすぎる。ビヨンセがラップできるのはわかったけど「私のひひひひひ孫まで大金持ち」とかね、うん、知ってます。ボースティング(ほら吹き)はヒップホップの大切な要素だけど、それが事実ならただの嫌味だと思ってしまう私がひねくれているんでしょうか。夫婦漫才ならぬ夫婦ラップはDrunken in Loveがピークだったような。 一言。 ‥‥戻ってこーい、ジガさんーーーー(BK方面に向かって) by ジェイ・Z教信者。   あ、カニエ&テヤーナさんの話でした。   まず、テヤーナ・テイラーが誰か、から。カニエのGOOD Music所属で今回の連作一大プロジェクトに抜擢されたシンデレラ・ガール!!   ‥ではないです。27歳だけど、業界ヴェテラン。10代のときにMY Sweet 16というMTVのリアリティ番組でまず世に出て、それから音楽活動をしながらコリオグラファーをしたり、得意のダンスを生かしてダンス映画に出演したり、モデルをしたり。トリニダード系、ハーレム出身。すんっばらしいスタイルの持ち主(カニエのFADEのビデオ参照)。旦那はNBA選手のイマン・シャンパートで1児の母。ふつーに超超超勝ち組です、ハイ。   彼女のことは覚えていないけれど、MY Sweet 16という番組自体は覚えています。金持ちの娘が16歳の誕生日パーティーのためにわがままを言いまくって、大騒ぎする内容。ケーブルテレビ全体がリアリティTVに侵食されてから、アメリカ文化、およびアメリカ社会はおかしな方向に行った、というのが私の持論です。ちなみに、トランプ大統領が一般的な知名度を得たのだって、「お前はクビだっ」と暴れるリアリティTV。カニエとキムさんが仲良しだと知ったのも、Keeping Up Kardashiansで「お友達のカニエ・ウエストさん」という唐突なテロップとともに出てきた時でした。ちなみに、キムさんは前夫との結婚が終わっていないタイミング。まぁ、この話は別の機会に。   才能と美貌に恵まれたテヤーナさんは、「絶対有名になってやる」という決意とともに活動を続け、今回、実を結んだわけです。欲しいものは自分で手に入れるGo Getter (ゴーゲッター)タイプ。キムさんと同じなので、カニエさんが人間として好むタイプは一貫しているようです。   でもね。このアルバム、仮に、仮にね、「カニエ印」がなくても評判を取ったと思う。時間はかかったかもしれないけど。90年代、ヒップホップを吸収したR&Bが一番、元気だった時代のエッセンスを残しつつ、輪郭がくっきりと2018年という絶妙のバランスを実現した会心作。   では、サクッと曲紹介。その前に、カニエネタのブログ、たくさんの方に読んでもらえてうれしいです、ありがとうございます。それで、今回わかったことがあって。海外の著名メディアのレビューも、微妙に外すというか、「それちょっと違うんじゃ?」という箇所が必ず混ざっている。私自身を含めて、ライターひとりの見識ではカヴァーできないほど今回のプロジェクトは先を行っている、ということだと思います。   タイトル「K.T.S.E」はキープ・ザ・セイム・エナジーの略で、Yeでカニエがラップしていたヴァースです。   同じエネルギーをキープしろ=ブレるな。   了解です。   No Manners 韻を踏みながらは「(クラブ)コパカバーナに行って暴れるの。私、遠慮ないから」とラップに近い歌声でドスの効いた挨拶を入れています。テヤーナさん、アネさん系?   Gonna Love Me 大胆にデルフォニックスのFor The Love I Gave to Youを使った、一転して爽やかな曲。フォーク調の転調が入るあたり、インディア・アリーをちょっと思い出しました。インディアさんは来日してほしいアーティスト、トップ5に入ります。こういう抑え目の歌を聞かせるあたり、テヤーナさんも、かなりのヴォーカリスト。男女関係を続けていく難しさがテーマ。「自信をなくすようなことをしてしまったのなら、ごめんなさい」というラインがリアルです。旦那さんに宛てた曲かな?   Issues/Hold On ロマンティックなトラックにピコピコ音を持ってきてかなり変態なのに、歌そのものは正統派。Hold on hold on don’t let me go(私を離さないで)というフックの歌い方が最高。結婚式の二次会にかけるといいかも。   Hurry カリブ系としてのテヤーナさんの血がたぎっている傑作。これをシングルに持ってくるあたり、カニエ、完全に勝負に出ています。ふだん、レゲエやカリプソを聴いている人の耳にはスッと入るだろうし、それ以外の人は「よくわかんない」曲でしょう。アメリカのヒップホップ・メディアで低い採点をつけているところは多いけれど、私は最高だと思います。レゲエのリミックス出ないかなー。この曲だけ、カニエがラップで入っています。   3Way 「へぇ、カニエ組、こういう泣きのR&Bも作れるんだー」と驚いたら、ロドニー・ジャーキンズの名前が。納得。ブランディ&モニカ“The Boy is Mine”ほか、ここ20年の王道R&Bを作ってきた人です。ちなみに、ロドニーさん、めちゃめちゃいい人です。えー、“The Boy is Mine”みたいに女性2人と男性1人というシチュエーションですが、思いっきり下ネタ。3Pの曲。言葉がわからない方がいいタイプの曲。トーントトトーン♩で売れたシスコの歌い回しを投入していますね。絶対に結婚式でかけちゃいけない曲です。   Rose In Harlem 「ハーレム育ちだから」と、ハーレム道を説くハーコー曲。こそこそしない、ロイヤリティが大事、名指しで責めたりしない。テヤーナさん、気風がいいです。絶対、敵に回したくないタイプの女性です、ええ。   Never Would Have Made It 私のツボすぎて、この曲を聴けばマッサージもヨガも要らないと思うほど、全身がほぐれていきます。今年のベストソングかも、と思ったけど、まだ6月ですね。鳥の鳴き声からのいきなりの歌い出し、ピアノを伴奏にヴァースを歌って、いっきにゴスペルのクワイヤーを投入。ゴスペル・シンガー、マーヴィン・サップの同名曲を敷いて神様と大事な人への愛と感謝を歌っています。最後に幼いお嬢さんの声でしめる。チーム・カニエ、丁寧な仕事ぶり。今回のプロジェクトは奇襲をかけた形になっているけど、このアルバムに関しては手間暇かけている印象です。すごい完成度。これは、結婚式でかけたらとても素敵だと思います。 WTP Work this pussyって。挑発的な締めです。ナレーションを務めるのは兼ドラーグ・クィーンという異色のラッパー、ミッキ・ブランコ(彼のWavvyのヴィデオは必見)。Totalの曲を思い出すイントロから(どれか出てこないから、わかる人は教えてください)、レゲエっぽい節回しとハウス調のトラックを合わせて新鮮です。アウトロは、ハーレムでヴォーギングをするセクシャル・マイノリティーを描いたドキュメンタリー「パリは眠らない(Paris is Burning)」から引っ張っています。最後までハーレムにこだわるテヤーナさん、「誰もが知っているくらい有名になりたいの」という本音でまとめています。   あー、これで連作のすべてが終わってしまいました。毎週末、楽しみだったなー   NasのNasirは大切すぎて、またゆっくり書きます。一つだけ。「カニエのおかげでNasが復活」という捉え方も多いようですが、違いますよー。Nasはずーっと第一線。90年代のクラシックしか知られていない大御所が多い中、00年代のアルバムからもたくさんヒットあるし、2010年のダミアン・マーリーとDistant Relativesも2012年のLife is Goodも名作、ヒットも出しています。Distant Relativesはライナーを書いたけど、もう国内盤はないのかな。   話が逸れた。最後にテヤーナさんのゴシップをひとつ。彼女、出産後に減胸手術を受けています。胸が大きくなりすぎて生活に支障を来たすので、サイズダウンする人って、けっこういるんです。フィメイル・ラッパーとして先陣を切ったあと、女優に転身したクィーン・ラティーファもそう。   テヤーナさんが主演した映画のトレイラーを見つけたので貼っておきますね。今年、DVDでリリースされた映画ですが、撮影はずっと前のような気がします。もう一人の主演がテレビドラマ、エンパイアのハキームなので、お蔵入りになりそうだったのを引っ張りだしてきたような。   テヤーナさん、ダンスすごーい。観たいです。 テヤーナさんの映像、画像を見ると、腹筋をがんばりたくなります。割れてるなんてもんじゃない。... Read More

Kid Cudiって知ってる? –Kids See Ghosts

Kids See Ghosts おばけが見える子どもたち=カニエ・ウエスト&キッド・カディ
村上隆さんとカニエ、再コラボのジャケット。最高です。
  Yeの全曲解説とは趣を変え、私がひたすらキッド・カディをほめそやすブログです。アルバムのことも書くけれども、大枠は

キッド・カディが大好きだーーーーーーっ

  という気持ちを、積極的に発露していこうかと。   カニエさんの知名度というか、お騒がせ度がずば抜けて高いため、影に隠れていていますが、キッド・カディも大した才能の持ち主です。09年、デビュー直前にインタビューしたとき、   「ヒップホップのアルバムを3枚だけ出して、あとは俳優に専念する」   と言い放ち、私は私で「何を言ってるのかな、このガキンチョは」と思いつつ、まぁ、そのチャーミングさにもだいぶやられてしまい。ちなみに、今作は7枚目です。続けてくれて良かった。   カニエのG.O.O.D. Musicから『Man on the Moon: The End of Day』でデビュー。抽象的なリリックと歌うようなメロウなラップで、スヌープやウィズ・カリファとは一味ちがう、ストーナー系ヒップホップで出てきた人です。2作目までその路線を続けて、まだそのイメージが残っていますが、本人はしばらく前にマリファナはやめたそう。   マチズモを強調しない、内省的なライムが特徴。カニエの『808s Heartbreak』に客演とソングライティングで大きく貢献しています。このアルバムではHeartlessとRoboCopがとくに好きだったのですが、どちらもカディ君もペンを取っているし、メロディーを作ったのも彼かな、と思っています。   ドレイクとほぼ同期。彼とともに、「俺って、俺って」なグズグズラップが受け入れられ、拡まる土台を作った気がします。実際、Pursuit  of Happinessのヴィデオはドレイクが全面的にカメオ出演しているし。それ以前も感情を語るラップはあったのですが、この二人、基本的にずっとその話。恋愛や物欲を絡めながらも、伝えたいのは、孤独な気持ち、理解されない俺。そう、だれもが持っている感情です。2010年代のヒップホップって、クラブやコンサート会場で一斉に「お前らなんか友達じゃねー」って歌うのが「主流」です。横並びの孤独。一緒に歌っているから仲間、ではないし、ステージから語りかけられるのをありがたく拝聴するのもウザい。とってもSNS的だと感じます。   音楽的には、Born Thugs-N-Harmonyの影響を語っているように、カディは歌うようにラップするスタイルが特徴。この流れは、髪を派手な色に染めたLIL 系が多い、日本でいうところのエモ系(すみません、ざっくりで)に、ゆるくつながっています。カニエが、XXXテンタシオンの死に際し、「直接言えなかったけど、インスパイアーされたよ」とつぶやいたのは、本心だと思います。XXXを聴いていると、私は肘から先がゾワゾワしてさすってしまう。リリックとその間にある感情が剥き出しすぎて、目の前で泣かれているようで辛かった。彼は、本物の表現者でした。キッド・カディはダークですが、比喩やユーモアに長けているので、救いがあるし聴きやすい。そういう意味では、オーソドックスなヒップホップ・アーティストです。   それから、カディはとってもおしゃれ。クリーブランドからニューヨークに出てきたとき、SOHOのBAPEの店員をしていたのは有名な話です。デザイナーの名前ではなく、オープニング・セレモニーなどセレクト・ショップの店名を出すあたりも新しかった。腰から下が細い、ロッカーみたいな体型の持ち主。黒人は筋肉で服を着こなす人が多いですが、カディさんは骨格で服を着る印象があります。   いつだって半歩先を歩いて、結果、功績が見えづらい人です。   俳優としても、演技力抜群。映画はまだ作品に恵まれていないようですが、テレビドラマではHow To Make It Americaというカルト作品が秀逸で、主役を喰う存在感でした。ちなみに、俳優業はScott Mescudi(スコット・メスカディ)の本名でクレジットされていることが多い。   そろそろ、Kids See Ghostsの話を。カディはカニエに見出されたというより、A&Rの人がカディをデビューさせる際に紹介して、いい距離感を保ってきたふたりが、ここまでがっつり組んだのは初めて。   前回のブログで「舎弟感」と書きましたが、弟分であり、アイディアを喚起するミューズのような存在なのでは? 男性ですけど。誰よりも早く、公然と「がっかりした」と文句をいう形でカニエを心配し、そこから仲直りをして、この作品ができた、という流れ。   もうひとつ、ふたりに重要な共通点があります。キッド・カディは2016年に自殺願望が強いうつ病で、自分からリハビリテーション・センターに入ったことを発表しています。先日のケイト・スペードさんの自殺もそうですが、世間的に成功してすべてを持っているように見えても、本人は生きづらく感じているケースはあるんですね。カディは、その後、積極的に精神疾患に関する理解を促す活動をしています。   Yeで「(躁鬱病は)スーパーパワーだ」と叫んだカニエだって、開き直っているわけじゃないんですよ。アートワークに書かれた言葉が“I don’ like being bi-polar”でも、“It’s hard being bi-polarでもなく、“I HATE being bi-polar”だったんですから。「ヘイト」はとても強い言葉で、たとえば、“I hate BBQ”(BBQは大嫌い)”と言ってしまったら、「もう絶対に誘わないでくれよ」くらいの意味になります。有名人であるキッド・カディとカニエ・ウエストだって、精神疾患を公表することで今後、ある種の烙印がついて回る覚悟はあったはず。メロウに響くアルバムですが、Ye同様、根底に流れるものはヘヴィです。   Freeee(解放) や Reborn(再生)などの曲のテーマ、そしてふたりに見えているお化けは、自分が抱える闇。それを受け入れつつ、救いを神(キリスト教)に見出したと、どの曲でも言っています。ヒップホップのオールドスクール・アーティストにはイスラム教に傾倒する人もいたのですが、やはりアメリカ人の大多数はクリスチャンだし共感されやすい。This Is America で話題になったチャイルディッシュ・ガンビーノにいたっては、エホバの証人を信仰する家庭で育っています(宗教に詳しい人が、その観点も踏まえてあのヴィデオを分析したら、また面白いでしょうね)。   話があっちこっち行ってますね。私のカディへの愛情、集中力がないようです。目立ったリリックを訳出しようと試みたのですが、過去と現在、弱気と強気の間で行ったり来たりして、前後を落とすと誤解を招きそうなのでやめます。言葉数も少ないし、とてもシンプルなのでリリックに興味がある人は読んでみたらいいと思います。   マーカス・ガーヴェイ(黒人解放運動の指導者)とルイス・プリマ(ジャズ・ミュージシャン)をサンプリング。ゲスト参加は、今回のカニエ組以外では、ヤシーン・ベイ、ミスター・ハドソン、アンソニー・ハミルトンと考え抜いた布陣。そしてまさかのアンドレ3000がFIREにクレジットされています(ラップはしていません)。   アンドレのカニエ・プロデュースの曲、聴きたいですねぇ。   キッド・カディに関して、過去のブログにちょこちょこ書いています(日記の間に出てくる感じ)。お時間があったら、覗いてみてください。一番、力を入れたErase Meの解説はなぜか消えているんですけど。   お化けの仕業かな。  ... Read More

Ye 全曲解説。

『DAYTONA』と『Testing』で諸手を上げて、嬉しさのあまり、そのまま左右に振ってしまうようなヒップホップ・ウィークを過ごしたあと、カニエ・ウエストからド級ストライクな『Ye』が届きました。両手を上げて油断していたから、お腹のあたりでまともに受け止めちゃった。痛いってば。カニエ、まっすぐすぎる。 『DAYTONA』が出たところで、本題に入る前にプッシャ・Tとドレイクの件。ビーフの戦法が姑息だからプッシャ君に腹を立てたけど、それと作品は別。アルバムは好きでよく聴いています。大体、アルバム・リリース前後のビーフとか、ただの炎上商法でしょう。いちいち反応したくないんだけど、ドレイクと近いプロデューサー、Noah40が患っている多発性硬化症をディスソング「The Story of Adidon」で挙げているから。北米ではよく聞く病気で、「MS」だけで通じるほど。闘病している人、周りの人の気持ちを考えたら、これはアウトだと思う。全米多発性硬化症協会がプッシャ君に正式に抗議したから、反省してくれますように。ハイ、この話はおわり。 って、昨日ここまで書いたら、今朝になってニューヨークのフェス、ガバナーズ・ボウルでプッシャのパフォーム中に観客がリリックと関係なく「fxxk ドレイク」とチャントし始めて、プッシャが堪りかねて止める映像が回ってきました。ドレイクって定期的に笑いものにされるから、今回もその延長だとは思うけど、「叩いていい」という流れになると一斉に叩く傾向って世界共通なんですね。いやな世の中です。そこまでファンじゃないけど、今回ばかりはドレイクと一緒に嗤われた方がましだな。   さて、『Ye』。最初に聴くとき、新しいアルバムを聴く楽しみより、「大丈夫かな? またヤバいこと言ってないかな?」と不安が先にきたのは私だけではないのでは。いま、私たちはカニエを失うわけにはいかない。戯言は全部忘れるから、また超絶かっこいいヒップホップを聴かせてほしい。私を含む勝手な消費者、ヒップホップ・ファンの本音はそこでしょう。 そして、蟹江西大先生、ちゃんとわかっていました。 アートワークの文字。   I hate being Bi-Polar, it’s awesome(躁鬱でいるのは辛く、最高だ)   ‥‥‥‥最高なら、いいか! (ムリしてます)   安定の超絶トラックに、いつも通り(精神的に)不安定なカニエ節を載せていて、たしかに最高です。ところどころ出てくる不穏な言葉さえ、エンターテイメントとして昇華していて、天才すぎます。   解説しますね。   1.I Thought About Killing You 1曲目は、スポークン・ワードとモノローグの中間みたいな曲です。 “Today I seriously thought about killing you/I contemplated, premeditated murder/And I think about killing myself, and I love myself way more than I love you, so「今日本気でお前を殺すことを考えたんだ/よくよく考えた 謀殺について/それから自殺も/でも お前を愛する以上に自分が大事だから」 いきなり自殺願望があったことを告白。このヘヴィーさが、アルバム全体の底に流れています。「お前」が誰を指すのか。世間なのか。味方になってくれなかった仲間たちか。それとも、その「お前」も彼自身なのか。 私は、自分との対話だと思いました。後半はメロディアスで酔っているようなラップに展開。 How you gon’ hate? Nigga, we go way back to when I had the braids and you had the wave cap” 「なんで嫌うんだよ/ニガ 古い付き合いなのに 俺がまだブレイズをしていておまえはウェイヴ・キャップを被っていた」 うーん、またジガさんことジェイ・Zのことかなぁ、って深読みしたら歌詞サイトのジニアス(本稿の英語詞はここから引っ張ってます)も同じこと書いてました。みんな気づくんですね。ウェイヴ・キャップってドゥーラグのことか。シカゴあたりはウェイヴ・キャップって呼ぶのかな? 短くても絡まりやすい縮れ毛を、枕との摩擦から守るために被るもの。黒人女性はスカーフやナイトキャップを被りますね。 「自分を愛せないからおかしくなったんじゃない、俺は自分が大好きだから それは当たらない」とも。うん、知ってた。彼ほど自己愛が強い人は珍しいと思います。 最後の「お前らカニエの話ばかりじゃないか」は事実ですね。その通り。   2.Yikes 00年代後半のカニエを思い出す、ちょっと懐かしいタイプのトラックです。「ヤイクス」は「オェッ」とか「ゲッ」とかネガティヴな反応をするときに出る言葉。カニエの「オェッ」案件を並べているのかと思ったら「自分自身が怖い」というコーラスから始まって、とにかくショッキングな内容を畳み掛けています。 「北朝鮮に行ってもいいし、ウィズ・カリファと一緒に吸ってもいいし」。カリファは元カノ、アンバー・ローズを巡って喧嘩した間柄。ウィズ・カリファの方がずっとクールに対応していた記憶がありますが、もう別れちゃったし、いまは仲良しなのかな。 「俺が何人に胸を買ってやったか知ってるか?」とも。いいえ、知りません、興味もありません。「尻も入れたら50ポップずつ」って。「ポップ」を単位に使うのは初めて聞きました。50グランの言い換えが妥当だとしたら550万円ずつですね。いや55万くらいで豊胸も豊尻もできる世の中なのかな。詳しい人、教えてください。そうそう、奥さんのキムさんは美しさを保つために、人件費を入れて美容代を1カ月に5万ドル(550万円)使う、という記事が少し前、Elleに出てました。桁が違います。 米英のメディアがよく取り上げているラインが、 “Russell Simmons wanna pray for me too/I’ma pray for him ’cause he got #MeToo’d” 「ラッセル・シモンズが俺のためにも祈ってくれるって/#MeTooでやられているから俺も祈っていてあげよう」 デフ・ジャム創始者のラッセル・シモンズが昨今のセクハラ糾弾ムーヴメント、MeTooで槍玉に上がっているのを受け、「人のこと心配している場合じゃないだろ」と。正論ですね。続く「俺もやられちゃうかな/そうしたらE!ニュースに出るね」というのが、カニエらしい茶化し方だなぁ、と。この人、なんでも茶化すし、揚げ足を取る。まじめに反論したらバカを見るけど、無視したら無視したでいじけるのでめんどうです。アウトロがそれを証明します。 “You see? You see? 
That’s what I’m talkin’ ‘bout
  That’s why I fuck with Ye 
That’s my third person
That’s my bipolar shit, nigga what?
 That’s my superpower, nigga ain’t no disability
I’m a superhero! I’m a superhero!” ほらね? ほらね? こういうことなんだよ。だから俺はイェと付き合っているんだ。3人目の人格。躁鬱ってこういうことなんだ。これが俺のスーパーパワー/障害とかじゃないんだ 俺はスーパーヒーローなんだ! スーパーヒーローなんだ! ウギャーーーー」 最後の「ウギャーーーー」はイケシロ追加訳。そう聞こえるから。   3.All Mine タイ・ダラー・サインとカニエのGOODミュージックにいるヴァリーを迎え、女性というか、性愛をテーマにした曲です。タイ君のヴァースが飛び抜けて下品ですが、カニエも面白い。 “If I pull up with a Kerry Washington
That’s gon’ be an enormous scandal, I could have Naomi Campbell
And still might want me a Stormy Daniels「ケリー・ワシントンと撮られたら大スキャンダルだよな/ナオミ・キャンベルとだってつき合えるしストーミー・ダニエルズだってイケるかも」 ケリー・ワシントンは人気の黒人女優、ナオミさんは説明不要のスーパーモデルでカニエとも仲良しのはず。そして、ストーミー・ダニエルズは現在、トランプ大統領の足を引っ張るポルノ女優さんです。ストーミーさんは06年にトランプさんと関係を持ち、大統領選前に口止め料をもらったものの身の危険を感じたとかで、メディアに出てきました。口止め料の出所が選挙資金だった可能性があるため、大騒ぎになっています。 彼女の名前をカジュアルに出してしまうあたり、カニエ、全然トランプさんの味方になっていません。このアルバムのあちこちで「発言を撤回しない」「言いたいことは言う」という強気の姿勢を見せるものの、このライン一つで暗に「そこまでトランプさんを支持していないよ」と伝えていて、なかなかの策士。 ところで、ケリーさんは41歳、ナオミさんは48歳、ストーミーさんは37歳。カニエ、同年代以上の女性が好きなのかな。そういえば、しばらく執心していたロカフェラの元ボス、デーモン・ダッシュの従姉妹でもある女優、ステーシー・ダッシュ(映画『クルーレス』が有名です)がケリーさんと同じ系統の顔ですね。ステーシーさんはみんながオバマさんに心酔していた08年に共和党支持を表明して物議をかもしたので、カニエの先輩だな、と思い出しました。いまでも崇拝していたりして。 それから、この曲には義妹、クロエの子供の父親であるNBA選手のトリスタン・トンプソンが妊娠中に浮気をしたゴシップを受け、口撃するラインがあります。カダーシアン家のこととなると、まぁまぁマスオさん状態になるカニエ・ウエスト、嫌いじゃないです。   4.Wouldn’t Leave パーティー・ネクスト・ドアーと、お久しぶり!のジェレマイ、タイ・ダラー・サインをゲストに、妻のキムさんへの愛を歌っています。 「奴隷制は選択だった」発言の際、息ができないほどパニックになったキムさんに怒られたこと。カニエは「出て行ってもいいよ」と言ったこと。でも、キムさんがそばから離れないとわかっていたこと。 アウトロで、 「奥さんや彼女に恥をかかせるようなことを言ったりやったりしてもいいんだ/そのエネルギーを失うな/それで彼女の忠誠心が試せるから」 という、独自の超上から目線の結婚観を披露。キツい。キムさん、えらいですね。もう、それしか言えない。あ、とてもいい曲です。   5.No Mistakes カニエが大好きなスリック・リックの声から始まるこの曲、スリックさんの“Hey Young World”を敷いています。ケリ・ヒルソンの大ヒット“Knock You Down”で「I’m the new Slick Rick(俺が新しいスリック・リック)」と宣言して、「いや、違う」と方々(とくに私)から突っ込まれたカニエさん、ずっとスリックさん好きなのですね。 キッド・カディとギャップ・バンドのチャーリー・ウィルソン叔父がコーラスを歌い、「それでもみんなのこと愛しているよ!」というメッセージと「自分より成功してない奴のアドバイスは聞かない」という「ごもっとも」な開き直りが共存する、カニエ節全開チューン。 私は、「Oh, I got dirt on my name, I got white on my beard/名前に泥がついちまった/ヒゲに白髪が混じってきた」という、なにげないラインが詩的でとてもいいな、と思いました。40代突入ですものね、蟹江さんも。 あ。白髪は「グレイヘア」の方がふつうか。文面通り「白いものがついている」かもしれません。だとしたら、いやだなぁ。   6.Ghost Town モゴモゴとジョン・レジェンドがイントロを歌い、キッド・カディが「愛されたかっただけなのに/頑張るほど君は離れて行く」とパンチラインを歌う、友情に溢れた曲です。ジョンがカニエやカディのオフビートな歌声に合わせて、いつもの美声を響かせないのも、キッドが蟹江の本音を代わりに熱唱してハンパない舎弟感を醸し出しているのも、すべて友情の賜物。カニエは本作のテーマは「愛」と騒動の途中から言っていましたが、個人的にこの曲に一番の愛を感じました。 後半を担当する070 ShakeはGOOD Music所属のフィメイル・ラッパー。好きなタイプの声だわー。もっと聴きたい。 私は、カニエの新作よりキッド・カディの新作が楽しみという、日本にもう一人いるかいないかの変わり者なので、この曲を一番よく聴いています。カディ愛はまた別の機会に書きますね。長くなるから。
写真がないので、ヴィンテージのGOOD MUSIC Tシャツをさりげなく自慢。隣はビヨンセのペプシTシャツ。アメリカで売ったら高いだろうけど、絶対売らないの。
  7.Violent Crime 「暴力的な犯罪」というタイトルなのに、ちゃんと聞くと娘二人(主に長女のノースちゃん)への愛をテーマにしている曲。デジ・ローフちゃんが、キュートなコーラスで「あまり早く成長しないでね」と歌い、カニエは「ニガーは残忍/ニガーはモンスター/ニガーはピンプでニガーは遊び人/自分の娘を持つまでは」という秀逸なラインを書いています。娘が彼氏を連れてきたら「ぶっ叩く」と言っちゃってるし、カニエ、ここではふつうのお父さんです。 ただ、「ニッキ(・ミナージュ)みたいになってほしい」は凡人には解釈が難しい。最後に出てくるニッキ本人が「わかった、彼女をモンスターにしてあげる」と約束しています。   ノースちゃんの将来、モンスターに決定。   以上、簡単に解説してみました。   プロデュースは、全曲カニエ。GOOD ミュージック所属のベテラン、マイク・ディーン、話題の新人、フランシス&ザ・ライツ、そしてエド・シーランやジャスティン・ビーバーと仕事をしているトップ中のトップ、ベニー・ブランコが助っ人に入っています。 この人選を見ても、『Ye』は、衝動的に作ったようで、完全に勝ちを取りに行っているアルバム。双極性障害を含め、「このままの俺を受け止めてくれ」と全身全霊、全曲全ラインでカニエ・ウエストが訴えています。 そんなに訴えてこなくても、みんな、カニエ・ウエストが大好きなのにね。なんでわからないかな。   We DO love Kanye, don’t we?   おかえりなさい、カニエ& Ye。  ... Read More

ASAPファーグ&ティファニーのすてきな企て

日曜日にMacBookのデスクトップの整理をしたらー。書きかけのブログが11もあったぜ! その中から比較的、新しくて前向きな話を。 私はチキン派なので(ダブルミーニング)、ビーフとか食傷気味です。 まずは、こちらをご覧いただきましょう。 ティファニーの新しいキャンペーンにASAP ファーグと女優のエル・ファニングが起用されて、不朽の名曲「ムーン・リヴァー」をカヴァー&リミックス。 「ムーン・リヴァー」は言わずもがな、1961年の映画「ティファニーで朝食を」で、オードリー・ヘップバーン扮するホーリーが歌った曲。映画のテーマソングとしてオスカーを獲得しただけでなく、翌年のグラミー賞のレコード・オブ・ジ・イヤーとソング・オブ・ジ・イヤーをダブル受賞。56年(!)の間に何百回とカヴァーされています。今年に入って、フランク・オーシャンもカヴァーしていますね。曲の雰囲気と儚げな彼の歌声がマッチしてすてきです。 エルちゃんも負けてない。オードリーと同じ、女優さんらしい表現力でグッときます。このヴィデオの冒頭も、イエロー・キャブが映った後でティアラをつけたヒロインが登場、手にコーヒーを持っているあたりが、映画へのオマージュになっています。さすがに、ジバンシィのリトル・ブラックドレスは着ていませんが。ヘップバーンの代表作のひとつに「ファニー・フェイス」(邦題「パリの恋人」)がありますが、彼女は正統派美人で、エルちゃんこそファニー・フェイス系。表情がころころ変わって愛くるしい。 これ、ティファニーの新しいデザイナー、リード・クラッコフの新しいシリーズ「ペーパー・フラワーズ」シリーズのキャンペーンCM。エル・ファニングがひらひらと見せびらかしているのが、それです。 NYタイムズの記事によると、ASAPファミリーから一番有名なロッキーではなく、ファーグに白羽の矢が立った理由がすてき。「ハーレム出身でティファニーの本店があるニューヨークのイメージに合うこと、そしてお父さんが服飾関係の仕事をしていたこと」だそうで。 つまり、ティファニー側は、ハーレムのファッション文化に敬意を表したんですね。ティファニー本店がある5番街の真ん中から、ハーレムの目抜き通り125丁目まで地下鉄の快速に乗れば10分くらい。でも、その間にはなかなか越せないふかーい溝があります。
ファーグさんもパリッとしてます、彼女さん?奥さんがすっごい美人ですね。
ファーグも「ミッドタウンの高校に通っていたから、毎日のようにティファニーの前を通っていたけど、別世界だと思っていたから足を踏み入れたことはなかった」、とコメント。お披露目パーティーにはナオミ・キャンベルやゼンデイヤのほか、ダッパー・ダンも顔を見せたそう(彼に関しては、友人のエドウィン・スタッツのQの記事がめでたく訳されたのでリンクを貼りました。エドはかなりのレゲエ・ヘッドです、ちなみに)。 ティファニーといえば、最近、ちょっとおもしろいことがありました。叔母から生前形見分け? という理由でもらったエメラルドとダイヤのブレスレット、金具が古いタイプだったため外し方がわからず、ネットで調べたら、なーんとティファニー!!! のコピー商品だったんです。いやー、笑った。ティファニーのコピーとか、めっちゃヒップホップ。石は本物だし、ガンガンつけようと思います。気が向いたら、そのうち写真をアップしましょう。 ところで。ASAPロッキーの新作「Testing」、本人&ヒップホップ全体の新境地に到達していて素晴らしい。いまも聞きながら、これを書いてます。ロキ太郎への愛もそのうち、記したいと思います。たぶん。... Read More